第16話 覚醒する咆哮



 爆発!

 超絶なる力のぶつかり合いによって、爆発が起こった!

 身体の芯に響く衝撃が観客席を襲う。

 粉塵が舞い、戦う二人の姿を確認する事は出来ない。


 「リューリ……」


 ただ一人、ドラゴンの眼を持つアシェッタを除いて。

 アシェッタは見た。

 粉塵の中で巻き起こる、壮絶なバトルを。


 「大地のエレメントよ———」

 「光のエレメントよ———」


 方やフィールドの地形を操作する荒技。

 もう一方は光を収束させて打ち出すレーザービーム。

 コロッセオが、揺れていた。


 「こんなバトルの近くに居たらバリアがあっても危ねぇ、俺は逃げるぞ!」


 観客席に居た生徒達が、一人、一人とコロッセオから逃げていく。

 そして、その度に衝撃は強くなっていった。


 「うわっ!」


 大地を操ったリューリによって、アマミヤの真下の地面が唐突に地盤沈下を起こした!

 一メートル近く落下したアマミヤは、隙を晒す。


 「火炎のエレメントよ、死の風と成りて吹き荒べ!」


 そこへ、リューリが放った上級炎魔法が放たれる。

 四方を地面に挟まれたアマミヤに、回避の手段は無い。


 「氷のエレメントよ—————————」

 「無駄だァ!」


 咄嗟に氷の盾で防ごうとしたアマミヤだったが、炎より早く飛び込んできたリューリに叩き壊されてしまった。


 「こんなに近付いちゃ、君も炎に当たっちゃうんじゃないかい?」

 「お前に攻撃を当てられるなら構わねぇ。我慢比べと行こうぜ、チェッカーボード!」


 炎が、二人を襲った。

 リューリは予め風魔法によるストーム・バリアを貼っていた為ダメージは軽減されている。

 それでも尚、上級炎魔法の威力は高い。


 「ぐああああああああああああああ」

 「ぎゃああああああああああああ!!!」


 いきなりパワーアップしていけるかと思ったが、痛み分け覚悟の攻撃はいつも通り痛えな……

 だが、バリアが無い分アマミヤの方が被害は大きい。

 このリードを守って、押し切る!


 リューリ君のバトルは何回か見学したからこういう手も知ってたけど、まさか覚醒しても同じ手を使うとはね……癖なのかな?

 でも、こんなんじゃまだまだ足りない。

 ギリギリまで追い詰めて、限界を超えた魔法を使わせてやる!

 

 やがて、両者にダメージを与えた炎が消え、一瞬の沈黙。

 先に動いたのはアマミヤだった。

 拳大の氷の塊を飛ばすアイスバレットを連射しつつ、リューリと距離を取る。


 「疾風のエレメントよ————————」


 リューリは迫り来る氷塊を、中級風魔法で吹き飛ばした。

 そして、沈下した地面からジャンプして脱出。アマミヤとの距離を詰める為、コロッセオを疾駆する。


 「じゃあ、これならどうだいっ!」


 アマミヤの放った疾風の刃がリューリに襲い掛かる。

 だが、リューリは避けようともしない。

 当然、リューリは風の刃に被弾するが、無傷だ。


 「安い攻撃じゃ牽制にもならないか……」


 想像以上の厄介さに、アマミヤは思わず唇を噛む。


 「今度はこっちから行くぞ!」


 リューリは走りながら詠唱を開始した。


 「天地穿ちし神話の槍よ、ドラゴンの咆哮に呼応し、今ここに幻出せよ——————」


 そして、流鏑馬の様にそれを放つ。


 「グングニル!」


 神話に登場せし、火炎の魔槍。

 その再現が大気を焦がし、アマミヤの腹部を抉り飛ばした。

 倒れたアマミヤに、すかさずリューリが迫る。


 「更に……もう一発だ!」


 超級の魔法の連打。

 Sランクですら可能な者はアシェッタしか居ない。

 つまり、人智を超越した力。

 だが、ここまで来てもリューリはリューリだった。

 なんと、二発目のグングニルを、アマミヤの数ミリ右側に打ち込んだのだ!

 ダメージにふらつくアマミヤは、それを見切れてはいない。

 当然の様に、左側へ回避する。

 —————————そこには、


 「もらったァッッッ!」


 龍の形相となったリューリの抜き手が、アマミヤの胸を貫いた。


 「ガハッ……」


 吐血。

 吐き出された血の中には、白い羽毛が混じっていた。

 リューリは何か不吉なものを感じ、咄嗟に飛び退く。


 「テメェ、鳥の踊り食いでもしてたのかよ……」

 「ははは……君は凄いなぁ……ホント……」


 アマミヤは、窮地も窮地だと言うのに笑っている。

 彼女の口から漏れる掠れた声が、リューリにはとても恐ろしいモノに聞こえた。

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