第2話・第一の生徒相談 『先生のおっぱいが触りたいです』

 放課後──保健室に竜崎のアドバイスを受けて、悩みを抱えた男子生徒がやって来た。

 椅子に座って足を組んだ勇奈が、男子生徒に質問する。

「それで、どんな悩みなの?」

 男子生徒が勇奈の胸部を凝視しながら言った。

「勇奈先生の胸を、オッバイを揉ませてください!」

「はぁぁ!?」

 豊満な胸を、思わず手で押さえ隠す勇奈。

「ずっと、先生の胸のコトが頭の中から離れなくて……勉強が手につきません、一回触らせてもらえれば勉強にも全集中が」


 鼻息も荒く、今にも何かしてきそうな雰囲気で発情している男子生徒に、身の危険を感じた勇奈は窓際に逃れる。

「ち、ちょっと待ちなさい! 落ち着いて!」


 勇奈は、この状況をどうやって回避するか、必死に考えた。

(落ち着け、落ち着け、素数を数えろ……何か方法があるはずだ、何か)

 勇奈の脳裏に女勇者だった時の記憶が浮かぶ。


 断崖から下を見ると、群がるオーガたちが女勇者たち一行を、賛美していた。

 女勇者が、参謀賢者に訊ねる。

「いったい、どうやったの? 一夜で血気していたオーガたちを手なづけるなんて?」

「『代替え行為』を、オーガたちに与えて満足させただけですよ……連中はサル並みの脳ミソですからね、ちょろいです」

「代替え行為?」


「オーガたちは、干ばつで食糧が不足していてイラつき。我々が通行するコトにさえ敵意を抱いて喰ってやろうと待ち構えていました……

だから、人間の食べ物の焼きイモを与えて。一時的に空腹感を満足させました……明日になれば、また空腹感でイラついてきて根本的な解決にはなりませんがね、さあ、早く谷を抜けてしまいましょう」

「代替え行為か……なるほどね……サルには代用品か」


 勇奈は、前世の思い出した体験から男子生徒の魔手から。

 自分の胸を守り、危機状況を回避をする方法を思いついた。

「明日……学校が休みの明日なら、先生がなんとか悩みを解決してあげるから。お願い今日は黙って帰って」

「明日になれば、胸を触らせてくれるんですか?」

「と、とにかく今日はダメだから」

 勇奈は、発情寸前の男子生徒を家に帰した。


 翌日──勇奈と男子生徒はバス停にいた。

 男子生徒が勇奈に質問する。

「バスの中で、胸触らせてくれるんですか?」

「余計なコトは考えなくていいから……ほら、バスが来たから乗って」

 男子生徒が座席の隣に座ろうとするのを、制した勇奈は前の座席に男子生徒を一人で座らせた。

 バスが動き出し、長い直線道路を走行する。

 勇奈が、前の座席に座る男子生徒に言った。


「これだけスピードが出ていて、バス停もだいぶ先なら大丈夫そうね……信号機も少ない道だから。窓を開けて、片手を外に出して、前方に向かって手を広げてみて」

 男子生徒が言われた通りに、走行するバスから手を出して広げる。

「どんな感じ?」

「奇妙な感触です、風圧で手の中に柔らかい塊があるみたいな?」

 すかさず勇奈が言った。

「それが、あたしの胸の感触よ」

「これが、勇奈先生の乳房?」

「さあ、思いっきり。手の中にある、あたしの胸を触りなさい」

「はい、勇奈先生。あぁ、これが勇奈先生の胸……大きくて柔らかくて弾力がある、勇奈先生、勇奈先生」

 しばらく、窓の外に手を出していた男子生徒は、手を車中に引っ込めると窓を閉めた。


 気が抜けた様子の男子生徒に訊ねる勇奈。

「どうしたの?」

「なんか、悩んでいたのがバカバカしくなってきて……勇奈先生の胸なんて、もうどうでも良くなりました、勉強に集中します」

「そ、そう……悩みが解決して良かったわね」


 異布院勇奈は、男子生徒の青春の悩みを一つ解決できた喜びよりも、男子生徒が言った。

『勇奈先生の胸なんて、もうどうでも良くなりました』の言葉の方に、複雑な乙女心の傷心を感じた。


第一の生徒相談~おわり~

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