7話 逆転準備の話

「ハベジケト! 」


3組のエリートで将来有望と言われているナナリの杖の先から眩い光が放たれる。


「魔法防衛陣! 」


レイナさんは緊張で上擦った声でそう唱えたが、虚しくもその魔法はかき消されてしまう。


「おいおい、アタイが使ってんのは基本中の基本の魔法だぞ? 」


ヘラヘラと笑いながらナナリは杖をクルクルと回す。


レイナさんは次の魔法を撃つために杖を構えるが、その手は震え体には力が入っている。


「はぁ… おめぇらみたいな雑魚でも、ここから卒業したら、冒険者になるんだろ? だったらこの程度の実践訓練で震えてちゃ何にもなんねぇーぞ! 」


ナナリは杖を持った手を自分頭の持ってくる。


そして杖の先をレイナさんの方向へ向ける。


「これがアタイの聖勢(せいせい)だ」


聖勢とは《聖なる姿勢》と呼ばれるその人の魔力の扱いが最も効率的に行われる姿勢の事だ。


対人同士の戦いではその聖勢で魔法を放たせないことが基本だ。


「お前の聖勢も見せてみな?」


ナナリはクイックイッと指を曲げてレイナさんを挑発するような仕草をする。


「私の聖勢…… 」


両手で杖を持ち胸元に持ってくると目をつぶる。


「いいぜ、お前の魔法を撃ちな? 」


ナナリはニヤッと笑い聖勢を維持する。


水魔法龍水


そう唱えるとレイナさんの周りを龍の形状をもした様な水が勢いよく立ち上る。


「おお、なかなか良い魔法持ってんじゃねぇか」


ナナリは少しだけ驚いたような仕草を見せ、雰囲気が少し変わる。


「おい、ナナリお前の持ってるのはシラギだぞ、大丈夫か? 」


ポイ先生は少しだけ焦っているようだ。それもそうだ、あの魔法は中級に近いレベルの魔法で、シラギでは受け止めるのは厳しいだろう。


だがナナリはあまり気にしていないようだ。


恐らくシラギの許容範囲を知らないのだろう。


火炎魔法灯火


ナナリの周りには数十個の火の玉が飛び向かってくる龍水にぶつかっていく。


しかし、それは一瞬のことで龍水はすぐに消えてしまった。


「はぁ? てめぇ何してんだよ!」


「あ、あの私聖勢が上手く制御出来なくて…」


クスクスという笑い声が、周りから聞こえてくる。

明らかにレイナさんを嘲笑しているようだ。


「チッ! 願い下げだぜ。 《ハベジケド》」


ナナリがそう唱えるとレイナさんの杖が、弾かれる。


杖はレイナさんの手を離れ、どこかへ飛んでいってしまう。


「ほらほらー、早く取ってこいよ! ぶっ殺すぞ」


ナナリはわざと外すようにコントロールしながら魔法を飛ばしてくる。


「ナナリの悪くせでたな」


5組の誰がそう呟いた。


「今回はどのくらい逃げれるかな? 」


「逃げろ、逃げろ〜死んじまうぞ〜」


5組の生徒達はまるでゲームをするかのように野次を飛ばしていた。


「おわっ! あぶね! 」


流れ弾が僕の方へも飛んできた。


「こりゃ、ちょっと酷いな」


僕がそうボヤきながら服に付いたホコリをはらった時丁度転がっている杖が目に留まる。


「これ、レイナさんのか…… 」


僕は杖を拾い上げ眺める。


シラサギ、サラサキ、テツツの葉で巻かれている白を記帳とし少し青みがかった色をした杖。


「ふむふむ、レイナさんらしい杖だな」


「あ、あのすみません…… 杖返してもらってもいいですか? 」


僕が杖を関心を向けているとレイナさんに声を掛けられる。


どうやら僕が隠れた木陰はナナリの死角に当たるらしく、追撃は病んでいた。


「あ、ごめんなさい。これ返しますね。あ、あと―」


僕はナナリさんの手に杖を返す時、少しだけ耳打ちをした。


「え、それって―」


レイナさんは驚いていたが、どこか嬉しそうは表情を浮かべていたような気がする。



<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


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