第15話 平和な一日 前編




「て、亭主さんヴァルディさんは辺境の生まれで金銭の価値がよくわからないニャ! 」


「申し訳ない 銅貨というのはこれで合ってるか?」


 再びアイテムボックスを弄り銅貨と思われる塊を二つ取り出し亭主に渡すと。


「あらそうだったのかい 銅貨2枚確かに頂いたよ!」


「亭主殿私の分の食事は結構だ」


「そうかい?なら小銅貨5枚のお釣りを・・・」


「それも結構だ こちらから無理を言っているのだ それにこれからお世話になる 宿代はそのままでいい」


「あんた変わってるねぇ?まあいい!気に入った!!分からないことがあればなんでもお聞き!部屋は3階の一番奥だ!好きに使って構わないよ!」


「感謝する亭主殿 さあノワル殿3人を部屋まで運ぶとしようか」 


「案内は私に任せるニャ」


「おやすみ ちゃんと布団をかけてやるんだよ!」


「承知した」


「分かってるニャ!」


「ここがリゼの部屋ニャ・・・すごい散らかってるニャ・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ここはアルクの部屋ニャ!リゼと違ってよく整頓されてるニャ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「最後がクレアの部屋ニャ!最近ここに来たばかりだから荷物は少なめだけどなんだか いい匂いがするニャ・・・(クンクン)」 


「それでそっちが私の部屋であっちがルルの部屋ニャ、困ったことがあったら遠慮なく来るといいニャ!」


「ああ、ありがとう困った事があったら頼らせてもらおう ところで明日の予定はどうする?何か決めているのかな?」


「明日は明後日のクエストに向けて準備するニャ!買い出しするけどヴァルディさんも一緒にくるニャ?ついでに王都の案内でもするニャよ?」


「本当か それはありがたい是非とも同行させてほしい」 


「分かったニャ じゃまた明日ニャ!おやすみなさいニャ〜 ほら、ルルも自分の部屋に戻るニャ?」


「・・・眠い・・・部屋・・・戻る・・・おやすみ・・・」


「では2人ともおやすみ、 また明日会おう」


「ああ、そういえば言い忘れた事があった」


「どうしたのかニャ?」


「・・・・・・?」


「今日は本当にありがとう、盗賊の砦の一件で皆かなり消耗しているはずだ、分かっているとは思うが今日はゆっくり寝て体を休めてほしい」


「体に何か異変があればすぐに言って欲しい、私の持っているアイテムでなんとかできるかもしれない、リゼ殿達にも同じ事を伝えておいてくれるとありがたい」


 こういう事はさっき言っておくんだった、いくら冒険者とはいえ砦の事で精神的にも肉体的にもかなり消耗しているはずだ・・・そんななか歓迎会までやらせてしまった。


「ニャハハ!ヴァルディさんは本当にお人好しニャね?分かったニャ!明日の朝ちゃんと伝えておくニャ〜」


 「・・・ありが・・・とう」


 そう言いノワルとルルは自分の部屋へと愉快そうに入っていった。


 さて、私の部屋はここか・・・“ガチャ”とドアを開けると少々ボロいが、掃除はされているベットとテーブルが置いてある部屋の光景が広がった。


「(鍵を閉めてっと・・・やっと兜を外せるな・・・)」


 明日は買い物か・・・昨日といい今日といい色々な事がたくさんあったな・・・やはり疲れも眠気も無いしどうせ寝れないなら少し頭の中を整理して明日からの生活に備えよう・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「そろそろ日が昇ってきたか・・・」


 ”コンコン”


「(誰か来たな リゼ達か?)」


「ん?やっぱり君達か おはよう いい朝だな」


「ヴァルディさんおはようニャ!迎えに来たニャ」


「・・・迎えに・・・来た」


「わざわざありがとう 私も 今から食堂に行って待っていようと思ったのだが 君達の方が早かったな」


 何故か昨日ダウンしたメンバーは黙っている。


「おはよう・・・ございます・・・ヴァルディ殿!昨日は申し訳ありません!貴方の歓迎会だというのに・・・あんな醜態をッ!」


 “私たちを選ぶなんて!!嬉しかったですけど・・・”


「ッ〜〜〜!!」


「ボ、ボクもあんな事を・・・///」


「わ、私もあんなはしたない事を・・・///」


「なに、すごく楽しかったよ 」


「「「はい・・・」」」


「じゃ早速買い出しに行くニャ!」


「リゼちゃん達 おはよう さっそくパーティー全員でお出かけかい?仲がいいねぇ」


「亭主殿おはようございます!今から明日の依頼の為の準備をしに行くところです!」


「そうだったのかい!頑張りなよ!でも無理はしちゃダメだよ?生きて帰れば次があるんだからね!」


「亭主殿・・・はい!行ってきます!」


「では亭主殿 行ってくる」


「では行ってきます!」


「行ってくるニャ!」


「行ってきます!」


「・・・行って・・・きます」


「亭主さん!行ってきますね!」


「気を付けて行ってくるんだよ!」


 亭主に挨拶をし古びたドアを開けると人々の喧騒と太陽の光が飛び込んできた。


「今日はいい天気ですね!ヴァルディ殿!」


「ああ、明日もこれくらい晴れてればいいのだがな・・・ところで明日の依頼はどのようなものか決まっているのか?」


 人々でごった返している街中を歩きながらリゼに問う 昨日は聞けなかったからな本来パーティーを解散していたかもしれない依頼だ・・・どんなものか知っておきたい。



「はい!明日は魔狼の群れを討伐します!本来は我々だけで行うはずだった依頼なので不安だったのですがヴァルディ殿が加入してくれたおかげでとても安心できます!」


「魔狼・・・?それはどのような魔獣だ?私は遭遇したことがなくてな・・・」


「はい、魔狼は魔力を持ち通常とは異なる成長を遂げた狼です 毛は黒く通常の狼よりも体躯が大きいのですぐに分かりますよ!」


「群れと言っていたがどの程度の規模か分かるか?」


「ギルドの報告によると十数匹で行動しているようです」


「前に魔獣には冒険者と同じくランクがあると言っていたが 魔狼のランクはどれほどだ?」


「魔狼は単体ではF 群れではDと言われていますが群れの規模によって違ったり個体差があるため正確な判別は不可能です・・・」


「分かった ありがとうリゼ殿 」


 右側の列に見える店に大きく防具屋と書かれている看板がある 用がある防具屋とはおそらくあそこだろう。


「それで用がある防具屋とはあの店のことかね?」


「はい この王都でも最大の防具屋なので大抵の冒険者はあの店で防具を購入します」


 防具屋かゲームにもあったけどここはどんな品揃えなのだろうか店の規模から見てゲームの中盤程度の防具なら売ってそうだが・・・。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る