第22話 発言にはご注意

 ゴールデンウィークが終わる。

つかの間の休息が終わり、いつもの日常に戻る。……まあ、普通に学校が始まるっていうことだけど。しかしそんな現実に俺は——


「……行きたくねえなぁ」

 

 と溜め息と共に登校していた。……まあ、なぜこんな気持ちになっているのかと言うと、端に川瀬とどんな顔で話せばいいか分からないからだ。自分が川瀬にどんな感情を抱いているのか……それはこれから川瀬と過ごす中で見つけるとは決めたものの、いざとなると気は弱くなる。……昨日は通話だったから良かったものの、実際に顔を合わすと平静を保てるか不安だ。

 

「……まぁ、なるようになれ、だな」

 

 歩きながらそんな半ば諦めた思考になる。ぶっちゃけあれこれ考えたところでどうせ、いつものように川瀬にからかわれるだけだろうしな。……と、そんなこと考えてる内にいつの間にか教室の前へとたどり着く。

 

「……はぁ」

 

 一つため息をつき、教室へと入り自分の席に向かう。

 

「おはよ、谷口!」

「……っ! あ、ああ……おはよう川瀬」

 

 川瀬の挨拶にドキっとしながらも何とか平静を装い挨拶を返す。チラリと川瀬を見やると、とても楽しそうにニコニコしていた。何かいいことでもあったのだろうか?

 

「……すごく機嫌良さそうだな。何かあったのか?」

「ん? いや、別に? ただ……また谷口とこうやって直接会えれるんだなと思うと嬉しくて!」

 

 満面の笑みでそう言う。

 

「……っ なんだよそれ……って言うか二日前までキャンプで面と向かって話してただろーが」

「それはそうだけどさ……って谷口なんか顔赤くない?」

「は!? 別に赤くねーし」

「いやいや赤いよ。あれー? もしかして照れてるー?」


 川瀬はニヤニヤして言う。いつもの川瀬だ。しかし、ここでマウントを取られ続けるわけにはいかない。最近、川瀬に翻弄されっぱなしだし、ここらで仕返ししなきゃ俺の立場が危うい。

 

「……まあ俺も川瀬に会いたかったし」

「えっ……」

 

 ……あれ? いや違う違う! 何口走ってんだ俺は! 違うこと言うつもりだったのに! これじゃあ俺が川瀬と早く会いたかったみたいじゃねえか! これは川瀬に絶対からかわれる……! そう思い、川瀬の方を見る。川瀬はというと、ニヤニヤしている様子もなくただ顔を真っ赤にしてうつむいていた。

 

「か、川瀬……?」

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 びくりと川瀬は身体を震わせて反応する。

 

「顔、真っ赤だぞ……?」

「はー!? 別に真っ赤じゃないし! てか、そんなに私と会いたかったの谷口? 私のこと好きすぎじゃなーい?」

「うっ……いやそれは……言葉の綾というか何と言うか……!」

 

 ちくしょう! 自分の発言だから言い訳のしようもねぇ! あははは、と川瀬は笑う。……笑いすぎだろ。そしてひとしきり笑うと川瀬はこちらを見てニヤリとして言う。

 

「じゃ、今日もよろしく。谷口♡」

 

 ……面倒な一日になりそうだ。

 

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