第20話 世界最古の秘密結社(自称)

「さて。別世界のとある国と星天諸島の言葉がほぼ同じな理由なんやけどな」


 俺が固まっているの知ってるはずなのに、彼奴普通に喋ってる。ちょっとは気遣いという奴をして欲しい。


「まだあるんや。ああ。因みに犯人は僕らな。厳密に言うとちと違う気するけど」


 マジで何言ってるんだ此奴。意味分からねえ。


「おっと。顔に何言ってんだって書いとるな」


 面白そうに言ってやがる。性格が悪い。マジで。


「まあ神の御使いなんでな。いろーんなことが出来るんやで。世界を跨ぐのも造作もないって奴。系統としてあちらさんでもかなり力があってな? やりたい放題なんよな。ああ。心配することないで?」


 いや特に心配してねえけど。


「ぶらぶらしとっただけやから。犯罪なんて起こしてへんよ。上から説教くらうの嫌やもん」


「そーですか」


 ここまでぶっきらぼうに言ったの初めてな気がするな。相手が胡散臭いからか?


「その反応は酷ない?」


「いえ。当然のことかと」


 おっと。コンコも話に入って来た。兄に対して容赦ねえな。


「え。いつもなら流石はお兄様なんて言うコンコが」


 何かカンタが固まったな。普段と違うのは確かなんだけど。


「客観的に見てそう判断したまでです。ぶっちゃけ好みに関してはお兄様と大差ないので、誰もいない時は気にしませんがね」


 コンコがごそごそと何か取り出したな。ものすごく薄い本だな。絵だ。なんて読むのかはさっぱりだけど、ろくでもない奴なのは確実だ。素っ裸だし、変に絡み合ってるし、本能的に視線を逸らしたいし。


「うわーお。エリアル君が露骨に目を逸らした。おもろ」


 いやおもろじゃねえからな。


「お兄様。そろそろあれを述べてもよろしいのでは。これ以上ぐだぐだとやったら、夕方になります」


 コンコ、その本をどっかにしまって欲しい。なんで冷静な顔で見ることが出来るんだよ。


「まだそこまで時間経ってないやろ。ま。飽きるのは確かやしな。その前にコンコ、その本しまっとき」


「それもそうですね」


 よかった。本が見えなくなった。でもやっぱ雰囲気はそのまんまだな。真剣な感じが一切ない。面白半分で語ってる感が満載って奴だよな。御使いなんて初めて会ったけど、みんなこういう感じなのか? それだったら嫌だ。


「うーん。この熱い風評被害。別世界の御使いたちが泣くわ」


「お兄様。心を読むのは流石ですが、この場面で発言するのもどうかと」


 やっぱり心を読まれていた。しかもこの様子だとガチな奴じゃねえか! 行動とか経験則とかそういう奴じゃねえ。


「あっはっは。メタい発言をするのも御使いの特権やし? 言わないと損やろ?」


「そうですね!」


 納得するな。そこは否定して欲しかった。


「さて。あのことを言っとこか」


 あのことって何だろうな。厳密に言うと違うみたいなこと言ってたけど。


「僕らが創設した世界最古の秘密結社、アマタノホウゲンが暗躍したからや!」


 秘密結社。アマタノホウゲン。暗躍。2人の力だけじゃなくて、組織が活動したからってことでいいんだよな。後世に残るのはすげえなって思うんだけどよ。御使いなら別のことをやれよ。スケールが小さいのか分からねえ。どう言えばいいんだ。これ。


「反応うっす!」


「そりゃそうですよ! 御使いが何してるんですか!」


「突っ込まれたやと!?」


 めっちゃショックって顔になってるな。カンタの奴。


「お兄様。勇者は魅力を知ってるわけではございませぬ。ここでドンと宣伝してくださいませ!」


 この兄妹、ダメだ。言葉を広めるためだけに全力でやっちゃうって。神様の眷属なんだろ。確か。多分上司の神様の命令とは違うことをやってる気がする。直感だけどな!


「誤解のないように言いますが、一応本来の仕事もやっております。そう。これは趣味なのです!」


 コンコが力強く言った。一応仕事はやってるのか。そこはひと安心。そんで俺の知ってる趣味じゃねえ。いや学者とかならいるかもしれねえけど。でもなー……広めたいからって、デカい組織作るかフツーは。カンタのテンションがめっちゃ上がってるな!?


「そう! 別の世界にあるニホンという国家に縁があってな。しょっちゅうお邪魔してるんよ。上司もカンサイのキョウトに本拠地を構えとってな? その言葉に馴染みがあるねん。ああ。今僕らが喋ってるのもそう。もっと分類化するとややこしくなるから話はせえへんけど」


 知らない土地の名前が出始めてきたな。ぶっ飛びすぎて、理解できねー。


「やっぱな。僕らのこの土地でも話してもらいたいなと思って、大昔……確か2000年前やったかな。秘密結社を作ったんや。言葉を国中に広め、使ってもらうようにな。それだけやったら、多くの人に使ってもらえなかったかもしれへん。やっぱ別世界の住人の協力もあってのことや」


 だから厳密に言うと違うって言ったのか。自分達だけの力じゃねえから。コンコが懐かしそうに振り返ってる気がする。


「そうですね。自然に話せる協力者が必要不可欠でした。上手い具合に引き込めていて良かったです。お兄様の提案に賛同をする者が多く、文字や喋りなどを伝えていったので、遠い土地でも喋る方もいます」


 よそから来た俺はちょっと特徴的だなって思うぐらいで、大した差はねえ気がするけど、地元じゃねえと分からねえもんか。


「さあ。あなたもコトベンを習得してはいかがでしょうか」


 なんか勧誘来たんだけど。コンコは可愛く見せようとしてるけど、あれを見てると効果ねえんだよな。そもそもの話、勉強が出来るタイプじゃねえし。


「ご遠慮しときます。旅をしながら勉強は難しいです」


 予想してたのか、2人の表情に変化はなし。カンタが立ち上がった?


「まあそう言うわな。コンコ、エリアルを外まで送るわ。ここで留守しとき」


 あ。もう外に出るのか。立ち上がって、カンタについていこう。地上の階に出たら、視線が痛いんだよな。多分カンタがいるからだろうけど。


「ま。気が向いたら、支社に遊びに来てな。全国におる偉い人に知らせるから」


 げ。それは勘弁して欲しい。


「やめてください」


「もうやっちゃった」

 

 舌を出しても可愛く感じねえ。胡散臭い部分が滲む出てるからだろうな。とりあえず感謝だけ言っておこう。知らなかった事を知ったから。


「学のない俺に教えてくれてありがとうございました」


「気を付けてな―」


そんな感じで書物がある木の塔から離れた。どう書こう。最初に出会った御使いの兄妹は変人だった。とかそんな感じでいいか。

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