第15話 やめてっ! このままじゃライフはゼロにっ!次回死す——なんてな?

『翔太郎先輩、私のこと忘れちゃ嫌ですよ。貴方が告白してきた後輩ちゃんですよ』


 俺が誤魔化す前に七香に先に言われてしまった。


 当然、俺も未那も無言。

 七香は勝ち誇ったように腕組み。


 なんだコイツは、いきなり現れて人の邪魔しやがって……って、俺もか。


 なるほど、確かにウザい。いきなりパッと現れた奴に邪魔されるのウザいな。俺は前世で七香を画面越しにではあるが、知っている。だが、七香からしてみれば俺は赤の他人。


 けれど、俺はあの最悪のエンドをどういか避けたい。もちろん別ルートも。


「酷い……」


「え」


 未那が呟く。

 

「酷いよ……ねぇ」


「未那……」


 シャツをギュッと握ってくる。

 なんとも言えない表情で。


「あらあら、先輩ってば……残念♪」


 七香のクスクスっと勝ちを確信した笑い声がさらに不安を煽ぐ。


 先に俺の方がバッドエンドってか? ハッハッハッ、こりゃ参っ——


「だから告白なんて無闇にするものじゃないのよ! たとえ、嘘コクだとしても女の子はずっと覚えてるんだからっ!!」


「「はい?」」


 七香と声がハモる。 


 何故未那が嘘コクであることを知って……



 〜翔太郎が告白をした日の夜〜


『お、おお兄ちゃん告白したって本当なの!?』


『え、それをどこで……』

 

『学校前通ったら他の人が噂してて……べ、別に一緒に帰ろうとして待っていたわけじゃないんだからねっ』


『あ、あれ? あれは……(素直に寝取り阻止です!とは言えないよな……)』


『言えないんだっ……じゃあ本当に……』


『えーと、今は詳しく言えないが、あれはとある一つの作戦でな。実はお兄ちゃんの知り合いが彼女に奥手で……』


『そ、それとお兄ちゃんが告白したのは関係ないじゃん! ばかっ! お兄ちゃんのバカっ!!』


『待て待て落ち着つけ未那! その、俺が告白した人っていうのが、その恋人の仲を邪魔する存在というか……その子のせいで2人がイチャつけないというか……。とにかく、お兄ちゃんが告白することによって、その2人にもう一度、自分たちが恋人であることを再理解してもらおうと思って……』


『聞いても告白した意味が分からなかったけど、結局、お兄ちゃんはその……告白した女の子のことは好きじゃないんだね?』


『お、おう。もちろんですとも?』


『……ならいい。べ、別にお兄ちゃんが告白したからってアタシには……関係なんだからっ!! ……良かったぁ、あの事を言う前に失恋したかと思った……』



「……あー、あれか」 


 早口で説明したから、何を言ったか忘れていたが、じわじわと記憶が蘇ってきた。


 普段目立っている3人に絡んだことが、ここにきて功を奏したようだ。


 もしかして今日のデートってその事に妬いたから……は考えすぎか。


「〜〜〜っ!」


 またもや作戦が失敗し、下唇を噛んで悔しそうにする七香。しかも俺に嘘コクされた被害者という認識がついた。対して俺は安堵でひとまず胸を撫で下ろす。


 勝機はこっちにあるが、ここは一旦離れた方が安全だな。


「じゃあな、後輩。俺はデートで忙しいんで」


 未那の手を引き、そそくさとその場を離れる。


「お兄ちゃんが嘘コクなんかするから、面倒な人に付き纏われるんだよっ」


「そ、そうだな。いやー、未那が居て助かったよ、マジで」


「そう?」


「おうよ。本当に感謝してる。そうだ、今から未那の欲しいもの買ってやろう!」


「そう、じゃあお言葉に甘える。……アタシが欲しいものって、告白なんだけどなぁ」


「……?」


 未那の足が止まった。何やら言いたそうに口をパクパクしている。


 ゆ、遊園地の中で高いものって言っても3万円は超えるものは……ないよな? そんなのお願いされたら、お兄ちゃんの財布の戦闘力が一気にゼロになってしまう。


「お兄ちゃんあのねっ」


「ど、どした?」


 なんだ、一体何を頼むんだ……?


「実はアタシたち——っ……ううん、やっぱなんでもない」


「そうか?」


 どうやら欲しいものの事についてはなかったらしい。


 実は……なんだろう。めっちゃ気になる。また突発的だったら嫌だけど。次こそはそんなに対したことじゃないと祈る。


 この未那の言葉の続きを、早く聞いていれば……。のちの俺は後悔することになる。




「やっぱり一筋縄ではいかない……。こっちにはまだ秘策があるんだからっ」


 翔太郎と未那の背中を見つめ、七香は唇をぺろっと舐めた。


 

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