第6話 夏祭り前特別授業

「えっと、どうして君がここに?」と只今大いに戸惑っています。

なにに、どう戸惑っているのか、と気になさる人も多いかもですが。

僕も今、目の前で起こっていることが信じられていませんで、もしや僕の夢の中なのではないかと思っています。なんでかって?夕雫が目の前にいるからなんですね。

なんだ、そんなことでか。お思いかもしれませんが、いつも会っているのは

図書館ですが、今日は制服姿で、学校なのですよ。


しかも今気づいたんだけど、同じクラスで、その上隣の席だった…

なんで今までこれで気づかなかったの、僕?って突っ込みたかったんだけど

突っ込めなかった…

これ、通常のクラスじゃないもん、今のクラスは今日から始まる、夏休み前にある特別授業用のクラスなので…いつもは違うクラスでも今は同じって子が多くてね。


それに、僕は友達が少ないから知り合いが極端に居らんので…。あまり分からないのです。

なので、教室に入ったら知ってる人はいないかと周りを見回すのが常でして。

今回もいつもどうり、席に着いてから見まわしてたんだけど...

『このクラスの中で知っているのは...汐音と、彼の隣を何故かずーっと離れようとしない碧唯と

それから...あっ、いつも汐音を追っかけてる子もいるや。ええっと、名前なんだっけ?

忘れたなぁ...。金髪で美人さんだから、容姿的には忘れないんだけど、名前はなぁ。ごめん。

あとは...碧唯の後ろにいる子、見たことある気がするんだけど、誰だろう?うーーん、分かんないや、今はほっとこう。他は...いないかな。じゃあ、ゆっくり休んでいられるね。』と思って、机に突っ伏して寝てたのはいいんですけど、気が付いて隣を見たら、さっき気になっていた女の子がいつのまにかいるのですが… 『うそー?なんでいるの?』って思っていたら。その子こっちに気づいたらしく、「あっ、令央起きたー。おはよー」とにこやかに声かけられた。なんで名前知ってるの?と思ってたら。「うーん、『なんで名前知ってるの?』って思ってるなぁ~?私の事まだ気づいてないの?」

へっ?なんで思ってることわかっちゃうのかなぁ。

似たようなことは夕雫と一緒なら多いんだけど。

って、夕雫?あの子はこの学校の生徒さんだけど...。来てるの⁉

「やーっと、気づいた!そうだよー!夕雫だよー。」とにやつかれた。

「えっ?なんだここにいるの?」と僕の中は大パニック!

「なんか、久しぶりに学校に行きたくなったんだってさ。」と上から声がして、その方を向くと

立っている碧唯だった。

へぇ~、そっかー。

「なんで?」

「だから~、来たくなったからだよ~」と当の本人はすまし顔で言っていらっしゃるが、僕はそういうことが聞きたいんじゃなくて、どうして来たくなったのかが知りたいのです。

「そんなこと聞こうなんて思うな!」となんでか拗ねてしまった夕雫から、平手打ちを食らいました。

痛いわ!なんで皆、いきなり殴ったりするの?分け解らん...。

この前、碧唯にも腹を殴られたし、今、平手打ち食らったし...

元カノの紗矢にも昔何が理由だったか忘れたが思いっ切り殴られたし。

僕が知ってる子ってだいたい殴るんだよねぇ...


それはいいとして夕雫が入ったことで、いつものメンバーだから、気が楽になって良い感じに一日を過ごせた。

いつもは先生の話は半分ほどしか真面目に聞いていないのだけど、今日は全部頑張って聞いた!

結構ほめてほしいんだけど!って思ってたら

「ちゃんと先生の話は聞こうね。」とサラッと釘を刺されてしまいました。

とか、そんなことで

授業終わってさっさと帰ろうとしたら、夕雫に袖を引っ張られてこけそうになりました。。

『なんなん!?僕は早く帰ってゲームがしたいの!』って心の中で文句言ってたら、

「うるさいなぁ、早く終わらせてあげるから、ちょっと付き合って。」と言われた。

何に付き合うんだよ。っと思っていたら、買い物しに行っていた碧唯が汐音を引き連れて近くのコンビニから帰ってきた。「ごめん、お待たせ!そういや話があるって朝行ってたけど何なの?」と夕雫に言っていた。けど、全然聞こえない。碧唯から逃れた汐音が耳元でうるさいからだ。どうも、コンビニで少し喧嘩したため、泣きべそをかいているようだ。

「汐音、ちょっとうるさい。」

「でもぉ~、話聞いてよぉ~、令央~」とすがりつく。ちょっとどころか、かなりうざい。

「話なら後で聞いてあげるから、今は夕雫の話聞こう?」と妹に使うような口調になった。

「わかったよー。それで、夕雫たんの話って何なの?」

「えーっとねぇ、今月末の土日に花火大会あるでしょ?」と言いながら、チラシをカバンから引っ張り出した。

「ああ、そんなものあったね~」と碧唯、あきれてます。

「そこに、みんなで一緒に行こうよ!」と夕雫はとびっきりの笑顔でそう言い放ったのだ。

「うーん、その日予定なかったから別にいいけど。」と渋々といった感じで了解する碧唯。時々夕雫の姉、見たいなところがある。本人は気づいてないみたいだが。

「碧唯が行くなら俺も行こうかなぁ。」と結構乗り気な汐音。さっき碧唯と喧嘩したのではなかったのか。

「えー、いやだよ。」と僕は言う。

「花火好きじゃないの?」と夕雫が不思議そうに聞く。

「えっ?別に嫌いじゃないけど...」と言い淀んでいると、

「じゃ、行こ!」と夕雫に独断されてしまった。

「分かったよー。行くよ」と答える。

「やったぁ!じゃあ、いつ待ち合わせる?」ともう行く時の話を始めている。

『夏祭りかぁ。いかにも青春って感じだなぁ。でも、楽しみだぁ。』なんて思いながら夕陽を浴びて少し温くなった教室で、僕は再び眠りについた。


  この夏祭り中に起こることが大きく僕たちの運命とこの世界を変えるのだが、そのことを僕たちはこの時点では知ることはなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る