13:筋力上昇は凄いです!

 アルスさん達に連れられて鍛治屋さんへと到着した私はまず武器を見る事になった。


「リナに危険な討伐はあまりさせたく無いとは思うがいざと言う時に対抗出来る武器が無しと言うのは怖すぎる。 だからここでリナにも扱える武器が無いかを見ようと思う」

 そう言いながら店内へと入ってみると、沢山の刀剣類が私を出迎えてくれた。


  :うぉー!すげぇー!めっちゃ剣あるじゃん!


 配信をこっそり始めていたお陰か、コメントにはいつもの人がいた。


リナ:凄く沢山でびっくりしちゃいました⋯⋯

  :どれもこれも重そうだけど、リナちゃん大丈夫?


 コメントでそう言われると、確かに不安になってきた。 昨日のナイフは軽かったから私にも平気で扱えそうだったけど、ここにある剣の殆どが重そうで私に振るえるのか分からない。


「おやっさん、久しぶり」

「ん? アルスじゃねぇか、今日は剣の手入れで良かったか?」

 アルスさんが鍛治屋の店主さんに声をかけると、いつもお願いしているからなのか、手入れをするかどうか聞かれていた。


「違う違う、今日はこの子に合う剣を探しに来たんだ」

「ほう、珍しい。 って事はあそこの孤児院の子か?」

「⋯⋯まぁそんな感じだ」

「先輩としてカッコつけてやりたいって感じか、ハハッ、あのやんちゃ坊主だったアルスがなぁ」

「おやっさん、昔の話はやめてくれ⋯⋯」

 どうやら話を聞いていると、アルスさんも孤児院で育った人みたい。 だから私達に良くしてくれるのかな⋯⋯?


「んで、その子の使う武器だったな、ちょっと待っててくれ」

「あぁ」

 そして店長さんは奥へと何かを取りに行き、少しすると手に何本かの剣を持って戻って来た。


「とりあえずこんなもんか、嬢ちゃん、この中にある剣で持てる物があったら教えてくれ。

 出来れば振るえるくらいの物を選んでくれ」

「分かりました!」

 店長さんに渡された沢山の剣を持ってみると、長い物はやはり重くて、短めの剣じゃないとまともに振るう事が出来なかった。


「⋯⋯やはりそれくらいの剣しか持てないか」

「リナちゃん、今からでも魔法使い目指しても良いと私は思うわよ?」

 私はそう言われて少し、迷った。

 まだ剣術自体のレベルも低いから確かに魔法を使うのもありなのかもしれない。


  :ねぇ、リナちゃん

リナ:どうしましたか?

  :筋力と言うか力を増すスキルって無いの?

リナ:スキルですか⋯⋯そう言えばアルスさんが身体強化と筋力上昇を持っているって言ってました!

  :どうせ役に立ちそうなスキルなんだから取ってみたら?

リナ:それはそうですけど⋯⋯良いんですかね、そんなに簡単に取ってしまっても⋯⋯

  :いずれ必要になるんだしいいんじゃないかな?

リナ:なるほど⋯⋯


 コメントでそう言われたら良いのかな、と思えて来た私はアルスさん達に少し待って欲しいと言うと、スキルの取得を始めた。


「リナ、一体何をしているんだ?」

「えっと、スキルの取得⋯⋯です。

 少しだけポイントが増えたので、スキルを取ってみる事にしたんです!」

「リナちゃんが前言っていた異世界配信のスキルの効果ね?」

「はい! どれくらいのポイントで取得出来るのか分からないですけど⋯⋯」

「確かにそれで扱える剣の種類が増えればメリットだし、筋力が上がれば移動速度なんかにも影響がある。 悪く無いんじゃないか?」

「確かにそれはメリットね⋯⋯

 リサちゃん、私も良いと思うわ」

「じゃあ探してみます!」

 そして探してみると、やはりと言うべきか出てきた。


 身体強化Lv1が50pt、筋力上昇Lv1が100pt、身体強化Lv2にすると合計200pt、筋力上昇Lv2は300ptと、アルスさんと同じにすると持っているポイントの半分が無くなってしまう。


「あの、アルスさんちょっと聞いても良いですか?」

「ん? 何だ?」

「身体強化や筋力上昇ってどれくらい力が変わるんですか?」

「身体強化は一時的に身体能力全体を強化してくれるんだが、どれくらいと言われると困るな⋯⋯筋力強化はレベルが一つ上がるだけで明らかに力が増した気がするから剣くらいなら平気で持てるようになるかもしれないな」

