第19話 遭遇






「それならば迷ってしまっても仕方がありません・・・最初は私達も方向が分からずあちこちさまよったことがあります・・・」


「ああ!確かリゼさんが泣きそうにな・・・むぐっ!!」


「アルクもルルの実験台になるか?(ニコッ)」


怖い笑みって本当にあるんだと思わせるほど不穏な笑みを浮かべてアルクの口元を塞ぎ脅し始めるリゼ・・・。


「リゼ殿にも出来なかった事があったのだな・・・まったく迷いが無く 見事な采配だったのでな 最初から出来るものと思っていた」


「ヴァルディ殿にそこまで言って頂けるとは思いませんでした・・・というか私達には貴方に出来ない事があるという事の方が驚きです!」


「その身体能力にあの魔法・・・それに付呪された品まで持っていらっしゃるとは本当に驚きました!」


「確かにあの魔法には驚いたニャ!!ヴァルディさんは騎士なのにあんな魔法まで使えるなんてニャ・・・」


「私にも出来ない事は多い、何せ最初は補助魔法も使えなかったからな・・・もしよければ地図の見方を教えてくれないか?君達にばかり負担をかける訳にはいかないのでな」


「はい!そう言う事ならお教えします!」


「今我々のいる位置はここで・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・


「そろそろ縄張りに入るころニャ」


「そうか、少し立ち止まってくれ“存在探索”(エネミー・サーチ)!確かに奥の方に複数の反応がある ノワル殿の距離感覚は凄まじいな」


「まぁこれでも獣人の端くれだからニャ!!これくらいは余裕だニャ!」


「ヴァルディ殿 今の魔法で敵の場所や数まで分かるのですか!?高ランク冒険者の”探求者”(シーカー)が不思議な魔法を使えると聞いた事はありましたが実際にみることになるとは・・・」


ゲームでは割と基本の魔法なんだけどな・・・いや・・・魔法に関しての常識はある程度ゲームとは切り離して考えるべきか。


「!ちょっと待つニャ!足音が聞こえるニャ!」


「なに!?」


“グルルルァァア!!”


ノワルが獣人特有の鋭い聴覚で聴き取った通り草むらから黒い影が飛び出しリゼに襲い掛かった。


おそらく僅かな匂いで侵入者を察知しこちらへ来たのだろう、かなり離れていた筈だが考えてる一瞬でここまで来たか・・・やっぱり狼系のモンスターは広い場所だとかなりめんどくさいな。


「し、しまった!!クッ!!」


「”緩やかなる世界”(スロウ・スペース)」


このスキルは状態異常耐性の低い低級モンスターにしか効かないが 狼のようなスピードで撹乱してくるモンスターにはかなり有効な魔法だ。


「・・・?」


「モンスターの動きが遅くなったニャ・・・? 」


「というかほぼ止まってませんか!?しかも空中で・・・」


「ハァッ!!」


“キャウッッ!!”


「空間・・・魔法・・・!いつものとは違う・・・?」


「ヴァルディ殿ありがとうございます!い、今の魔法は・・・?」


「ん?自分の周りの敵性生物の動きをほんの少し遅くする魔法だ、低級の生物にしか効かないが」


「それより注意したほうがいい あの魔法の範囲外から増援が来る可能性が高い 今のはおそらく見廻りだろう」


“ウォォォォン!!”


「ッ!!」


今のはリーダーの遠吠えだろうか?おそらくもう近くにいるが隠れているな・・・リーダーの戦力が分からない以上は無駄にMPを使い過ぎるわけにはいかないか・・・。


”グルルル”


「ま、マズイ!!囲まれた!この数30はいるぞ!?情報と違う!」


「すごい数だニャ・・・一旦逃げるかニャ?」


「む、無理ですよ!既に囲まれてますし 逃げたとしてもすぐに追い付かれておしまいです!!」


「君達少し落ち着きたまえ 私が渡したマジックアイテムは装備しているな?」


「は、はい!で、ですがこの数は流石に・・・」


「注意は私が引く君達は装備の効果を試すといい、騙されたと思って使ってみてくれ」


「分かりました!!装備お借りします!」


「ヴァルディさんを信じるニャ!!」


「ボク達頑張りますね!」


「援護は・・・任せて」


「大丈夫・・・落ち着いて・・・私達ならできる!」 


「いい心構えだ では行くぞ “怨嗟の声”(ヘイト・グラッジ)」


範囲内全ての敵のヘイトを自分に向け さらに防御力が少しだけ上昇する魔法だが・・・この世界ではどの程度効き目があるんだろう?。


さっきの魔法は闇魔法で無いにも関わらず若干効果が変わってたしな・・・動きが少しだけ遅くなる程度の魔法だったんだけど。


“ガルッ!?フシュー!!フシュー!!ガルルルルッアアアアアア!!!!!”


狼の様子が目に見えて変わりこちらに向けて一斉に襲い掛かって来た・・・やはり効果が変わっているのは闇魔法だけじゃ無い・・・か。


「少し数を減らしておこうか!」


俺が少し剣を振るうと2〜3匹の狼が切り裂かれ血を撒き散らして死んでいった。


やっぱり“あの”ダンジョンの狼よりは全然遅いな、あそこの狼は速度がおかしかったし・・・目が慣れて普通の狼の動きが止まって見えるくらいには。


「すごい・・・全部の攻撃をかわしてる・・・」


「それだけじゃないニャ!?反撃までしてるニャ・・・」


「す、凄い・・・」 

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