第7話

「貴女。知ってる?可愛い子うさぎちゃんは一人ぼっちで寂しくなると死んじゃうのよ?」


温室を出ようとするれいこの背後から、聞き覚えのある声で言われた。

見ると、そこには麗しい大天使ガブリエル様が立っていた。


「何よ、ゆり。見てたの?」

「だって面白いのだもの!!貴女たち!!」

ゆりは、またいつぞやの嫌味な笑いをする。

「私の知ったことじゃないわ。勝手に死ねばいいのよ。そうしたら代わりを見つけるまでだし。」

「こわぁ~い。大天使なんて嘘もいいところね。」

「五月蠅い。」


煩わしく感じたれいこがゆりを無視して行こうとすると、彼女はれいこの前に躍り出た。

「子うさぎちゃんは、置いておいて。あの子?貴女のお気に入りは。」

すみれの話題になると、途端にれいこの目は輝き出す。

「見た?見た?あの子、とてもとても可愛いでしょ?」

「そうね。それ以上に貴女が好きそうな顔だわ。」

「そうなのよ!何も知らない純粋な子。そんな可愛さがあるのよね。そんな子をよ!あー、乱したい滅茶苦茶にしたい壊したい!!」

1人で盛り上がるれいこにゆりはうんざりしながら冷めた目で見る。

「本当に最低な女。」

「最高の褒め言葉ね。あぁっ!もう!思い出してきたじゃない!聞いた?あの子、震えながら私のこと、れいこさんって呼んだのよ。あぁ、可愛かった!あの目、見た?たまらない!はやく、私のものにしたい。あぁぁ、どうしよう!壊したい!壊したい!!壊したい!!!」

恍惚とした表情でれいこは両手で顔を覆う。そしていきなりゆりに口付けた。


「ちょっ!ちょっと!こんなところでやめてよ。誰かに見られたら・・・。」

「いいのよ、見られたって。私は今それどころではないの。私の部屋に来なさいよ。」

「はぁ!?い、嫌よ。このままだと、また私を道具みたいに滅茶苦茶にするんでしょう!?」

すると、れいこはゆりの腕を掴んで自分に思い切り引き寄せる。


「いつもならね。でも今は違うの。私が滅茶苦茶になりたいの。」


れいこは、そう言うと制服の袖を捲り自分の腕にゆっくり舌を這わせた。そしてそのまま自分の指を舐めて陶酔しきった顔をする。


その仕草がその表情が、この上なく官能的で、ゆりは恐ろしささえ感じた。


整った美しい顔が欲にまみれ壊れていく様はこれほどまでに恐ろしく、人をどれほど惹きつけるのか、計り知れない。

彼女が今以上に乱れたら、どんなに美しいことかと、そして自分はその美しさに耐えられるのだろうかと、ゆりは身震いをする。


でも、だからこそ。


「いいわ、見てあげる。貴女が滅茶苦茶になる様を。私だけがそれを見てあげる。」

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