第二章・動きはじめた凍てつく大地
第3話・幽閉城デュナミスと城巨人エネルゲイア①〔幽閉されたら城の方を動かせばいい〕
デス家に歯向かった者として、イザーヤ・ペンライトは、デス家からの制裁を怖れた皇族血縁会議の結果。
デス家が『
雪の中を歩いて【幽閉城デュナミス】に到着て、城内に入った
「ずいぶんと長い間、放置された城ですね……掃除のしがいがあります」
職人
「ふんっ、あちらこちら損壊しておるな……直しがいがある城だ」
足下のホコリが積もった石畳の床を見ながら、ペンライトが老職人に訊ねる。
「どうして、わたくしと一緒に。幽閉城デュナミスに……敷地内の職人町に居れば、不自由な生活をしなくて済むのにペン」
「ふんっ、ペンライトさまがいらっしゃらない屋敷の敷地に住んでいても意味がない──儂らは自分の意思で、ココに来たのじゃ」
ホウキを持って、口元を布でおおったスターライトが言った。
「さあ、城の大掃除です……みなさんも協力してください。まずはペンライトさまの寝室となる部屋のお掃除ですね」
大掃除は数日間続き──城もだいぶキレイになった。
ペンライトの部屋の窓枠を拭き掃除をしていた、スターライトが首をかしげる。
「やっぱり変です? この城に到着して掃除をはじめた時から気になっていましたが……やっぱり変です」
屋敷から追放されてから、ふさぎ込んでいるペンライトがスターライトに訊ねる。
「なにが、変なのですかペン」
「城の随所に掃除をしていたような痕跡があるんです……まるで、誰かが城を管理していたみたいな……この城にはあたしたち以外に誰か居ますよ」
「そうですか」
考え事をしているペンライトは、それ以上は何も言わなかった。
【幽閉城デュナミス】は、掃除と修復をされて本来の姿を取り戻しつつあった。
そんなある日──老職人、ペンライト、スターライトの三人でティータイムを楽しんでいるところに、一人の若い職人が顔色を変えて部屋に飛び込んできた。
「親方! また、出ました! 例の幽霊!」
「ふんっ、本当に見たのか? 何かの見間違いじゃないのか」
「なんの話しです? ペン」
「ふんっ、最近、城の中に得体が知れない白い小さなモノが出現して、職人たちが目撃しているらしい」
「白い小さなモノですかペン」
「サッと現れて隙間に消える正体は不明だ……儂は見間違いだと思うが、見た者の話しでは
「この極寒の北方地域に
「でも、ここはケルピーランドじゃない」
皇族からほぼ追放された状態で気持ちが沈んでいるペンライトは、自分の部屋で書物を読んでは、考え事をする日々が多くなった。
幸いこの城には、膨大な量の蔵書がある『螺旋書架』があった。
自分の部屋に持ってきた、書籍を机の上に積み重ね。
腸詰めソーセージが入った温かいカップスープを飲みながら読書をしていた、
読書時に使用する、レンズの下半分にフレームがあるメガネ〔アンダーリム・メガネ〕を外したペンライトは、部屋の棚に飾られている。
現世界【アチの世界】から持ち込まれた、赤いロボットの変形玩具を眺めて呟く。
「そういう方向性も……ありかなペン」
次の日──ペンライトは相談があると言って、エルフと人間のハーフの偏屈な老職人に部屋に来てもらった。
「ふんっ、何か用かな?」
ペンライトが机の上に置いてある、変形ロボット玩具を指差して言った。
「この幽閉城を、変形させて動く城にするコトは可能ですかペン」
ペンライトの突拍子のない言葉に、難しい表情で考えていた老職人が口を開く。
「できないコトはない、大きな工事になるがな」
「では、お願いしますぺん……この幽閉城デュナミスを動けるようにして欲しいペン」
「ふんっ、工事資金は?」
「サテライトお兄さまが、当面の生活資金としてくれたモノがありますペン……宝石とか金貨が大量に、それを使って工事をペン」
「ふんっ、これは一世一代の大きな仕事になるな」
幽閉城デュナミスの大工事がはじまった。
数日後──スターライトが、ペンライトから依頼されていた物品を持ってペンライトの部屋に現れた。
「ペンライトさま、ご要望のモノが完成しました」
ペンライトは、スターライトから城内の土が容器に入ったペンダントを受け取った。
「ありがとうペン」
首にペンダント巻いた、ペンライトを見ながらスターライトが言った。
「確かにその方法なら、規定に反するコトなく行動できますね」
イザーヤ・ペンライトは皇族会議で『幽閉城デュナミスから外に出るコトを禁じ……禁忌の大地から、今後数百年は離れるコトを禁じる』と、取り決められていた。
「城から外に出られないのなら、城の方を動かせばいいペン……禁忌の大地から離れられないのなら、大地の方を装身すればいいペン」
「さすがです、ペンライトさま」
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