入団

「あ、職業ベルーフか。確か、フォンセさんは銃士、カマルさんは戦士、ルーナさんがヒーラーでしたよね。なら、俺の場合は………なんだろう。普通に召喚士とかじゃまずいんですよね?」

「確かにそうだが……。俺達、お前に職業ベルーフについて話したことあったか?」


 フォンセの質問に、彼は最初キョトンとしてしまう。

 それから徐々に顔を青くし、何とか誤魔化そうと言葉を繋げる。


「え、えっと、あの。あ、あそこのギルドの看板を読んだんですよ!!」


 咄嗟に目に入ったギルドの看板を指さし、星壱郎は焦りのあまり大きくなってしまった声で言う。その勢いに釣られるように、三人は看板に目を向けた。


「あ、確かに書いてあるな!! 改めて読むと、結構詳しく書いてある」

「確かに、書いてあるけど……」


 カマルは納得したように頷いているが、ルーナは少し不安げにフォンセを見上げる。

 彼は、無表情のまま看板から目を離さず見続けていた。

 その様子を冷や汗を思いっきり流し、顔を引きつらせながら星壱郎は祈っていた。


「…………まぁ、いいわ。とりあえず、召喚士で登録するのは避けたい。ひとまず、カマルと同じで戦士にしよう」

「あ、はい」


 フォンセの言葉に、星壱郎はほっと胸を撫で下ろした。そして、そのまま四人はギルドへと向かう。


「こんにちは、勇気ある冒険者様!! 今回はどのようなご要件で?」

「あぁ。今回はこいつの入団と次の依頼、又はS級のダンジョンがないかの確認をしに来た」


 三人は自身が持っている証を見せ、フォンセが代表として伝える。すると、ギルドの案内人の女性は「少々お待ちください」と元気に口にし、手元にあるパソコンを確認し始めた。


「確認できました。冒険者ギルドへの入団を先に行いますね」

「頼む」

「まずは名前と職業ベルーフをご本人から教えてください」


 彼女がそう口にしたため、星壱郎はオドオドと周りを気にしながらも前に出る。

 ボソボソと早口で、名前とさっき話し合った職業について伝えた。


「かしこまりました! こちらで登録させていただきます。今回は推薦枠ということでお間違いありませんか?」

「あぁ。フォンセ・テネーブルの推薦だ」

「分かりました! でしたら、このままギルド入団を認めさせていただきます。今、ライセンスをお渡ししますのでお待ちください」


 そのまま女性は奥へと行ってしまう。


「これでお前はこれから俺達と共に行動することが義務付けられる。嫌になったからと言って、途中退場は出来ないからな」

「す、する気、ありませんよ」

「それなら安心だ」

「仲間が増えると嬉しいものだな!!」

「う、うん!!」


 四人で笑いあっていると奥に向かった女性が、手にカードと数枚の資料がまとめられたファイルを手にして戻ってきた。


「こちら、ギルドの掟とライセンスになります。無くしますと、再発行不可能なのでお気をつけください。では、次に依頼とダンジョンの確認ですね。お待ちください」

「あぁ。ほい、無くすなよ」

「ありがとうございます」


 フォンセから資料とライセンスを受け取った星壱郎は、ファイルから紙を取りだし中を確認する。

 そこにはギルドでの決まり事や、依頼内容、ダンジョンについてなどが書かれていた。


 それを読んでいると、確認が終わったらしい女性がパソコンに手を置いたまま話し出した。


「今のところ、Bランクの依頼が複数、Aランクの依頼が数件です。ダンジョンだと、S級が────ん?」

「ん? どうした?」

「い、いえ……。先程までなかったのですが、いきなり内容が更新されたようです。たった今、S級のダンジョンが現れた模様。どう致しますか?」

「お、まじか!! なぁなぁ!!! S級ダンジョン行ってみようぜ兄さん!!」


 女性の言葉を聞いた瞬間、カマルが目を輝かせフォンセにお願いした。ルーナは少し不安げだが、どうするかは二人に任せている。

 星壱郎は何も分からないため、何も話さず経緯いきさつを見届けていた。


「…………ちなみに、それはどこにあるんだ?」

「星屑の村から北に真っ直ぐ行き、森を三つ抜けたところにございます。付近には村や町がないため、事前準備必須のダンジョンです」


 パソコンを操作しながら、女性はそう伝え、資料を一枚渡した。


「こちらに詳細が書かれております」


 その資料を受け取り、フォンセは長考する。

 顎に手を当て一枚の資料とにらめっこしている。

 他の三人は顔を見合わせ、なにも話さず待ち続けた。


 それから数分後、フォンセが険しい顔を浮かべ空を仰ぎ始めた。


「? どうしたんだ兄さん」

「何か、あったの?」


 二人がそう問いかけるが、フォンセはなんの反応も見せず空を見上げるだけだった。そのため、今度は星壱郎がおそるおそる彼に問いかける。


「フォンセさん、なにか気になることでもあったんですか?」

「…………まぁな。だが、いい経験にはなるかと思って考えていたんだ」

「なら、行ってみようぜ兄さん!! 経験も大事だし、俺達三人居れば何も怖いものはないぜ!!」

「今は三人じゃなくて、四人だよカマル兄さん」

「確かにそうだな!!!」


 カマルは大きな口を開き笑っており、その様子をフォンセとルーナは呆れ気味な顔を浮かべながらも、笑っていた。

 星壱郎はそんな三人を見て、優しい笑みを浮かべる。


「なら、俺達はこのダンジョンに行こうと思う。登録頼む」

「分かりました! こちらで登録させていただきます! 勇気ある者よ、信念を貫け!! また、お待ちしております!!」


 そして、星壱郎達はその場から離れ、食料調達。一晩しっかりと休み、次の日には村を出て、ダンジョンへと向かった。

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