第2話 ある朝2

ある朝

その朝は妙だった。

(今、何時?少し寝過ごしたかも)

と 感じるほど薄暗く 

カーテンの隙間から差し込む強い光もなかった。肌寒さを覚えるほど体感温度も低く

いつもと違うと感じた。


どんより曇っているのだろうか?


それとリンクしたように

我が家の雰囲気もいつもと違った。

(勘違いであってほしい。)

その違和感を感じた理由は

ママが作った卵焼きの匂いや

コーヒーの匂いも、食器の音すら聞こえず、

私は一人寂しさを覚えた。

まさか、、、



私の脳内に昨日の出来事がよぎる。


私は聞いてしまった。

父の無性に明るい言葉になっていない

ただいまという声と

同時に何時だと思ってんのよ。

というママの怒鳴り声を、


昨日のパパはいつも以上に

帰りが遅かったらしい。


しばらくの静寂が終わると

時の経過と共に

言い争う声も必然的にエスカートしていき、

その他も色々な音が入り混じる。


ママのすすり泣く音

それを遮るパパの怒鳴り声

部分的な会話の端々

(当然、いつまでも聞いていたいものではなく。できれば、聞きたくなかった。)


そんな願いと裏腹に

パパとママの声が私の耳にはっきり届く。

「私だって、疲れているわ。あなただけじゃないなのに、あなたは酒で誤魔化せていいわね」(もうやめてママ)


「僕だって、努力しているんだ。家族のために」(聞きたくない)


今まで私のそばでは、

喧嘩もした事なかったのに、、

聞いたことのないバシンという

何かを引っ叩いたような音が部屋中に響き渡る。


(ねぇ、どうして、)


騒がしい声が耳をつん裂く

(こんなことになったのは私のせいなの?私悪い事してないよ?)


その瞬間

彼女の中に優しかった両親との思い出が崩れ

こんできて、雫が頬を伝う。


彼女は怒りや悲しみという

どうしようもない感情を、どこにもぶつけることが出来ないもどかしさを抱いたが、

当然、何もできなかった。


唯一できた事といえば

その恐怖から目を背け、熊さん柄の布団を頭からすっぽり隠す事のみだが、心臓のドクンドクンという動悸だけは隠せず彼女の少ないながらの抵抗に変わる。


両親の口調は優しかった頃と比べると

正反対という言葉が相応しかった。


そして、また、睡魔に誘われ意識が遠のいていく。


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