第35話 本当の寝取り野郎

※未那ルートの35話から変わります。




「うーん、大丈夫かなー。大丈夫かな……」


「こら翔太郎ちゃん。しっかり仕事するっ!」


「はいっ!!」


 オネエ店長に尻を叩かれ気合を入れられる。もう何回目だろうか? 笑ってはいけない24時並みにケツを叩かれて腫れている気がするのだが……。


「ほら、お客さまが入ってきたわよ。接客に行って」


「はい……」


 皿洗いを終わらせて、入口の方へ。

 気を抜けば浮かぶのは未那のことばかり。


 未那大丈夫かな……辰と鉢合わせたりしてないかな……。まぁ家にいれば安全だと思うけど……。


「今回は言わなんですね」


「え?」


 お客さんから掛けられた声。しっかりと顔を見ると……客というのは、七香のことだった。


「七香……」


「前は随分と上機嫌に出迎えてくれたじゃないですか。今回はそんな余裕はないって感じですか?」


 この前………


『いらっしゃいませ、予約された瀬尾様ですね』


 ああ、あの時か。七香たちの先回りしてカフェでバイト始めたホヤホヤの。


「懐かしいな」


「そうですね。あの頃の私たちはバチバチでしたし」


「それが今や辰という最大の寝取り魔を阻止するために協力してる関係と

は……」


「一時的ですからね?」


「わかってるよ。辰の件が無事片付けば七香は今まで通り、勇臣を寝取るんだろ。あー、あー。そっちも大変だな〜」


「……」


「ん? 七香?」


 何か反抗すると思えば、黙ったまま。顔を見ると、何やら暗い表情……。


「な、なんでもないですからそんなじっと顔を見ないで。……無駄な話はいいですから、本題いきますよ。立ち話もなんなので外へ行きません? カフェで話すような内容じゃないですし」


「え、俺バイト中なのですが? 見て分からない? 今制服姿」


「妹とバイトどっちが大事なんです?」


「え、妹」


「なら行きますよ」


 10分だけ店長に時間をもらい、俺は七香と共に外に出る。近くのベンチに座り雑談再開。


「どうですか、未那ちゃんの様子は」


「今のところは辰との接触はない。ここんとこ辰を見ないからな。そっちは?」


「私の方でも特に変わった様子は。……ただ最近、兄が妙に大人しいというか……」


「というと?」


「アイツが遅くに帰ってくることもなく、女の人を家に連れ込むのではなく……ただ家で頻繁にスマホを見ながらゴロゴロ……まるで、いつ事を起こすか事前に計画を立てているような落ち着き度なんです」


 辰がそんな落ち着いているなんておかしい。あれは完全に未那を狙っている目だ。人の恋人を寝取ることになんの罪悪感も感じてないアイツがそう易々と諦めてくれるとは思えない。


 ……これは、嫌な予感。


「兄が今どこにいるか確認しますね。私が家を出た時にはリビングにいましたが」


「そういや、俺も未那にこっそりGPSアプリ入れてたな」


 店長に勧められて入れたんだよな。

 早速確認する。


「あれ? ここは家じゃない……」


 未那の現在地は家ではなかった。ともに、過去の履歴から照らし合わせても行ったことがない場所……。

  

 ゾワリ


 ……嫌な予感がする。


「未那……」


 声が震える。最悪の事態が頭をすぎる。


「翔太郎先輩、行きますよ」


 七香も深刻そうな顔。恐らく、辰が自宅でほなく別の場所にいたかもしれない。


「……」


「ほら、早くっ!」


 七香が俺の手を引き……立ち上がらせてくれた。



 

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