第27話 ドラゴン娘の今後と山積みの問題



「ならばここに居てくれるということでいいのだな?」


「ああ、その通りじゃ」


「儂の名はシルヴィス・アルラ、以後よしなにな」


 竜だからもっと仰々しい名前だと予想していたんだが、意外と普通の名前だな・・・見た感じドラゴンと人間のハーフっぽいし名前が人間らしくてもおかしくはないか。


「ああ、そういえばまだちゃんとした自己紹介をしていなかったな、私はヴィス・ヴァルディ 駆け出しの冒険者だ」


「よろしく頼む、シルヴィス殿」


「ああ、よろしくの、それより駆け出しの冒険者・・・じゃと?お主のその格好はどう考えても騎士という風情じゃが・・・訳ありのようじゃの?」


「詳しいことは言えないが・・・その通りだ、む・・・そろそろ目的地だな」


「そうか・・・儂はここで待っておるお主は用事を済ませてしまえ」


「?君は一緒に来ないのか?ここに居ては寒いだろう?」


「儂はいい、このような容姿の者が行っては驚かせてしまうからの」


 なんだ・・・やっぱりこの人も優しいじゃないか・・・村を襲う心配なんて要らなかったな・・・。


「ん?村を襲うなどと言っていた割には随分と優しいじゃないか?さっきは悪ぶっていただけで本当はとても優しいのだな」


「なっ・・・///ち、ちがッ、」


「ハハ、すまない、ついからかってしまった」


「悪く思わないでくれ」


「わ、儂は500を超えておるのじゃぞ!若造の分際で・・・」


「おや・・・何だか賑やかな声が聞こえてくると思ったらヴァルディ様ではありませんか?如何なさいましたか」


 少し騒ぎすぎてしまったか・・・彼はこの村の村長だ、とても気のいい人で奴隷達の受け入れを快く承諾してくれた、奴隷達を匿う関係上シグとはかなり前から交流があったようだ。


「村長殿、夜分遅くに申し訳ない・・・明日からの事で少し話があるのと、空いている地下室を貸して頂きたい」


「そうでしたか・・・お寒い中来ていただきありがとうございます」


「外は冷えますのでどうぞ中へお入りください」


 でもその前に男爵の屋敷で待機状態になっているであろうモンスターを消しておかないとな・・・


「“解除”(キャンセル)」


「ああ、ではお邪魔させてもらう・・・ところで、シルヴィス殿は私の後ろに隠れて何をしているのかね?」


 迫害されることを怖がっているのだろうか・・・だったら心配不要だと思うが、この村の者はほとんどが酷い扱いを受けてきたものだ。


 石を投げつけられ、見捨てられることの辛さを知っている彼らが同じ境遇の者に対して非道な行いをするとはとても思えないけれど・・・シルヴィスはシルヴィスなりに色々なことがあったのだろう。


「シルヴィス殿、人が苦手なら無理にとは言わない・・・だが私は君にここの人達と仲良くしてもらいたいと思っているしその力になりたいとも思っている」


「・・・ッ!!」


「私はシルヴィス殿が非道な行いをしない限り君の味方だ、決して見捨てないと誓おう」


「だから・・・」


「分かったからみなまで言うでない」


「村長殿、実はもう1人いるのだが同席させてもらっても良いか?」


「はい、もちろんです」


「この子なのだが・・・ほらシルヴィス殿」


 自分で言っておいて何だが本当に大丈夫だろうか?俺はまだこの世界のことをあまり知らない・・・もしシルヴィスへの迫害が自分の想像を超えていたら・・・。


「このお方はッ!もしや竜人様でございますか!?」


 何だこの反応は?疎まれてると言うより崇拝されてるみたいだ・・・。


「その通りじゃ、儂もしばらくここに住むことになってな・・・よろしく頼むぞ、村長よ」


「まさか生きている間に竜人様にお会いできるなんて光栄の極みにございます」


「貧しい村ではございますがどうぞごゆっくりしていってくださいませ」


「これは・・・どういうことだ・・・?」


「わ、儂にも分からん、恐れられた事なら数え切れないほどあったが、今回のような反応は初めてじゃ・・・」


 考えるにおそらくこの村では竜人は敵ではなく守り神のような存在だったんだろう。


 これなら迫害されることもなさそうだが・・・奴隷達はそうもいかないかもしれんな、この村の出身者ならまだいいが各地から集められた者の中には竜人を敵とみなす考えの者もいるかもしれない。


「シルヴィス殿はもしかするとこの村には欠かせない存在になるかもしれないな・・・」


「お主・・・それは一体どういう・・・」


「それは明日のお楽しみだ」


「?」


 俺の思い通りに事が運べばシルヴィスは村人に恐れられる事なくこの村の守り神として皆から慕われるようになる・・・それを成功させるにはまた村長に協力してもらわなければならない。


「ヴァルディ様、シルヴィス様、用意が出来ましたのでこちらへお掛けください」


「手間を取らせてしまってすまない、ではまずこの村を明日からどうしていくか私なりに考えをまとめてきた」


「なのでこの村の長である貴方に意見を聞きたい」


「まずは食糧問題からだが・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「という感じで考えているのだが・・・なにぶん緊急を要する事なのでな、まだ実験はしていないがこれまでの事を考えれば成功するはずだ・・・如何だろうか?」


「「・・・」」


 流石に2人とも信じられないという顔になってるか・・・確かに俺が話したことは現実感が全くない、妄言と取られても仕方がないようなものばかりだ。


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