レディイザベラ

シャルロット王太子

ヘルミール公爵家に、大層豪華な馬車が突然現れた───。

「だ、旦那様！ 王太子殿下がお見えです……！ 」

「急に何が？！ 」

「旦那様、あちらの候補を決めて頂かないと……」

「今はそれどころじゃない！ 王太子殿下を丁重にお迎えしろ！ なんでこんな時に！ 計画より早い。練り直さねば……」

光や薔薇を背負っている感覚に陥るほど、無駄に綺麗な顔をした派手な男が堂々と闊歩している。

「いやあ、嬉しいなぁ。異母妹（キミ）が俺を頼ってくれる日が来るとは！ お兄ちゃん涙が出ちゃう！ 男の子だもん！ 」

「……相変わらずっすね、殿下」

「これくらい目立つ人だからボクを知る人が少なくて助かるんだ。異母兄上（あにうえ）頼りになります！ ……流石歩く強制礼状」

気分よくエフェクトを背負って前を歩く王太子のお陰で、後ろについてきている三人は外野の視界からシャットアウトされていた。

「公務ではこんなお姿は拝見できませんね……。知りたくなかったような、でも悪い方ではないので好感が持てなくは無いですね」

ドクターも混乱していた。

「裏表が無さ過ぎて困る貴族や官僚が後を絶たないが、隠すべきとこも隠さないからそこは言いくるめるしかない」

彼には一件を話した。

ボクだけで行かなかったら、ヴィンセント辺りが首を絞められていただろう。

ボクと風変わりな婚約をしたロバートに横恋慕していたから。

アレとはゲイのことだ。

告白はやんわりお断りされている。

腹を割った友人に落ち着いたが、ロバートを大事に思う人間のひとりだからこそ、異母兄（あにうえ）も必要だった。

正確には……考えながら思い出した。

笑顔を振りまいているが、腐ってもボクの異母兄（あに）であることを忘れてはならない。