閑話 シークレットサンタ アスライ視点 2 (クリスマス特別話)
「テストで100点とりたい」
なんのだ?
「ドレスが欲しい」
「指輪が欲しい」
「お星様が欲しい」
読んでいるうちにだんだんバカらしくなってくる。
そんな中変わったお願いが……。
「呪いの解き方を教えてほしい」
呪いのかけかたじゃなくて?
それにしても、こんなこと書いてくる子供がいるのか。
「あー、ランカスター家のお嬢様ですね。それはちょっと回収案件ですね」
僕は「呪いって?」とイアンに聞いてみたけれど肩をすくめただけで教えてはくれなかった。
まあ、そんなことはどうでもいいか。
「味方になってくれる人間が欲しい」
うーん。
子供らしいお願い事ではないな。
僕が考えていると、イアンが横から手紙を覗き込み「それも回収案件ですね」と最後の署名に視線をやった。
「レイモンド……」
義弟の顔が浮かんで僕はため息をついた。
滅多に会うことはないが、小さな身体なのに瞳はギラギラと輝いている印象だ。
初めて会ったとき母にすぐ暗殺されるのではないかと思ったが、未だにしぶとく生きている。
「それは殿下が処分してください」
「え? なんで僕が」
「恐れ多くも王子様のお手紙を私ごときが処分するわけにはいきませんからね」
イアンに乗せられた気分だったが、僕はレイモンドの手紙をポケットに入れた。
そのとき、ランカスター家の娘の手紙も一緒に封筒に入っていたのは偶然かはわからない。
✳︎
レイモンドの手紙を読んでしまってから、なんとなく罪悪感で動向が気になり始めた。
——9歳の時、またもや母がテラ様を毒殺しようと画策する。
公然の秘密であり、陰でさぞ面白おかしく話題になっていることだろう。
お茶会なんかに出る気分ではなかったが、そこにレイモンドも参加すると聞き僕も出席することにする。
「珍しく、ライラ様のお茶会に参加するんですね」
授業の後、イアンがニヤニヤと僕の顔を見た。
「別に、意味はない。そろそろ側近候補を考えるのも悪くないと思っただけだ」
「そうですか。話は変わりますが、シークレットサンタに期限はありませんから」
機嫌良く、鼻歌を歌いながらイアンは部屋の出口で振り返り「代わりに、アスライ様の願いはサンタには難しそうなので僕がお手伝いしてあげましょう」と、僕の書いた手紙をひらひらさせて出ていった。
「あいつ、処分してなかったのか……」
僕の願いを叶えるなんてずいぶん大口をたたくじゃないか。
ふん、お前に手伝ってもらわなくても自分でなんとかできるさ。
そう思ったが、最近のイアンは宰相の雑用を専門に任されるようになったと聞く。あながち大口でもないかもな。
それにイアンには隠し事ができないような気がしたので、文句を言わないでおくことにする。
お茶会の日。
レイモンドは毛の逆立った猫のようだった。
思わず、笑いそうになったが必死に堪える。
後ろで、イアンが真面目な顔で「全部毒味は終わりました」と耳打ちした。
「レイモンド、こっちに座ったら」
そう声をかけると、驚いたのか瞬きもしないで固まってしまう。
そんなに驚くことか?
これでも一応兄弟なのに。
味方だと認識してもらうようになるにはまだまだ先は長そうだ。
そういえば、僕から話しかけたことはなかったかもな。
ムズムズと好奇心が芽生えてきたが「初交流で構いすぎるのも警戒されます」とイアンがしつこいので、呪われアンジェラ嬢が登場したところで僕は退散することにした。
「いいんですか? きちんと味方になってやるって言わなくて」
「今のレイモンドにそんな白々しいことを言ったって逆に警戒されるだけだろ」
「味方になってあげるってところは否定しないんですね」
イアンが「ククッ」と忍び笑いをした。
「仕方ないだろ、手紙を読んだんだから」
「確かにそうですね」
「これから、面白いことになりそうじゃないか?」
僕がそう呟くと、イアンはやれやれと首を振った。
「弟君でくれぐれも遊ばないでくださいよ」
「わかってる。それより、アンジェラ嬢が持っていた本……どこかで見たことあるような気がするけど心当たりあるか?」
「童話みたいでしたね。気になるなら調べますか?」
イアンも魔法の気配を感じたのか探りを入れるか聞いてくる。
「いや、悪い気配は感じなかったし呪いには関係なさそうだから調べる必要はないだろ」
「そうですね。それにしてもアンジェラ嬢は可愛かったです」
「そうか、僕は苦手なタイプだな」
「ああ、殿下は守ってあげたい系が好みですよね。でも、ああいう気の強そうな子ほどデレると可愛いんですよ」
イアンのはしたない言葉に、冷たい視線を送り僕はなんとなくアンジェラ嬢のデレを想像してしまった。
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メリークリスマス🎄
皆さんのところにも素敵なサンタさんがきますように。
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