拘束プレイとスライムさん2
全力ダッシュを始めた私に、スライムさんは気づいたのか、ビクッと、1度小さく跳ねると
一目散に逃げだした。
「あ、まって!お願い待って!だいじょうぶ、痛いことは何もしないから!ご飯あげるから!まって!」
*優しそうに聞こえても、これはスライム狂のセリフです。
「くぅ!スライムさん思ったより速い!」
ぴょんぴょんと跳ねるスライムさんは私よりも速く、両者の距離はどんどん開いていく。
なんか、なんかないか。なんか、私が速くなる方法。
……いや、スライムさんを遅くする方法ならっ……。
ステータス画面を開く。チュートリアルでゲットした、3つのスキルの内、2つの説明を見る。
【封印】
効果
捕らえた対象の全能力値を捕らえる度5%と、スキルをひとつ低確率で封印する。ただし、同じアイテム、スキルで連続して捕らえた場合はカウントされない。封印は1時間で解除される。
(*捕らえたと判断されるアイテム、スキルは対象のAGIを減少させるもの、対象の行動を阻害するものに限られる)
【捕獲】
効果
直径100メートル以内の生物で、能力の最高値が、自身のDEXを下回る対象のAGI30%減少、その他能力値5%減少させる。
こ、これだー!
「【捕獲】!」
スキルを発動すると、目に見えてスライムさんの速度が減少した。
【捕獲】と【封印】の効果でスライムさんのAGIは35%減少している、はず。
これなら追いつける!
全力疾走すると、スライムさんとの距離はどんどん縮まり、遂に。
「つ、つかまえたぁー、やったぁ」
あぁ、ぷにぷにだぁー。かわいい。しあわせぇー。えへへ。
このゲーム始めてよかった。ほんとによかったっ。
スライムさんは少し暴れていたけど、すぐに大人しくなった。
きっと私に懐いたんだね。
……絶対この手は離さないけど。
「よし!ぼうけんだー!」
そこで、ふと、思った。
ここ、どこだろ。
私が今いるのは森の中である。スライムさんを捕まえるため、無我夢中で走っていた私が、どこからどこまで走ったのかなんて、わかるわけが無い。
まぁ、つまり、全く現在地が分かりません。
俗に言う遭難です。
大変ですね。
そうなんです。
「……まぁ。うん。なんとかなるよね」
朱里からの連絡はまだない。変出者をまだ、退治しているのだろう。
周りに人の姿はない。誰かに聞くことも出来ない。
けど、なんとかなる。たぶん。
帰り道は全く分からないけど、朱里なら、知る術を知っていると、思う。
だから、まぁ。
しーんぱーいないさー!
不安を誤魔化すように、スライムさんをぷにぷにする。
「よし!歌おう!歌ってれば誰か見つけてくれるでしょ!」
そして私はスライムさんを胸に抱いて歩き始めた。
めっさ歌いながら。
ちなみに、この光景を見た者は何人かいた。しかし、熱唱する女の子を見て、一体誰が話しかけるだろうか。
せいぜい、掲示板に晒すくらいしかしないだろう。
突然だけど。くまさんってかわいいよね。テレビで見るとさ、可愛いよね。
でもさ。
直接は、勘弁願いたいな。
切実に思う。
えー。現在全力で逃走中。なお、逃げ切っても賞金はなく、捕まると食べられちゃいます。
ちくせう。
【捕獲】を使ってAGIを下げていても、くまさんは私よりも速いのです。
こわいのです。
私、落し物してないよ?落としてても返さなくていいから。あげるから。どうか見逃して欲しい。
ふと、後ろを見てみた。
あれ?なんか、増えてね。
増殖してた。最近のくまさんは増殖するらしい。
あー!あかりっー!あー!
にげる。とにかく全力で。
今となってはスライムさんも私から離れまいとしている。
なんかね、吸われるみたいな感覚があるから、たぶんひっつこうとしてるんだと思う。
かわいいよね。こんな状況じゃなきゃ愛でてたと思う。
ドスンどすんと言う音が、段々と近くなってきた。
あー。あー。どうしよう。打開策は無いのかな。
あ、スライムさんだ。抱えてるのとは別の、かわいいなぁ。
……逃げられたけど。
嫌われてる?泣いていい?
くまさんと地獄の追いかけっこをしながら、スライムさんに逃げられる。
ぐすん。
いや、ちがう。きっとくまさんから逃げてるんだよね。そうだよね。そう思うことにする。
そして、何回かスライムさんに逃げられ、心折れかけたその時。
ぴこんっ!
『スキル【威圧】を獲得しました』
ほぇ?
【威圧】
所得条件
自身よりもレベルが上の対象に、攻撃を一切していない状況で、一定回数逃げられること。
効果
対象の全能力値を3%減少させる。
ありがとうスライムさん!逃げてくれてほんとありがとう!でも、心痛いからもう逃げないでね。ほんとに。おねがいね。
あと、このスキルのせいでスライムさんが私から逃げてたことが証明された気がするけど、うん。気にしない。
「【威圧】!」
これでくまさんのAGIは【捕獲】と【威圧】と【封印】2回分で合計43%減少だ!
やっと速度が同じくらいになった!
がんばれば!ちょーがんばれば!逃げれる!はず!
と、そう思ったその時。
すぅーと、辺りの温度が急激に下がった気がした。
周りには急に薄い霧が出てきて、草木には霜が降っていた。どう考えても気温が下がってる。それも、すごく早く。
嫌な予感がした。
こーゆー予感はのは当たるタイプの人間なんだよねー。私って。
……ん。にげよう。今も逃げてるけど。もっと全力で。
そう思い、一目散に逃げようとした私に、とてつもない悪寒が走った。
すぅっと、下がり続ける温度に伴うように
それは
突然起こった。
私のことを追いかけていたくまさん。いつの間にか増えて3匹になっていたくまさんが
突如、凍りついた。
全身を半透明で、キラキラと輝く氷に身を包まれたくまさんは、完全に動きを止めていた。
そして、凍りついたくまさんの脇から、ふた周りほど大きく、真っ白な白熊が、のそりと現れた。
きっと、くまさんを3匹相手する方が、マシなんじゃないかなって。すごく思う。
「……勘弁してよ」
ほんと。
私の目の前には、極大の氷塊が飛んできていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます