第10話 起源の場所(編集)

そうこうしているうちに約束の土曜日になった。

そして俺はその日に祐子にセッティングしてもらった服を着て駅に向かう。

因みに服は事前に買ったものである。


まさかこんな日に着るとは思わなかったが。

それから目の前を見ると。

そこにはベレー帽を被った水色のオックスフォードシャツ?に黄色パンツの服装の様な可愛らしい姿の女の子が立って.....いた。


それからサロペットワンピース?だったか。

何か横には杉山が居る、は?

俺は唖然としながらその姿を見ていると。

杉山がこっちに気が付いた様に手を振ってきた。


「あ。来たね。彼氏さん♪」


(ちょっと杉山先輩!)


「ちょっと待てお前ら。何やってんだ!?」


「偶然見つけたから会話していたの。でも大丈夫。邪魔はしないから.....ね.....?」


ニコニコしながら杉山は俺を見てくる。

しかしその目が何だか、テメェ何やってんだ、的な目をしている。

俺は額に手を添えながら杉山に、凛花の事はとても大切な後輩として扱っている。だからこうして付き合っているんだが、と真剣な目で答えた。


その様に答えると杉山は目を丸くする。

予想外の答えだった様だ。

そしてニヤッとした。


「ふむふむ。まあ相変わらずだね。君は」


「相変わらずかどうかは知らんがな」


「君はそういう所がモテるんだろうねぇ。hahaha」


「何だhahahaってお前」


「私は実は今日は君の幼馴染さんと遊ぶつもりなの。それでこの場所に来たんだけど.....成程ねぇ。ハハーン?」


いやちょっと待て。

いつの間にそんなに仲良く、と聞いたが。

でもまあ良いや。

今日は長野くんを貸してあげるからね凛花ちゃん、と杉山は言いながら。

そのまま手を振って笑顔で杉山はそそくさと去って行く。


じゃねー、と言いながら、だ。

いや俺の問いに答えろ、と思いながら俺は杉山に声を掛けるが杉山はそのまま走って行ってしまった。

何なんだアイツ、と思っていると。


凛花がモジモジしていた俺の手に触れてくる。

そして俺を見上げてくる。

スマホの画面を見せてきた。


(先輩)


「え?何でしょう?」


(手を握っても良いですか)


「.....え?.....いや。こんな手汗かきまくりの手を握ってどうするんだ?」


(それでも私は握りたいです。その。今日はデートなんで)


「デートなのか!?」


俺はビックリしながら凛花を見つめる。

凛花はビクッとしながら、そ。そうですね!デートじゃ無いですよね!、と書いてから慌てて目を回した。

でもその。手だけは握らせて下さい、と言いながら俺の手を赤くなりながら握る。


俺は、いや。ちょ、と思いながら凛花を驚きの目で見る。

凛花は、こ。こうすると何かデートっぽいですよね、と凛花は赤くなりながら書いてくる.....というかマジにデートなのかこれ?

俺も赤くなってしまう。


(友人が言ってましたので)


「お前もう本格的に言っちゃってるけどこれってデートなのか!?驚愕なんだが」


(で、デートじゃ駄目ですか。楽しみでしたので)


「い、いや。そんな事は無いけど」


何で俺はこんな目にあっているのだろう。

恥ずかしいのだが!?、と思いながら凛花を見る。

凛花は口元をモニュモニュさせながら俺を見る。


意を決する様な感じで、だ。

私はデート扱いでも構いません。だってそもそもデート以外にこの状況ってありますか?、と書いた。

そして俺の目を真っ直ぐに見る。


「い、いや。無いけど.....」


(じゃあデートでも良いですよね。私は全部が誤解されても構いません)


「な、何故そこまで」


(気が付かないんですね。まあ鈍感先輩ですね。やっぱり)


