第1話 冒険者の少女との出会い






 ”そこ”はどことも知れぬ森の中 その広大な森の端に横たわる騎士が1人・・・黒檀のような漆黒であしらわれた重厚な鎧を着込んでる。


 動かなかった指先が動くと それに連動するかのように腕が胴体が足が動き出す。


「・・・う・・・ん・・・???ここ何処だ?昨日徹夜でゲームをして寝落ちしちゃったんだっけ・・・っていう事はまだゲームの中か?こんな場所見た事がないけど・・・」


寝ぼけて知らないフィールドまで来て寝てしまったか?いや、このゲームはかなりやり込んでいるし最新情報は常にチェックしている・・・マップが追加されたなんて情報は無かったはずだ・・・。


「まあ、とりあえず“転移門”(ゲート)で拠点に帰ってログアウトしよう・・・」


「“転移門”(ゲート)!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」


「行き先のカーソルが出ない・・・?」


「“転移門”(ゲート)!・・・“転移門”(ゲート)!・・・“転移門”(ゲート)!」


 嘘だろ!?バグか?ログアウトボタンも出ないし・・・メニューも開けない・・・。


「待てよ・・・こんなシチュエーションどこかで見たことある気がする・・・あ・・・」


 異世界・・・転移・・・?


 とりあえず落ち着け まずは状況把握だ。


 装備はゲーム内と変わっていない。


 本当に異世界ならここからどう行動するか慎重に決めないと・・・。


 ゲームの内では縛りプレイをしていたけど流石にここではネタ職縛りは危険だよな・・・魔法の威力が違うという事はモンスターの強さも違う可能性がある、ゲームはプログラムで動いているだけだがここは現実だ、攻撃パターンも無限にある筈だからな。


 魔法、スキルスロットの7割以上が闇魔法戦士のものだが残りの3割は汎用性の高いスキルや魔法だ・・・それを使わないといけないかもしれない。


 流石に生死を左右する状況での出し惜しみはマズイだろう。


「正面は絶壁でその下に見渡す限りの森だが奥に平原が見える、後ろは見渡す限りの森・・・困ったな、街があればいいんだがどちらに行くべきか・・・」


「そういえばアバターはそのままか?」


 兜を脱ぎ自分の顔を触ってみると皮膚の感覚はなくゴツゴツとした骨の感覚があった。


「全身が骨のスケルトンじゃ街に入ったとしても装備は外せない」


「まあ 代わりに食事も水浴びも必要ないから良しとするか 風邪はおそらく引かないだろうが、冷たい川で水浴びするのはごめんだしな」


 兜を再び装備し 考えた結果 やはりこのような高台に街がある可能性は薄いと思い、崖下の平原まで行こうと魔法を発動させる。


「“飛翔“(フライト)」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「“解除“(キャンセル)平原まで来てみたけど・・・殺風景で街がある様子はないか」



「・・・ん?なんだあれ?人が誰かに追いかけてまわされてるのか?」


「よし! 行くか!異世界なのかゲームなのかこれでわかるはずだ


“速度上昇“(ヘイスト)!


“消音“(サイレント)!


“存在消失“(ロスト)!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「はっ・・・はっ・・・!」


「待て待てぇ〜クックッ!逃げないと悪い人達に捕まっちゃうぞ〜」


 その少女は逃げていた盗賊と思われる男たちから必死に逃げていた、 盗賊達はわざと走る速度を緩め少女が逃げ惑うのを下卑た笑みを浮かべながら楽しんでいた。


「キャアッ!!は、離してッ!」


「捕まえたぞ〜お兄さん達と何して遊ぼうか!クックッ」


「いや・・・止めて!!」


 盗賊の1人がビリビリと衣服を破いていく 少女の目には諦めが混じり徐々に抵抗する気力を失っていた。


「大人しくしてろ!!このガキ!」


「!!・・・ッ」


「ようやく大人しくなったか・・・手間かけさせやがって」


「オイ! 何してる?お前らもコイツを押さえるの手伝えよ? でも最初は俺からな!」


「オ・・・ゲッ!?」「がはッ!?」


「何かと思って来てみれば・・・まったくどうやらここは治安が悪いらしいな」


「あぁ?誰だおま・・・え? ヒィッ!!」


 少女が大人しくなったのも盗賊が怯えたのも無理はない、俺は今盗賊達を皆殺しにし血塗れの状態で立っているのだから。


 結果から言うとやはりここは異世界だった、エネミーだと思った盗賊はゲームではあり得ないほどの血を流して死んでいった。


 人を殺しても何も感じない理由はおそらく骸骨になった事で精神になんらかの変化起こったのだろう。


「悪いが悪人は見過ごせないのでね」


 大人の身長ほどもある大振りの剣を片手で振りかぶり目にも止まらぬ速度で盗賊の胴体を切断する。


「た、たすけ・・・かひゅ・・・・」


「君、怪我は無いか?」


「・・・ぁ・・・ッ!や、やめて!殺さないで・・・!」


 その少女をよく見ると髪は金色で肩まで伸ばしており目は碧眼でかなりの美少女。


 体は返り血で汚れてしまっている よく見るとかなり際どい格好をしているが、皮の防具を所々に装備しており 見た目は冒険者という感じだ。


どうしよう 素のまま女の子と話すコミュ力なんて無いしゲーム内と同じロールプレイの口調でいこうか。


とりあえず安心させて敵ではないという事を説明してあげないと。

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