国と食べ物


国が違えば食べるものも変わります。私は家族でアメリカに渡ったので、朝ごはんと夕飯は比較的日本食が多く、お醤油やお味噌が恋しくなる、ということも、泊りがけのサマーキャンプの時以外は基本的にはなかったのですが、例えばスーパーで売っている食材や、皆が持ち歩くおやつなどで、日本では全く見かけないようなものも多くあります。


赤やブルー、グリーンの鮮やかなカラーが目にも楽しいカップケーキ、スーパーで6ドル(648円程)程度で売っている生クリームがとても美味しいパンプキンパイ、姉や妹には好評だけどなぜか私は食べると具合が悪くなる、おそらく何かしら私がアレルギーを感じる成分の入った冷凍品のパンケーキ(ホットケーキ)、プリンと言うよりはむしろクリームのような味のするけれど、妙に甘くて美味しかったPudding…。


その中で、私の主観ですが、これだけは無理だ、というのが、twizzlerというまるでろうそくをねじってかためたような味のするおやつです。


このtwizzlerに関しては思い出があって、ある日、社会の先生(アメリカの学校では、教科ごとに担当の先生がそれぞれいました)がクイズを行い「勝ち上がった子にはこれをあげる!」と言い出しました。

その手にはtwizzlerが…。

(正直いらねー)と思いながら、黙々とクイズに答えましたが、もともと歴史は得意で、かなり最初の段階で勝ち上がりました。

そうして、私の手には先生に「Good job!」と言われながらいただいたtwizzler。


小麦色の肌とブロンドの、きれいでスタイルのいい、いつも踊りながら歴史の解説をしてくれる、人気者の先生。

大好きな先生が、優しい笑顔で手渡してくれる、ごほうび。


なのに、まったくうれしくないという、これはいかに。


仕方がないので、

「実は私、これ苦手なんだ、だれか欲しい人いない?」

そう周りに声をかけると、私の周りに人だかりが!私はクラスの人気者、そんな気分を味わいながら、皆が「ちょうだい!」「僕が!」勝手にじゃんけんを始めたので、勝った子に渡しましたが、(みんなの味覚が理解できない…)その時は正直そう思ってしまいました。


小さい頃食べたものというのは、大人になっても好ましく思うものです。

人それぞれ味覚というのは、文化によって全く変わってくるのだと、その時初めて知りました。

おそらく、アメリカ人にとってのtwizzlerは、日本人でいうと納豆、あるいは干し柿あたりになるのでしょうか。(違うかも…)


そのずっと後、大学卒業時に10年ぶりにロサンゼルスに行った時、少し話したホテルマンの男性(送迎をしてもらったので、ゆっくり話す機会があったのです)に、「日本とアメリカでは食べ物も全然違うよ、twizzlerもないし」と言ったら「本当に!?それじゃ僕には日本には住めないですね」と言われました。

友人にもその後同じことを言われたので、

(おいしいって思うものは、本当に文化によってそれぞれなんだ…)

と思った次第です。


そんな(私から)散々な評価のtwizzlerですが、姉は1歳から5歳ごろまでニューヨーク州にいた経験からか、よく好んで食べていました。これも、味覚は子供の時に決まるということを証明しているのだと思います。


その一方で。

ポッキー、コアラのマーチ、ポテトチップス、じゃがりこ……これらの日本の駄菓子は、世界一だとも私は思っています。

(特に企業の回し者ではありません)

これは私の主観だけでなく、その証拠に。


中学校、東海岸での遠足のことでしたが。

私が日本のおやつ、ポッキーやじゃがりこなどを持っていたら。

私に話しかけたこともない(苦笑)、クラスメイトたちが、満面の笑顔で

「それ超おいしいよね!ひとつちょうだい!」

「俺も!」

「わたしも!」

と私を取り囲んだからです。

(東海岸の、私が住んでいた地域は、西海岸のロスとはまた、違った雰囲気で。

正直、人に対してはあまりいい思い出はありません)


この子たちと話したこともないのにな、とも思いましたが、とても誇らしかったのも事実。


美味しいものは、世界共通。


そして、日本にもいいものはたくさんある、

そんな誇りを持たせてくれたものです。

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