鈴鹿スカイライン

 また駐車場にバイクが入って来たんやけど。


「近江八幡で見た気がする」

「安土城でもおったんちゃうかな」


 目に付いたんはKTMのデュークやったからやねん。外車やってのもあるけど、やっぱり、見慣れんバイク見たらバイク好きならどうしてもな。


「390よね」

「よう走るんやろな」


 乗ってるんは男やった。


「イイ男じゃ・・・」


 ユッキーが感想を言い終わる早くコトリは男のところへ行ったで。先手必勝や。


「どこから来たん?」


 聞くと福井からみたいや。福井は遠いと思たけど、北陸道と名神使うたら、近江八幡まで休憩時間を入れても二時間やと聞いて羨ましかった。二時間いうたら、コトリたちが国道四八八号にたどり着いたぐらいやもんな。


「滋賀は隣ですから」


 なんとなく滋賀は近畿やから近い気がしてるけど、神戸から考えたら京都府越えた向こうの県になるもんな。ユッキーも話に加わって、


「コトリ、抜け駆けずるい」

「早い者勝ちや」


 名前は井筒和彦さん。こっちは、


「コトリや」

「ユッキーよ。よろしく」


 ここから鈴鹿スカイラインを走るんやけど、


「上でまた会いましょう」


 そういうわな。KTMデュークにコトリたちのバイクが付いて行けるとは思われへんもんな。


「行くよ。コトリ」

「よっしゃ」


 ここは付いて行くで。一度離れたら、そのままはようあるからな。やがて追いついて、


「ついてこ」

「そうね」


 成り行きマスツーや。ツーリングではようあるねん。コトリも大集団のマスツーは好きやないけど、道によっては付いてく方がラクな時があるねん。この辺は好みが様々で、ソロが大好きなやつは追い抜いてでもソロで走りたがるけど、それは好き好きや。


「でも油断してると・・・」


 ああそれな。同じ目的地やろと付いて行ったら、全然違うとこに行ってたりもあったんや。ひどい時は、こんな抜け道もあるのかと感心してたら、


「ひとんちだったものね」


 そう、家に帰っただけやってん。そやけど今日の鈴鹿スカイラインは一本道やから心配あらへん。さすがは鈴鹿スカイラインやな。登るにつれてコーナーはどんどんタイトになってくわ。


「ここも有料道路だったのよね」

「百年前の話や」


 そうそう、これもワロタらあかんけど、琵琶湖大橋もそうやったけど鈴鹿スカイラインも国道四七七号やねん。


「ホント、ピンキリ国道だよ」

「そやけど荒れとるな」


 けっこうバンピーやねん。それでも、こんなワインディング・ロードはバイク乗りならたまらんで。


「酷道部分の四七七号も二車線ならこんな感じになるのにね」


 元でもさすがは有料道路やな。


「有料道路でもすごいところがあったじゃない」


 あった。ユッキーと奈良に行った時に東大寺はパスにして奈良奥山ドライブウェイに行ったんよ。コースは東大寺の裏山をグルっと回る感じや。


「入口もわかりにくかったね」


 ああ苦労した。こんなとこって道を入るからな。案内板もあんまり親切やなかった。その道走った目的の一つに若草山の上に行けるのもあってんけけど、


「そこまでは良かったのよ。高かったけど」


 二車線の楽しめるワインディングやったからな。コースは全体で三つやねんけど、


 新若草山コース → 春日奥山コース → 高円山コース


 こないなっとって、春日奥山コースは南向きの一方通行やねん。料金は普通車で驚きの千八百六十円。


「原付が二輪車に含まれて七百八十円も良すぎるお値段よ」


 若草山から春日奥山コースに入って腰抜かしそうになったもんな。言うとくで、ダートやとは聞いてた。聞いてたけど、


「オンロードじゃ無理あるよ」


 ぐらいのダートやってん。


「あれも笑ったね」


 そやねん、入り口のとこにラリー走行・ドリフト走行禁止って看板があったもんな。クルマもしんどそうやったし、コトリたちのバイクでもなかなか過ぎるダートやった。ダートなんは文句言わへんけど、


「料金高過ぎよ」


 舗装ぐらいせえと思たでホンマ。


「新若草山コースの往復だけでも二輪車が三百八十円はボッタクリじゃない。六甲山トンネルも琵琶湖大橋も十円よ十円」


 それでも走りたがるやつが多いから商売やし、あくまでも観光道路やから実用道路と違うにしろ、


「もう行かない」


 あの日は帰りに大渋滞に巻き込まれてもたから、余計に印象が悪いねん。そんなん言いよるうちに武平トンネルや。トンネル抜けたら三重県や。ここから下りやけど、こっちもワインディングやな。下りのワインディングは要注意や。


「でもこっちの方が景色が良いよ」


 楽しむほど余裕あらへんけどヘアピンや。しっかし、ド~ンと下ってヘアピンが来るのは、


「頭文字Dの世界よ」


 誰も知るかい。そうでもないか。バイク乗りのバイブルがバリ伝やったら、クルマ乗りのバイブルは頭文字Dやもんな。マンガで読む分はエエけど実際に走ると、


「ひぇぇぇ」


 こうなるわ。さすがに神戸からやからヘバリもあるもんな。またヘアピンや、なんかサーキットみたいに思えてくるで。


「和彦さんはパーキングに入るみたい」

「なんで名前呼びやねん」

「早い者勝ちよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る