「いやいや」


俺は苦笑しながら凛花を見る。

いやまあ薄々は気付いてきたけど.....であるが。

凛花はやれやれ的な感じだったが。


やがて顔を上げて笑みを浮かべてから。

そのまま俺の手をゆっくり握る。

和菓子でも作るかの様に。


(先輩。行きましょう。デート)


「おう.....その。漫画ミュージアムだな?」


(違います。先ずは私の大切な場所に行きます)


「大切な場所?え?それは何処だ?」


(私の大切な場所があるんです。思い出の場所です。そこに行きましょう)


俺はビックリしながらその顔を見る。

その顔は頷き笑顔を浮かべる。

そして歩き出した。

そのまま手を握ったまま、だ。

それから俺はとある場所にやって来る。



「ここは何処だ?」


(私と先輩が出会った場所です。覚えてないかも知れませんがこの美術館です)


「思い出の場所が此処なのか」


(私にとっては第二の起源です)


俺は少しだけ恥じらいながら凛花を見る。

凛花のその姿は本当に嬉しそうだった。

そして俺をジッと見てくる。

私はこの場所が全てですから、という感じで、であるが。


(この場所から先輩に憧れました)


(俺なんかに憧れてもな)


(いえ。私は貴方だから憧れました。貴方じゃ無かったら意味ないんです。貴方の優しさが私の全てですから)


「そ、そうか」


俺は苦笑いを浮かべながら凛花を見る。

凛花はニコッとまた笑みを浮かべながら、じゃあ入りましょう、と言いながらそのまま美術館に足を進めた。

ん?そういえば今は美術館で何があっているんだ?

考えながら俺は凛花を見る。


「凛花。何があっているんだ?今はこの場所で」


(はい。アニメ原画展です)


「珍しいな。お前が原画なんて。漫画かと思った」


(失礼ですね。私は勉強していますよ?原画を見ても。絵はアニメと漫画と関連性は高いんですよ?)


それもそうか。

考えながら俺は頷く。

そして確かにそうだな、と思った。

それから凛花を見る。

凛花は花咲く様な笑顔を浮かべていた。

そして駆け出して行く。


(チケットを)


「ああ。俺が買ってくる」


(え?それは悪いです)


「良いから。お前は喋れないんだから」


凛花は見開きながら、そうですね、と書いた。

少しだけ寂しげな顔をする

それから、じゃあお願いします、と書いてきた。

俺はその文字に親指を立てる。


「大丈夫だからな」


(先輩。優しい)


「まあな」


そしてチケット売り場に向かう俺達。

それから俺がチケットを購入してから.....そのまま凛花に手渡した。

凛花の分だ、と言いながら。

そんなチケットを受け取りながら口元に手を添える凛花。


「どうしたんだ?」


(何でも無いです。本格的にデートだなぁって)


「.....そうだな」


すると凛花は俯いてから顔を上げて笑顔を浮かべた。

俺はその姿を見ながら?を浮かべていたが。

それから頷いてからそのまま俺の手を握ってくる。

そして歩き出した。


(行きましょう。先輩)


「だな」


(先輩)


「.....何だ


私って喋れないですよね。

その事について厄介とか思ってないんですか、と書いてきた。

俺はその事にスマホで文章を打ち込む。

それから送信する。


(そんな訳無いだろ。お前のそれも個性だ。今をしっかり生きているんだからな)


「せん.....ぱい」


(焦らず行こうぜ。俺はお前が喋れる日を待っているから)


(有難う御座います。だから先輩は)


と書いてから首を振る凛花。

それから涙を浮かべつつ笑顔を浮かべた。

俺はその顔に、よし、と言いながら頭を撫でる。

そして、じゃあ行こうか、と言う。


(先輩)


「どうした?」


(えへへ。大好きです)


「.....恥ずかしいんだが.....」


いきなりだな!

そんなメッセージを送ってもらうと赤くならざるを得ないんだが。

勘弁してくれ、と思いながら凛花を見る。

凛花はスマホを口元に当ててからくすくすと笑った。

それから俺を柔和に見てくる。

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