第二十恋 デートがしたいオタク君

 デートがしたい!!!!

 なんの影響かは分からないが唐突にそんな欲求にかられた。思い立ったのは昼間のことなので、特に夜なんかにある謎のテンションによる言動・行動とかではない。

 俺が想っている相手は、皆様ご存知の2次元男子。俺の告白が届くこともなければ向こうから嫌われることもない(と思いたい)ので、まず互いに恋人ステータスが付くことも無い。恋愛シミュレーション系コンテンツでもないので尚更。だから「デート」というのは語弊が生じているが、既にお熱をこれでもかと上げている自覚がある俺の脳内は「少しくらい都合良くても良いじゃない。人間だもの。」状態。

 とにかく、付き合っているていでデートがしたい!

 そんな現状をものともせず、19歳男子()のピュアにして強烈な欲求が渦巻いていたのだ。一応自身を鑑みるくらいの理性は残っていたので、とりあえず3日経っても同じことを考えていたら実行に移そうと決め、スマホのネット検索アプリを開いた。欲求は少し脇に置いておくとして、恋愛経験ナシ人間には古代から伝わりし大いなる疑問があった。デートて何すんの?という。

 逆に聞こう。このままだと魔法戦士マジカルジャー加入待った無しの俺が知っているとでも?そんな人間が一から十、テクニックまで知っていたらある意味ホラーじゃないか?てかマジカルジャーてなんだ、新型の炊飯器か。

 誰に向けたか不明な逆ギレをかましつつも大人しく検々索々。ワードは[大学生 デート][デート 初めて][地名 デートスポット][デート ポイント][アニメショップオンライン][デート 成功][学生 デート 定番]etc.この履歴を見られたら俺は舌を噛む。嚙みきる自信はないから思いっきり噛むだけにする。あとアレ、嚙みきっても自死には遠いらしいね、よく知らんけど。そんで噛むの痛そうだし早々に履歴消すからヨロシク。

 調べに調べ、俺にデート知識が謎に蓄積されていった。しかし、何故かピンと来ない。なんか違う。お相手は学生といえども作中でそれなりの地位にある一族に名を連ねているから、そういうところで現実と齟齬そごがあるのかとも思ったが、やはりなんか違う。

 違和感の正体に悩むこと一晩。はたと気がついた。俺ら一般的な組み合わせじゃないのに、なんで一般的なもんを参考にしようとしてんの!?と。

 まず俺らがデートしようとすると、第三者から見て、俺の一人旅になるかグッズorぬい同伴の推し事してるオタク君にしか見えん!なのに生身2人でのデートを参考にしようとしてもダメやん!百歩譲って参考にするにしたって、キチンと記事読も?今俺がいるの[二人で奏でる運命の鐘♡ 永遠を誓い合う愛の公園特集]ページ!なにとは言わないけれどコテコテですね!?さすがはマジカルジャーオレンジです!

 色まで割り振られたところでようやく違和感の正体に気づいた。ついでに鈍感キャラ担当も決まったらしい。

 検索ワードを[ぬい デート][推し事 ぬい][ぬい撮り]に変更。うん、何故かこっちの方がピンと来る。普通に楽しそうだし。勢いそのまま好きなキャラの好みも踏まえつつ、男子大学生でも無理のないデートプランを練る。そして、またまた気がつく。

 あれコレ聖地巡礼の時とあんま変わんなくね?と。



 好きなキャラとのデートには、次元すら超越した障害が沢山あるらしい。

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