第8話

 アルト達はチェントロの町を出て、ステロの町との間にある白の泉に向かった。

「すらすけ、すらみ、頑張ろうね」

「ぷるん」

「ガンバル」

 アルト達が草原を抜け、白の泉の周りにある森に入ると、聞いたことのある声がした。


「なんだ、また君たちか」

「……ユーナさん!?」

 ユーナは舌打ちをした後、ふと思いついたように言った。

「おや、スライムに襲われているようだね」

「違います! すらすけとすらみは僕の大切な仲間です!!」

 アルトの言葉を聞かずに、ユーナはすらすけ達に杖をかざし雷の魔法をかけた。

「ライト・サンダー!!」


 すらすけとすらみの体が、雷に打たれて光った。

「!?」

「イタイ!!」

「止めろ!!」

 アルトはユーナに駆け寄ると、剣でユーナの杖を叩いた。


「おっと、スライムを助けるのかい? アルトくん」

「言っただろう!? すらすけとすらみは、僕の友達なんだ!!」

「ぷるん」

「ソウデス」

 ユーナはアルト達の台詞を聞いて鼻で笑った後、もう一度杖を構え呪文を唱えた。

「サンダー!!」


 その時、アルトの目が怒りで暗く輝いた。

「スライムマスタースキル発動!! 弱体化!!」

 アルトの手から、赤黒い閃光がはなたれ、ユーナを包んだ。

「な、何だ!? 体から力が抜けていく!?」

 ユーナの魔法はすらすけたちに届く前に消えた。


「ヤメテ、アルト、ダメ」

「……はあはあ」

 アルトはすらみの声を聞いて、我に返った。

 体中が重く、熱い。


「……アルトくん、何か不思議な力を身につけたようだね」

「ユーナさん、もう僕達の邪魔をしないでください」

「ふん、もう行くよ。せいぜい、ゴブリンに気をつけることだね」

 ユーナ達は森の奥のゴブリンの巣へ向かって歩き始めた。


「……アルト、ダイジョウブ?」

「ぷるぷる」

「大丈夫。心配させてごめんね」

 アルト達は白の泉に移動した。

 そして泉の傍に生えている薬草と毒消し草を、指定の袋がパンパンにナルまで摘んだ。


「それじゃあ、お昼を食べたら帰ろうか」

「ウン」

「ぷるん」

 すらすけとすらみは泉の水を飲んで、満足そうに体を震わせていた。

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