戦闘開始

 カマルが引きずってきた熊を調理し、みんなで分け合い食べ終わる。

 その後、焚き火の炎を調整しながらフォンセと星壱郎は話し合っていた。

 カマルとルーナはお腹いっぱいなり、満足そうに眠りについている。


「ここの世界についてはわかったか?」

「はい、細かくありがとうございます。つまり、貴方達は冒険者ギルドに所属している。ギルドに入ってくる依頼などをこなしお金を貰っている──と、言った感じで合っていますか?」

「簡単に言うとそんな感じだ。その依頼内容は様々あり、そん中でも多いのがモンスター退治とダンジョン攻略だ。これにはランクがあり、1番低いのがF級、1番高いのがSSS《とりぷるえす》級だ。俺達にもランクが付けられており、少数精鋭と呼ばれている俺達は、S級だ」

「す、すごく強いですね。あれ、確か俺はA級に設定していたはず……」

「前々までA級だったが、最近になって評価されてな。S級にランクをあげることが出来たんだ。設定? は、よくわからんが、まぁこの世界の設定はこんな感じだ」

「あ、ありがとうございます」


 しっかりと星壱郎の独り言が聞こえていたらしく、しっかりと答えている。


「それと、召喚士についても少し話そう」

「あ、よろしくお願いいたします」


 先程から召喚士と呼ばれていたため、星壱郎は瞳についても気になっていた。


「召喚士とは、召喚魔術を使用し、異世界から召喚獣や精霊を呼び出すことが出来る。これが一般的な召喚士だ。だが、その召喚士も人数が少なく、出会えることはまず無いと言われている」

「も、もしかして、その召喚士って、世界でまだ5人しか見つけられていない──とかですか?」

「なんだ、知っているじゃないか。なら、これは知っているか? 召喚士の中にも二通りあり、一つ目が先程の説明した召喚獣や精霊を呼び出すことが出来る。そして、もう一つがことが出来る」

「…………え? なにそれ……」

「やはり知らないか。これは、限られた奴しか知らない。御伽噺おとぎはなしとまで呼ばれるくらいな存在なんだ。この召喚士は、知識的に知っている者でも、実際に出会ったことは無いらしい」


 その言葉に、星壱郎は目を大きく開いたまま、フォンセを見続けていた。


「そ、そんな設定にした覚えはないぞ……。確かに、召喚士は世界で5人。ただそれだけにしたはずだ。新たな設定が生まれているのか……? 間違いなくここは俺の書いていた小説の中のはずなのに……」


 ブツブツと独り言を口にしている星壱郎を、フォンセは可哀想な人を見るような、哀れみの瞳を向けており、話はここまでと言うように大きなため息を吐いた。


「とりあえず、明日も朝が早い。もう寝た方がいいだろう。その見た目だと目立つから、ここから一番近い星屑の村へ服を買いに行くぞ。それまでは、俺の服を貸そう」

「…………え、あ、何から何までありがとうございます」

「構わない。それにしても、本当に不思議なことがあったんだな。まさか、異世界からこちらの世界へと来てしまうなんて。しかも、召喚魔術を使わずに……」


 顎に手を当て考え込んでいるフォンセは、顔が整っている分、どのような表情もかっこよく見える。それに相まって、焚き火の炎が彼を照らしているため、儚さも感じさせる。


「ひとまず、今日は寝るぞ。体をゆっくり休めよう」

「はい、ありがとうございます」


 そのまま星壱郎は、地面に寝っ転がり寝ようとしたが、いつもベットで寝ているため固く、慣れない環境なためなかなか寝付けずにいた。

 その隣では火を消し、片膝を立て瞳を閉じたフォンセが眠りにつく。

 やはりこの世界では、このような野宿は当たり前のようですぐに眠っていた。


 寝付けないまま体を横に転がしたり、体勢を変え、何とか寝ようともがくこと二時間くらい。

 やっと瞼が重くなり、眠りにつけそうになった時、いきなりフォンセとカマルが目を開け起き上がった。


「…………近づいているな」

「おぅ。ルーナ、起きろ。恐らくB級モンスターがこっちに向かってる」


 カマルが隣で眠っていたルーナを揺さぶり、その振動で目を覚ました彼女は、目を擦りながらゆっくりと体を起こした。


「ん〜………。B級?」

「おそらくな。だが、確信は持てていない、油断をするな」


 三人はその言葉をきっかけに立ち上がり、一つの方向を見つめる。

 星壱郎も重たい体を起こし、同じ方向に目を向けると、大きな足音がどんどん近づいてきていることに気づいた。

 眉を顰める、顔を青くし腰を抑えながら立ち上がる。


「ルーナ、星壱郎を頼む」

「了解」

「カマルは、いつも通り自由に暴れろ」

「了解」

「俺は、これで援護する」


 そう口にすると、それぞれ自身の武器を手にし、ルーナは星壱郎の前に、カマルは拳を握りフォンセの隣に移動した。


 フォンセとルーナの手には二丁の拳銃が握られている。

 それぞれ特徴があり、フォンセのは右の手に握られている拳銃が藍色、左側のは黒色で、ルーナの右手の拳銃は薄紅色、左手には赤色の物だった。


 何がなにやら分からないまま、星壱郎は足音の響く方向へと目を向けていると、人間とは到底思えない化け物が木々の間から姿を現した。


「ひっ?!」

「やっぱり、ここには現れるらしいな、オーガー」


 目の前に現れた化け物、オーガーは、緑色の筋肉質な肌に、原始人のような服を身にまとっている。手には棍棒が握られていた。


「現れたな──ん?」

「なぁ、兄さん。まさかと思うが……」


 フォンセはなにかに気づいたように横に垂らしていた拳銃を握り直し、カマルも視線をオーガーから外さないよう気をつけながら口を開いた。


「…………お、お兄ちゃん。もしかして……」

「あぁ、少々厄介らしいな。まさか、A級モンスターが、一度に三体か」


 四人に向かってきていたのは一体だけではなく、同じ姿をしている三体のオーガーだった。

 三人は険しい顔を浮かべ、その三体を見る。その場で一人、顔を青くし身体を震わせしりもちをついてしまった星壱郎は、どうすることも出来ずただ、後ずさることしか出来ない。


「なら、仕方がない。三体なら一人一体を担当するのがいいだろう。ルーナは守りながらの戦闘は難しいだろうから、星壱郎は俺が見よう。二人は、いつものように自由に

「「了解、リーダーの仰せのままに」」


 そう口にした三人は、常人ではありえない身体能力を見せた。


 まず、カマルが1番前方に立っていたオーガーに向けて、思いっきり顔の横で右拳を引き、炎を纏わせ、突き出した。


炎の拳影シャドウ・フィスト・フレイム




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