拘束プレイと拘束チュートリアル

目が覚めた。


真っ暗だった。まっくろくろすけだった。目玉をほじくられたのかもしれない。


しかも、とても窮屈で、なんだか、体に違和感がある。


身を捩ってみた。


「ん、んー?なんだろ、上手く動けない」


なんだろ、なんだかな。


腕も足も、全く動かせない。首を少し動かすくらいが限界。


これ、あれだ。あのー。中三の修学旅行で、友達に布団で簀巻きにされた時と同じ感覚だ。


うん。私、縛られてね。


閉じ込められてね。


拉致?監禁?あらら。


「うおー!だせやー!おらー!私をさらえると思うなよっ!」


がたん!がたん!


暴れ回ると、蓋のようなものが開き、月の光が差し込んだ。


そして。同時に青いパネルがでてきた。


『封印を解除してください。解除率10%』


『エリアを脱出してください』


ふういん?あれ?なんで私封印されてんだろ。何も悪いことしてないよ。ほんとだよ。


えりあ?も、よくわかんないし。どこまでがエリアなの?なんか目印ある?


んー。よくわかんないけど、ようは暴れればいいってことだよね。


暴れたら封印解除できるよね。


「おぉぉぉ!縛られるのは好きじゃないんだよ!ほどけやー!」


簀巻きにされ、持ち運ばれた挙句、先生に簀巻きのまま怒られたっけ。今思えばなかなかシュールな光景だったなぁ。


「くそー!ほどけー!おらー!」


がたん!がたん!


え?女の子っぽくない?荒々しい?


女子は結構こんなもんだよ。


まぁ、でも。可愛い方がいいのは分かるよ。私も可愛い女の子好きだし。


しかたない。乙女モードで行きましょう。


「きゃ、きゃぁ、私縛られてるぅー、たすけてぇー」


うわ、きも。却下。これじゃおかまモードじゃん。却下。


「ほどけやー!」


がたん!


ぽろっ。


おや。


『解除率30%』


暴れていた。今の私は猛獣よりも凶暴だった。


自重すればよかったな。そう思った。


私がいたのは、どうやら山のようだった。それも上の方だったらしい。


やま、と言っても、草木はない荒地で、こーゆーのなんて言うんだろ。がけ?がけの、斜面バージョン?ま、わかんないけどそんな感じのとこでさ。


暴れてたら、ぽろって、落ちてさ。


めっちゃ転がるよね。


「たっ。たすっ!」


あかりー!あかり様ー!たすけてっ!へるぷ!しぬ!


突起に当たった、結構はねた。


跳ねたら、まぁ、落ちるよね。


縛られてるし。どうしようもないよね。


「ごふっ」


『解除率35%』


やったー。解除がすすんだー(半泣き)。


解除率は上がったけどHPが減った。


また跳ねて、また減って。


止まるのは不可能。縛られてるし。


うん。詰みました。


私は諦めて目を瞑った。


止まった時、少しでも目が回らないように。


「ごふっ」


せ、せめて、跳ねるのだけは、やめてぇぇ!






それから、結構転がりまして。なんかね。スキルゲットしたんよ。


【ローリングビギナー】

所得条件

一定時間内に一定数転がること。


効果

回転するほど攻撃力に補正(小)


わーい。攻撃力あっぷだぁ。忌々しい突起を壊したい。でこぼこしてる地面を更地にしたい。


突起に当たった。壊れなかった。


「ごふ」


え、うめき声が汚い?


わかったよ。おかまモードね。


「きゃっごふっ」


いや、可愛くは無理でしょ。うめき声だよ?いつ来るかも分からない衝撃に可愛くうめくの?


無理じゃね。


「きゃっ、のふ」


……お。


「きゃっ、のふっ」


いけるっ!


「ガノンドロフっ!」


ぴこんっ!


【ローリングミドル】

所得条件

一定時間内に一定数転がること。


効果

回転するほど攻撃力に補正(中)


まだ突起は壊れない。かなしい。


HPが半分を切った。回転は止まらない。


このままだと死んでしまう。転がり死んでしまうよぅ。


死因は何になるのかな。あ、転落死か。遺言は何にしようかな。


ぴこんっ!


【ローリングマスター】

所得条件

一定時間内に一定数転がること。


効果

回転するほど攻撃力に補正(特大)


突起は壊れない、え、破壊不可なの?魔人拳打たないとだめなの?


HPは1割を切った。


よし、遺言決めたぞぅ。


「私!今日からぺったんこ推しになる!」


そして、私は今までにないくらい思いっきり跳ねた。


あー。しんだなぁ。でこぼこなんて、無くなればいいのだ。


ドパアアァァァァン!!!


ん?なんか、地面じゃないのに当たったよね。めっちゃすごい音したよ?


爆発したよね。だいじょぶそ?


私は何とか生きてるけど。絶対なんか壊れたよ。


『ガーディアンを討伐しました。功績値に加算されます』


ガーディアン?え?なんか守ってたの?悪いことしちゃったかな。


『エリアを脱出しました』


お、エリアも抜けたっぽい。結局どこまでがエリアだったんだろ。目つぶってたからわかんないなぁ。


それから、しばらくころがって、やっと止まった。


目を開けてみる。ゲームだからか、思ったより気分は悪くなかった、あれだけ転がったのに結構余裕。


これが現実だったら私は今頃女の子として終わってる。


周りをぐるりと見渡した。


周りには何も無かった。ガーディアン?も、見つからない。私の目の先にはでこぼこした荒野が広がるばかり。


なんだったんだろ?


と、それより封印は?


『解除率92%』


もうひと頑張り。


『解除率100%封印が解除されました』


「びば!自由!」


んー!動けるって素晴らしい!


『チュートリアルを完了しました。封印解除にかかった時間5分27秒。エリアの脱出にかかった時間5分3秒ガーディアンの討伐を確認しました。全ての行動を元に、報酬を与えます』


『吸血鬼(公爵)に変化しました。スキル【封印】を獲得しました。ガーディアンのスキルを1つ獲得します……スキル【捕獲】を獲得しました』


お、おう。いろいろ、なんかゲットしたっぽいけど。よくわかんないなぁ。朱里に聞こ。


『以上で、チュートリアルを終わります』


なんか、あっという間だった気がする。転がってただけだし。


ま、無事に終わってよかった。かな?無事だったかな。いちおう、死んでないけど。


『転送を開始します』


まぁ、うん。切り替えてこー。


こっからが本番!がんばるぞいーや!


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る