「なるほど⋯⋯」

 筋力が上がればやれる事も増えるし、筋力強化はあってもいいかもしれない。

 身体強化はまずLv1を取得して、使えそうならレベルを上げていくのが良いかもしれない。


「そ、それじゃあ取得してみます!」

「あぁ、俺もどうなるのか気になるし、見させてもらうよ」

 そして二つのスキルを取得してみると、私の体に力が漲っている気がした。


「なんだか力が漲ってきた気がします!」

「じゃあさっき重たいって言っていたこの剣持ってみてくれるか?」

「はい!」

 アルスさんから剣を受け取ってみると、驚くべき事に全然重さを感じなかった。


「す、凄いです! 凄く軽いです!」

「え? 嘘でしょエリナちゃん!?」

「いえ、本当ですよ!」


  :嘘だろ⋯⋯スキルすげぇ⋯⋯

リナ:凄いです!私の三分の一くらいの大きさの剣も軽く感じます!

  :三分の一って⋯⋯50cmくらいか?そうなると、グラディウスとかになるから小剣の部類だな⋯⋯いや、でもあれでも1kgとかだっけ?軽いっちゃ軽い髪しれないけど十分重いよな⋯⋯?

リナ:えっと、何を言っているのかはよく分からないですけど、もっと大きい剣も私持てちゃうんですかね?

  :持てるかもしれないけど、取り回しが難しいかもしれないからそれくらいの武器の方がリナちゃんには良いかもしれないね。多分アルスさんがちゃんと教えてくれると思うよ

リナ:わかりました!


「ん? この剣は⋯⋯?

 リナ、一応これも持ってみてくれるか?」

「はい!」

 アルスさんは私の身長より少し小さめの厚みのある剣を渡して来た。


「少し、重いですけどなんとか⋯⋯」

「嘘だろ⋯⋯筋力上昇ってそんなに効果があったのか⋯⋯?」

 アルスさんは筋力上昇の能力の高さに驚いた様子で、少し愕然としていた。


「⋯⋯もしかして、私相当ヤバいスキルを?」

「いや、違うんだ。 俺実は筋力上昇のスキルを取ってからあまり差を感じなかったんだけど、ようやく理解出来た」

「何をですか?」

「おやっさん⋯⋯やってくれたな⋯⋯」

「ハッハッハ! ようやく気付いたのかアルス!」

 店長さんが笑いながらアルスさんの肩を叩きながらそう言った。


「俺の武器、筋力上昇上げてからも重さが変わらない気がしたんだよ⋯⋯おやっさん、破壊力上げるために剣を重くしてたんだな」

「絶妙な調整だっただろう?」

「ハァ⋯⋯やけにあれから敵を斬りやすくなったと思ったらそう言う事か⋯⋯」

「剣が軽けりゃ、斬れるもんも斬れずに剣が折れちまう、特にランクの上がった冒険者なんかは硬い魔物と闘う事もあるからな、自然とそうなるんだよ」

「まぁ、俺の事を思ってやってくれた奴だしな、おやっさんいつもありがとうな」

「おう、これからも俺に金を落としてってくれや!」

「え、えっと、それで私は一体どんな剣を持てば⋯⋯?」

 置いてけぼりにされてしまった私は思わずそう聞いてしまった。


「おおっといけねぇ、とりあえず見た感じはこの辺りの小剣が良いかもしれないな。

 少し後で調整するから明日にでも取りに来てくれ」

「わ、わかりました!」

「おやっさん、代金はいくらだ?」

「⋯⋯お前分かって言ってるのか?

 俺は孤児からは金は取らねぇよ」

「おやっさん俺の最初の時も同じ事言って⋯⋯」

「今はお前からちゃんと返して貰ってるからな、嬢ちゃんも上等な素材を使った剣なんかが欲しかったら俺に声をかけてくれよな」

「はい! ありがとうございます!」

「あぁそうだ、服なんかは最初はレザー系の物の方がいいと思うからアイツんとこに寄って行きな」

「おやっさん、そのつもりだから大丈夫だ」

「なら良い。

 嬢ちゃん、剣は使いっぱなしはダメだ、定期的に手入れをしないといけないから、ちゃんと定期的に持ってきてくれ」

「はい!」

「それじゃ、おやっさん後は頼みます」

「おうよ!」

 そして店長さんに手を振りながら私達は次の目的地へと向かい、そこでは採寸をしてもらい、私のサイズに合った防具を作ってもらう事になった。

 完成までにはあと二日程度かかるとの事だったから、それまでは私はゆっくりして良いよと言われたので、孤児院の子供達と遊んだりしながら完成までの時を待つ事にした。

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