どこにでもいるごく普通のモブな少女の正体は銀髪巨乳美少女でチート能力持ちだった
がるる
第一章 モブ女子と金髪美少女と黒猫
モブな少女、初めてプロポーズされる
魔法や便利な魔道具が発達したこの世界に、ある一人の少女がいた。
「よう、アイリス! その醜い顔を俺に見せろよ~」
「……」
アイリスと呼ばれた少女は、男からいじめを受けていた。
そんな彼女は、どこにでもいるごく普通のモブな少女である。年齢は今年で15歳。家族構成は父と母。だが今は、どちらも行方不明だ。母親はアイリスが生まれて物心が付く前に、父親は五年前にいなくなってしまった。
アイリスは、いつか両親が戻ってくると信じて、孤児院には行かず、今も生まれ育った家に一人で住んでいる。生活費は、父親から教わった回復ポーションを自作し、それをお世話になっている道具屋へ売却して稼いでいた。
今日も回復ポーションを売りに行く途中であったが、アイリスを虐める男――テッドと遭遇してしまったのだ。
「おーい、無視かー?」
「……」
幼少期からずっとテッドに物を盗られたり、ブサイクやデブなど暴言を吐かれたりしていた。
それ以降、アイリスは醜い容姿を隠すため、いつも黒いローブを身にまとい、そのフードを目深に被って外出するようになったのだ。
――アイリスを虐めているテッドだが、実は彼女に惚れていた。思春期にありがちな意中の人に意地悪をしてしまう行為だ。それをずっと引きずって、今に至る。
「………話しかけてこないで」
「はぁ!? 友達0人のお前に、この俺がせっかく話しかけてやったのによぉ……」
(………余計なお世話)
アイリスは、これ以上会話をしたくないので、歩き出そうとするが、テッドに肩を掴まれる。
「おい、待てよ。その荷物……回復ポーションか?」
「あなたには関係ない」
「へっ、俺が貰ってやるぞ」
「やめて!」
テッドはアイリスのポーションを奪おうとしてきた。このポーションは、お世話になっている道具屋へ卸す商品なのだ。絶対に渡すわけにはいかない、と抵抗する。
しかし、男の力には敵わず、ポーションを1本取られてしまった。
「モブはモブらしく主人公(俺)の言うことを聞けばいいんだよ。 ポーションありがとな!」
がはは、と笑いながらテッドは去っていった。
鬱憤した気分の中、道具屋に着いたアイリスは扉を開けた。ベルがカランカランと鳴る。
「こんにちは、プランさん」
「いらっしゃい、アイリスちゃん。今日も回復ポーションを?」
おっとりとした女性――道具屋の店主プランが出迎えてくれた。
はいと答え、アイリスは納品するポーションを渡し、プランは受け取った回復ポーションを数える。
「あら、1本足りないわね」
「えっと……」
「言わなくても分かるわ。――テッドね」
「はい……」
「まったく、あの男は……」
プランはむくっと怒った顔をしながら、手続きの準備をする。
すると2階の階段から降りてくる音がした。
「あら、キッド」
「あ、アイリスさん! こんにちは……」
「こんにちは」
キッドと呼ばれた少年は顔を赤らめながら挨拶をする。
「お姉ちゃん、ポーション運ぶの手伝うよ」
「ありがとう~」
姉弟は作業を始めた。暇になったアイリスはカウンターの上にある新聞に、ふと目がいく。
「プランさん、この新聞を読んでもいいですか?」
「いいわよ~」
プランから許可をもらい、アイリスは新聞を広げて読み始めた。
『勇者パーティー、ゴブリンクイーン討伐!』
『竜の帝国、武闘大会開催決定!』
(勇者って王都の第一王子なんだよね。一目でもいいから見てみたいなぁ)
アイリスは勇者に憧れを抱いていた。それは、昔から勇者が活躍するファンタジー系のジャンルを好んで読んでいたからだ。
新聞を読み終えたら、手続きも終わったようだ。プランから銀貨を受け取る。
「アイリスちゃん、いつもありがとうね! それと帰り道には気を付けて。最近物騒だから……」
「そうなんですか?」
「えぇ、誘拐や窃盗とか。噂では領主が関わってたり……アイリスちゃんは美人だから本当に気を付けてね!」
「ご忠告ありがとうございます。ただ、あたしはブサイクなので大丈夫かと」
「うーん、かなりの美人だと思うけど……」
「お姉ちゃんの言う通りだよ」
姉弟が言う通り、アイリスは美人である。雪のような白い肌、どこかミステリアスで色っぽい紫の瞳。銀色に輝く髪を背中まで伸ばしている。
そして、ローブで隠れているが、胸部にはたわわに実った果実がある。動けばユサユサと揺れているだろう。要は銀髪巨乳美少女だ。
しかし、アイリスはテッドから容姿に対していつも侮辱をされていたため、自分の美貌に自覚がないのだ。
「……ありがとうございます。気持ちだけでも受け取りますね」
お店を出たアイリスは夕ご飯の献立を考えながら歩いていると、いつも通る広場が騒がしかった。どうやら、剣を腰に携えている金髪の美少女と街を警備している兵士達が言い争っているようだ。
「この女を連行するぞ」
「どうしてですの!?」
「お前が俺たちに刃向かったからだ」
「貴方がわたくしの剣を盗もうとしたから……」
金髪美少女は兵士に言い返す。現に彼女は何もしていない。たまたま広場を通ったら、兵士に絡まれて剣を取られそうになったのだ。
「うるせぇ、俺達は町を守る兵士だ! 兵士の強奪行為は正義となるっ!」
「そんなこと……この町の領主が黙っているわけありませんわ!!」
「くくっ……それがなんと、領主も認めてるんだぜ!」
「は?」
金髪美少女は兵士の言葉を聞いて驚愕した。
「俺たちの行為は全て領主公認! 人攫い、強奪、強姦……全て正義だ」
「あ、あなた達……狂っていますわ。許せません……!!」
「お前一人で何ができる? よし、お前ら! 連行して女体を目いっぱい楽しむぞ!」
「「おぉー!!」」
剣と剣がぶつかり合う。金髪美少女と兵士達の戦いが始まった。
「
別の兵士が魔法を唱える。すると小さな火の玉が出現し、それを金髪美少女へと向けて放った。金髪の美少女はその攻撃をかわす。だがその攻撃はアイリスの方へと向かってしまった。
「そこのあなた! 火の魔法が……」
「えっ」
金髪美少女の声のおかげで、アイリスは何とか火の玉を避けることができたが、ローブに少しかすってしまった。そしてローブが燃え始めたので、アイリスは急いで脱ぎ捨てた。中に着ていた白ブラウスは一部焦げて、胸元やお腹あたりの肌が見えている。
アイリスは火傷がなくて安堵するが、自分の醜いと思っている容姿をこの場にいる全員に見られてしまった。同時に謎の声がアイリスの脳内に響く。
『スキルの封印が解除されました』
アイリスがなにこれ、と思っていたら、兵士達の様子が激変する。
「そこにいる美しい天使様! 俺と結婚を前提に付き合ってくれ!!」
「いや、俺と!」
「俺だー!!」
突然、兵士達はアイリスへ愛のプロポーズを始めた。
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