第二章

第17話 寝取りといえば夏休み——あ?

 皆さんこんにちは。

 寝取りクラッシャー改め、翔太郎モブです。


 今日も明日も明後日も……寝取りの事を考えていました。


 おかげで勇臣と遙は健全はお付き合いができています。


 対して七香は、俺に敵意剥き出しです。要するに嫌われてます。まぁ、そうだよなという反応。


 そして1学期の終業式。暑い中、体育館で長々と校長先生の話を聞く全校生徒。退屈というよりは、皆、落ち着きがない。何故なら、この午前中を乗り切れば夏休みに入るから。


 クラスでのホームルームを終え、夏休みに突入。クラスは大盛り上がりだ。


「翔太郎、帰ろぜ」


 うちのクラスが終わったのを見計らって、話しかけてきた男子生徒。


「おう、勇臣」


 なんとあの芳賀勇臣だ。

 初めは俺が彼女を狙っていると勘違いしたものの、俺と関わってから遙と上手くいくようになったと感じたらしく、今では友人キャラに昇進し、恋人とこと抜きにしても仲良くする中。隠れオタクという主人公らしい特性も俺と気が合う。


 男友達にしばしの別れを告げ、2人で廊下を歩きながら雑談。


「なぁ翔太郎。明日から夏休みだろ」


「ああ、そうだ。皆さんお待ちかねの大好きな夏休みだ」


「だから明後日から早速、プールに行こうと思うんだ。知り合いからチケット貰ってさ」


 鞄からヒラヒラっとチケットを2枚出す。


「彼女と行くっていう自慢か? 羨ましいなリア充めっ!」


「おいおい首を絞めてくんなよっ! 確かに遙とも行くが……。本題は、このチケット2枚余っててさ、翔太郎要らないって話」


 よし、きたこの話。

 夏休み編に入って最初のイベント。


「ありがとう。ちょうど暇してたからありがたく貰う」


「そうか。良かった」


 チケット2枚を譲り受ける。

 元のルートなら、七香とその女友達が受け取っていた。


 だが、今俺は七香と同じくらい勇臣も親しポジションにいることに成功。勇臣もしても誘惑してくる七香より、守ってくれるモブの方が安心と感じたんだろう。


「確か翔太郎って妹さんいたよな。2人で行ってきなよ」


「俺もそうしたいところだが、明後日となると、妹の方は用事があってな。これ、誰とでも行っていいんだよな?」


「もちろん。もう翔太郎のモノだからな」


  ……ほう、なら一緒に行く相手となればしかいないな。


「ありがとう。そして勇臣、ちょっと用事思い出したから先に帰っててくれ」




 3階の空き教室。クーラーの効いてない部屋にて待ち人がきた。


「よう、七香」


「暑いこの時期に呼び出さないでくれる。しかもこの感じ……懐かしいわね」


「その口調は最初よりは素になってきたんじゃないのか?」


「ふんっ……アンタに媚びてもなんの徳もないでしょ。むしろ損しかない」


「だろうな。俺たちは真逆の目的だからな。……雑談はここまでとして、このままじゃ2人とも夏休み入って早々、熱中症になっちまうから……はいこれ」


「……? なに?」


 七香の前にプールのチケットを1枚差し出す。


「一緒に行こうぜ」


「は? 誰がアンタと——」


「これ、勇臣が渡してきたんだわ。つまり、アイツらも明後日もここに行く」


「……っ」


 あからさまに反応が変わる。

 ここまで俺が止めても勇臣が諦め切れないのだろう。


 何故、天敵とも言える七香を誘ったのか。それは、このプールで遙と七香の兄、辰が接触するから。この場に七香がいてくれた方が好都合だ。


「何を目論んでいるか知らないけど……チャンスがあるならもちろんやるわ」


 七香が乱雑にチケットを取る。

 ふんっ、と難しい顔をし、感謝をする事なく。


「決まりだな。明後日は現地集合な。そのチケット、ペアだから2人で入らないといけないし」


「……また面倒臭いチケット。はいはい。アンタ、遅刻しないでよ」


「お前もな」

 

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