第四十六話 『遂に来た』


『ササキバラさん、準備は良いのさ?』

「ああ、待ちきれないくらいだよ。」


 僕は、後ろに居る仲間たちを見回す。

 ここ二週間間、僕は毎日ただただ対冥皇の為の戦力を集めていた。

 ペテラウスさんや小紋を始めとして、固有スキル持ちも一人居る。

 それに、冥皇の相手は清原がしてくれるらしいので、僕は対冥皇の弟子たちの為の戦力を集めていた。

 それも今日の為。

 僕の出番は、清原が冥皇を倒した後の冥皇の弟子たちの対応だ。

 弟子たちは皆深く冥皇に心酔している奴ばかりらしい。

 冥皇が倒されたと知れば、きっと復讐の為に動き出すはずだ。


『じゃあ、さっさと殴り込みに行くのさ。弟子たちの場所は既に分かっているのさ。』

「ええ、すぐに行きましょう。もう、この子の衝動を抑えるのも限界よ。」


 自身の腰に掛けている魔剣に手で抑えながら話す少女は、美香だ。

 僕が戦力を集めようと思った時にまず立ち寄ったのが、とある町外れの孤児院だった。

 「鑑定眼」の能力を使えば、多くの原石の中から戦力になりそうな人材を集めることが可能だと思ったのだ。

 孤児院に居た時に、彼女に名前が無かった為美香という名前は僕が付けた。

 美香は優秀だ。

 一を聞いて十を知るという言葉がまさにピッタリで、僕が少し何かを教えるとそれをどんどんスポンジの様に吸収していく。

 とても頭も回るし、何より強い。

 今日まで冥皇に僕らのことがバレてこなかったのも、美香のお陰だ。

 ただ、一つだけ欠点が。


「ねえ、あなたもそう思うでしょう。」


 美香は腰の魔剣に話しかける。

 そして、何やらブツブツと話し出した。

 何時どこで拾ったのかは知らないけれど、美香はいつも腰の剣を常備していた。

 さらに美香は、その剣と度々会話を始めるのだ。

 美香は剣と話していると言うが、本当かどうかは未だに定かではない。


「そうだよな。俺もこの二週間で鍛え続けたんだ、ようやく本番かよ。」


 緊張感と言うよりも、高揚感を顔全体に押し出している男は僕の元クラスメートこと、小紋だ。

 小紋には、戦力を集めたり冥皇についての情報収集等を任せるつもりだったが、彼の性格上全くもってその仕事をやることが出来なかったので、仕方なく町外れのダンジョンでレベリングをしてもらっていたのだ。

 クルトのサポートもあったお陰で、今や130レベルにもなったとのこと。


『じゃあ、四人は一旦オイラに付いて来て欲しいのさ。みんなは、王宮に居る冥皇の弟子たちの下っ端の相手をお願いするのさ。』


 クルトが、最終確認として僕達に告げる。

 僕、小紋、美香、そして僕らの最後尾にどんと座っているペテラウスさん。

 この四人は、今から冥皇の弟子たちの中で固有スキル持ちのところへと向かう。

 固有スキルを持っている者と持っていない者との間には、戦闘においての地力が違い過ぎる。

 弟子たちの中でも、固有スキル持ちは極僅かだ。


「よし、行くか。」


 そう言って、僕たちはアジトである酒場を後にしたのだった。



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 はっきり言って、僕達の役割は必要無い可能性が高い。

 もし清原が冥皇を倒してくれるのならば、「追跡」の効果も解けて僕らは晴れて自由の身だ。

 清原に頼んで「次元転移」で何処か良さげな場所に連れて行ってもらうのも手としてはある。

 冥皇の弟子たちを倒すのは、あくまで保険だ。

 スキルやステータスというものが存在する世界で、もし何らかのスキルで僕らを追ってこれるスキルを持った人間が居た場合を考慮してのものだ。

 スキルを持って生まれるのは千人に一人、固有スキルは一万人に一人だ。

 この王都の人口が約五万人らしいから、単純計算で五人程存在することになる。

 美香、ペテラウスさん、で二人。

 冥皇の弟子たちに三、四人くらいは居ると見ておくべきだろう。


「じゃあ、「認識阻害」を使うね。」


 僕らは、美香の固有スキルによって匂い、足音、そういった気配が全てゼロになる。

 「認識阻害」とは文字通り、他者から認識されなくなるという能力だ。

 美香が許可した人間でなければ、お互いが見えているのにも関わらず気付けないという茶番みたいな絵になってしまう固有スキルだ。

 そしてこの能力の凄いところは、清原の「危機感知」といった探知系のスキルすらも潜り抜けることが出来るのだ。

 「危機感知」は反応する。

 でも、清原はその警報に気が付けないという状況になるとのこと。


「ペテラウスさん、今は気配を消さなくても良いんですよ?」

「すまないすまない、どうしても癖でね。」


 そんあ声が聞こえた瞬間、僕はペテラウスさんをやっと目視出来た。

 清原の記憶でも呼んだ通り、ペテラウスさんは人外レベルで気配を消すことが出来る。

 漫画とかで読んだ時は笑っていたが、目の前で同じことをされるともう訳が分からない。

 そんなことを思いながら王宮を走ること数分。

 僕らは何の変哲の無い扉の前に来ていた。

 そして、クルトは緊張した面持ちで僕らの方を振り返った。


『この扉の奥居るのさ。』


 その言葉に、僕らは無意識の内に唾を飲み込んだ。



~あとがき~


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