第27話 お時間ありますか?
時間はまだ結構ある。
が、白石さんと槻木さんはコスプレ姿のままモールの中で買い物やゲームを楽しみ始めてしまった。
俺は空いた時間で一人で来ていそうなコスプレイヤーの方々に声をかけ、撮影している。
沢山の人と関りを持ってほしいと、白石さんに言われ別行動をしていた。
確かにいろいろなコスプレイヤーの方の写真を撮ると勉強になるのは確かだ。
一人一人、どこに力を入れいているのか、何を見てほしいのか、どんなふうに撮ってほしいのか。
自然や建物、人ではない写真はその一瞬を収める。
でも、人の撮影はまた違った。
一言でいえば難しい。
ほんの一瞬の表情や仕草、流れを読まないと思った写真は撮れない。
拭き抜く風、瞬きをする一瞬、その仕草の一瞬を逃すことはできない。
思ったよりも精神力を使う。こんなに疲れたことはないくらい、疲れてくる。
「ありがとうございました。後でデーター送りますね」
初めて出会った人たちと、交流を深め連絡先を交換していく。
いままでの生活だったら考えられないくらい、新しい知り合いができていく。
たった今撮った写真も、初めてあった人だし声を交わしたのも初めてだ。
彼女にモニタを見せ、写真を確認してもらう。
「こんな感じに撮れました」
「きれいですね、ありがとうございます。一人だったらから助かりました。また、お会いした時も撮っていただけますか?」
「もちろん。でも、いつどの会場に行くかはわかりません。この先の予定は決まっていないので」
「わかりました。また、どこかでお会いできるといいですね」
微笑む彼女は俺に軽く頭を下げ、去っていく。
新しい出会いがあり、新しい交流が増えていく。
「思っていたのと随分違ったけど、これもいい経験になるな……」
そんなことを考えていたら、声をかけられた。
「あの、お時間ありますか?」
声のする方に視線を向けると十人以上の団体さんが俺を見ている。
みんな同じような制服を着ており、とても特徴的な髪型が斬新だ。
黒に赤にピンクに青、緑までいる……。いったい何のキャラなんだ?
「はい、時間はありますが」
「よかった。あの、お願いがあるんですが、何枚か撮っていただけないでしょうか?」
「いいいですよ。えっと、どこで撮りますか?」
「あの公園でお願いします」
「わかりました、では移動しましょうか」
俺がバッグを持ち、移動し始める。
「やったー!」
「全員で併せたた写真も撮ってもらえるー!」
「どうするどうする! やっぱあのシーンいっちゃう!」
みんなで撮れることが嬉しいようで、みんな笑顔で移動し始めた。
そうか、カメラマンがいないと全員で撮れないのか。
カメラがあってもセルフタイマーだし、構図とかが難しいのかもな。
「撮りますよー」
「「「おねがいしまーーーす」」」
初めて大人数の写真を撮る。
なんだか学校のクラス写真みたいだ。
──ビュゥゥゥゥゥゥ
写真を撮った瞬間突風が吹き、連写機能をつかったカメラはその瞬間を終始撮っていた。
みんなスカートを抑え、終始無言。俺はどう対応したらいいのか、まったく答えが出なかった。
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