第28話 ひとつ加えた星降る夜の語り

 花冠を付けた女性が語るのか。頭上にあるのは地図だな。あの爺さんのと同じ感じのだ。大きい島がいくつもある。


「120年前のこと。まだ列状に連なる島だった日輪の国。天帝がおり。武を極める代将軍がおり」


 農民。商人。職人。色んな奴らがいる。獣人族、鬼族とか色々出てきてるな。筆で書いてるから、結構特徴的だなと思う。


「人々は年貢を納め、仕える方に差し出し、時には祭りで踊り、酒で騒ぐ。その繰り返し。だが」


 また絵が変わった。空に浮く誰かと海の上にいる誰かが戦っている。星の力で戦う戦士と海の力で戦う戦士って感じだ。おい。まさかとは思うけど、爺さんが見た星の石の真相がこれだなんて……言わねえよな。


「とある日のこと。遥か遠い夜空から星と共に落ちて来る。白き仮面。白き鎧。白き剣。白き獣。何もかも白いものだった。全てを滅ぼす、生きた空の兵器とも呼べるものだった。空から落ちる石を同胞とし。振り落とし。列島に降り注ぐ」


 なんか……シャレにならない奴が来ちゃったんだけど。嘘であって欲しい。


「我らを守るためか。あるいは世を守るためか。あるものが生まれた。海より現れし、青き化身。槍を持ち、海の魔獣を従えるもの。咆哮をあげ。海を操り。白きものを倒そうとする」


 そういう感じの絵か! 語り部の爺さん、確か……えーっと、「海が荒れ」って言ってたような。ただの自然現象で神様は関係ないことを祈りたい。


「星の岩と海の波。剣と槍。獣。ぶつかって。ぶつかって」


 うわーもっと激しいの来ちゃってる。絵の迫力やべえ。


「衝突を繰り返す。力のない人々は巻き込まれた」


 うん。この絵は予想してた。爺さんから聞いてたし。1枚目は星の岩から逃げ惑う感じ。2枚目は洞窟で隠れている絵。3枚目は津波に巻き込まれる絵。4枚目は泣き崩れる人。安全な場所がないのは辛いよな。


「星の岩。津波。激しい地の揺れ。これらが襲ってきた。大地が割け。崩れ。築いたものが壊れ。流され。焼かれ。人々の命が失った」


 マジで地獄だよなこれ。


「光すら見えず」


 そんで太陽の光見えてなかったのかよ。やべえな。


「不安ばかり募っていた。どれだけ力のあるものだろうと無力。静かになるまでずっと待つしかなかった」


 不安そうに外を窺ってる絵だな。


「数えて7日。戦いに決着がついた」


 おー。日の光が出てる。あれ。なんか海のとこ、誰もいないような。


「2人の戦士は消え、勝ち負けは分からなかった」


 あ。そういうことか。


「静かになり、人々はようやく……外に出ることが出来た。これにて星降る夜の語りは閉幕。続きはまた別の日にて」


 幕が閉じた。なんていうか。神様っぽいの出てきたけど……嘘だと信じてえ。影響がマジでシャレにならねえし。

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