第46話 解呪 (キュン3)
「つまり、私の呪いはドラゴンの涙を受け取ることで綺麗さっぱり吹き飛んだってわけね」
何だかあっけなささすぎて拍子抜けしてしまいそうだ。
一生誰も愛せないかもと思っていたのに、不思議な気分だ。
「そうニャ。ララの魔力は元々呪いには不向きニャ。力も使いすぎていたしアンジェラに呪いをかけた時点でドラゴンの方が魔力は上だったニャ」
なぜかララは不貞腐れて頷く。
あれ? やっぱり真珠の涙が欲しかった?
「アンジェラ今考えていることは誤解だニャ。ララの不機嫌の原因はそいつだニャ」
いつの間にか私の横にピッタリとくっついて座るレイモンドを指さしてララは叫ぶ。
「聞いてニャ! こいつはアンジェラが目覚めるまでララを部屋から追い出したニャ」
ララはベッドの上に立ち上がりレイモンドの髪を引っ張る。
あらあら、寝ている間にずいぶんと仲良くなったのね。
「当たり前だろ。ララはドラゴンと知り合いなのに秘密にしていた」
レイモンドも負けずにララを引き剥がしてベランダに放り投げる。
まるで子供の喧嘩ね。
「レイモンド、ララにも事情があったのよ。それに結局一緒についてきてくれたでしょ。ララの気配があったからドラゴンに襲われずに済んだんだから」
それじゃなかったら、即攻撃を受けて死んでいただろう。
「アンジェラは優しすぎる」
「でも、ほら結局呪いも解けたみたいだしラッキーだったじゃない」
めでたし、めでたしで一件落着。
「ラッキーじゃない。何であんな危険な真似をしたんだ? アンジェラは俺のせいでコートニーの魔力が足りないと知っていたんだろ」
レイモンドが急に弱気な態度で私を見る。
あら、バレちゃったのね。
「本のこと聞いたんだ」
「ああ、俺だけ何も知らなかったんだな」
「だって、もう済んだことは仕方ないでしょ。コートニーにはドラゴン退治に行く前にきちんと話したの」
それで、ララと血の滲むような特訓をしたのだ。
まあ、さすがヒロインとでも言おうか。
メキメキ上達してくれた。
「アンジェラ」
「なあに」
「体調が良くなったら、話したいことがある」
「話って?」
「今はいいんだ。ゆっくり身体を休めることに専念してほしい」
レイモンドは私の髪を一房すくうと、そこにチュッとキスを落とした。
「人前!」
「婚約者なんだから普通だろ」
普通じゃないから!
もう! こういうことをされると反応に困るのよ。
ん?
ちょっと待って。
呪いが解けたって言うことは、私はレイモンドのことを好きじゃないフリしなくてもいいんだ。
私も好きって言える……。
そう考えると、心臓がドキドキと音を立てて顔が真っ赤になる。
いや、恥ずかしくて絶対に好きだなんて言えない。
それでなくても、過剰なほどに接触されているのに両思いだなんて知られたらキスだけではすみそうもない。
無理。
勇気も覚悟もまだ全然足りない。
私は目を瞑り、必死で胸のドキドキを静めようとした。
それなのに、突然耳に吐息がかかり目を開けるとレイモンドの顔が間近に迫ってきて、あろうことか耳たぶを舐めた。
「あぁぁぁぁ」
固まって思わず低い声で唸ってしまう。
「あははははは。久しぶりに聞いたなそのハスキーな驚き声」
「ひどい、揶揄ったのね」
「ごめん、ごめん。笑っているアンジェラの姿を見られて嬉しくて」
楽しそうに笑うレイモンドはいつにも増してとろけそうな瞳で私を見つめてくる。
もう、笑顔が凶器だわ。
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