ある晴れた日

玄栖佳純

1 出会い

第1話

 ある晴れた日、お散歩をしていたら

 人間を拾った。



「君は……、人間なのか?」

 そう言われて、ボクは首を傾げた。


 そんなことを言われたことがなかった。


 癖のある黒い髪が伸びていてひげもじゃで、薄汚れた服を着た男の人。疲れ果てたように前時代的な自販機に寄りかかっていて、ボクはそれをじっと見ていた。


 お散歩の途中にあった、いつもとは違うモノ。

 いつもとは違う何か。


 それが喋って、ゆっくりと動く。

 機敏な感じがしない動き。ハラハラしてしまうヨロヨロした感じ。


 それが顔を上げてボクと目が合った。

 ズタボロな姿をしていたけれど、澄んだグリーンの目をしていた。


「違うよ」

 そう言うと、その人はがっかりしたように、力なくうつむいた。


(綺麗なグリーン)

 その色が見たかったから、しゃがんでその顔を覗き込む。でもよく見えなかった。


「お兄さんは人間なの?」

 ボクと同じように胴体に頭と手足が付いていて、お父さんからきいた人間の特徴と一致している。


「……そうだ」

 それだけ言うと、目を閉じる。


 綺麗な緑がもっと見えなくなった。

 でも、しゃべっているのもやっとという感じだった。


「お兄さん……、お兄さん。人間のお兄さん」

 声をかけても、反応が返ってこなかった。


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