第8話 竜骨の島

 ギョクトの島から出て、どんぐらい経ったか。10時か。結構時間経ってたな。


「そろそろリュウコツの島だね」


「ねえ。お父さん。リュウコツってなあに?」


 親子の会話、ちょっと勉強になりそう。聞いておこう。


「船のことだったり、お薬のひとつだったり、色々とあるんだけどね。最強の生き物、神と同格と言われている竜の骨なんだよ」


「リュウジンサマ!?」


 おー子供の目、輝いてる。そんで親父っぽい人は苦笑い。意味はさっぱり分からねえけど、ぶっ飛んだ発言だってのは……何となく分かる。だってお父さん、苦笑いしてるしな。


「うーん。リュウジンサマではないんだけど、まあ神様ってのは変わりないよ。強いカミサマの大事なものだって。だからエンギが良いとかで、ミコたちが大切にしてるんだよ」


「そっかー。凄いものなんだね!」


「そうだよ」


 ずっと大事にしてるのか。どんな感じなんだろうな。やっぱ建物の中にしまい込んでる奴か。古代の竜を研究してるティラノのとこの地下に色々とあったっぽいし。


「お前たち。そろそろリュウコツの島だ。寝てる奴を起こせ起こせ」


 船乗りがそう言うってことは本当に着くのか。つーか。どんどん暑くなってるのに寝てる奴なんてい……いた。周りの人が叩き起こしてる。


「オイノリの時間だぞー」


「起きろ起きろ」


「いだだだ引っ張るな引っ張るな!」


 訂正しておこ。叩き起こすじゃなくて、髭を引っ張って起こすだ。それよりオイノリって何のことだ。


「あれ。お前さん。どっから来たんだ。全然理解してねえだろ」


 他の客にバレてた。そりゃキョロキョロ見てたらそう感じるか。


「あはは。大陸の方から来てまして」


「納得した。とりあえず前で両手を合わせて、こんな感じでオジギをしときゃええから」


 両手を合わせて、お辞儀をして。


「そうそう。そんなんでええから」


 これで問題なしか。形だけでもやっておかねえとな。……船が止まった。でっか!? 竜の骨か! なるほど。何となく分かった。


「あれがリュウコツだよ」


 てか……見上げるぐらいでけえ! あれ胴体の部分だよな!? どう見ても! 近くに島があるからそこでミコとやらが活動してるのか。


「リュウコツ様に向かってキトウを」


 あ。ここで例のあれをやるのか。教わった通りに両手を合わせてお辞儀っと。ちらっと見て、同じタイミングで顔を上げて、両手は腰辺りに。これでいいか。……良いんだよな?


「すげえ大きい!」


 あんな大きいの見たら興奮するよな。小さい子なら尚更。あれ。向こうから小舟で近づいてくるな。


「ミコが差し入れしに来たんだよ」


 オイノリを教えてくれた人、色々とありがとうございます。差し入れか。何あげるんだろうな。


「差し入れですか?」


「ああ。この季節だと砂糖が入った炭酸水が入った瓶さ」


 マジでそうだった。船乗りが受け取ってる。黒髪長いな。上は白い。袴っていうんだっけ?ズボンみてえなの赤いんだな。十代後半とかそんな感じだよな。うわ。船乗り、デレデレになってる。


「どうか。あなたにも神のゴカゴを」


「ありがとうございます」


 その割にめっちゃあっさりとしたやりとりだなー……。挨拶さっさとやって、ミコの人、島の方に戻って行ったし。


「差し入れが来たし、好きに飲め! 冷えてるからな! 茶碗はこっちにあるから好きに使え」


 おー太っ腹だ。ありがたくいただこう。


「いやーありがてえわ」


「これが酒だったら……良かったんだけどな」


 ここにも酒好きがいたか。犬っぽい耳おっさんと羊っぽい感じのおっさん。確かミコの島、飯が美味いんだよな。そこでガンガン飲んでそー……。美味い酒だけでも進むとは思うけど、飯があったら倍になるし。


「ねえ。ミコの島にレンアイジョウジュのジンジャってあったっけ?」


「それは別の島だな」


「え。何処!?」


 ミコの島って神様が集まる島……なんだよな。年に一度、秋頃、星天諸島にいる神様が集合して大宴会をするとか。神様が祀られてるとこ、多いのかもしれねえな。あの女性が望むような神様はいねえっぽいけど。


「ねー。あそこって高いとこにジンジャあるんでしょ? 行かないの?」


「あれはちょっとキツイかな」


 竜骨について話してた親子の言う高いとこって。そう言えば絵でやたらと長くて急斜面の階段の、あったな。それのことか。メモはしてたんだよな。えーっとあったあった。これか。実物見てるわけじゃねえから何も言えねえけど、まだ5歳近くの子にあれは……酷だと思う。そりゃ親父っぽい人、キツイかなって言う。まあこれぐらいは問題ねえし、どんな感じか見に行こう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る