放課後誰も居ない教室で君と出会う―③

それから1週間ほどたった頃、僕は望月さんに屋上へ呼び出された。


「突然呼び出してごめんね。

この前、私は絵を描けないって言ったでしょ?

その理由を話そうと思って呼んだの。

ずっと迷ってたんだけどね。

まだ誰にも話したことないってのもあったし。

でもね、冬弥くんになら話していいかなって思ったの。

聞いてくれる?」


その言葉を聞いて少し身構える。

僕にそんな大事なことを話したとして、受け止められるのか。

でも、少しでも望月さんの力になれるなら、僕は望月さんの話を聞きたい。


「わかった。聞くよ。」


そう言うと望月さんは俯きながら話し始めた。


「私ね、中二の頃までは普通に絵を描いてたの。

コンテストでも入賞するくらいには上手だったんだよ。

入賞するたびに親が褒めてくれて嬉しかったの、でもね、何回も入賞を繰り返すたびに親は私が入賞して当たり前と思うようになった。

逆に入賞しなかったら私を怒るようになった。

その時期から、だんだん絵を描くことが楽しくなくなった。

絵を描くことがだんだん怖くなった。」


望月さんは下を向いていた顔を僕の方に向けた。

「これが私が絵を描けなくなった理由。」


「そうなんだ」


「あー、すっきりしたー!」


望月さんの話を聞いてふと思ったことがある。


「望月さんってもしかして、三年前くらいから急に美術コンテストに出てこなくなって噂になった、あの望月いろは?」


「うん。そうだよ」


「そっか」


望月さんが僕の顔を覗きこんできた。

「どうしてそんなこと聞くの?」


「えっと、実は僕、望月さんの絵好きだったんだ。

だから、望月さんの絵を見れないってなると少し残念だな。」


「そうなんだ。そう言われると嬉しいな。」


「見れないのは残念だけど、良かったらこれからも放課後に僕の絵を見ていってよ。

色々と話したいし、

気に入った絵があったらあげるから。」


「本当!やったー」


その後、少し絵を描いてから二人で帰った。

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