第16話 助ける

翔也と美空は、師匠から思念で洋子を探り当てることに成功したと聞かされる。ほっとしたと同時に置かれている状況を把握すると心配でいられなかった。

それから洋子の住所をも確定できると助け出すことに専念しようと思った。美空は事務室の机の本棚から、師匠から授かった黒の分厚いファイルを取り出す。これは、師匠の占い師(能力者)としての財産である。医者、弁護士、政治家etc…と幅広い顧客の個人情報が入っている。

それを、慣れた手つきでペラペラとめくり電話を掛ける。

「こんにちわ。私、原田 美空です。ごぶさたしておりましたお久しぶりです。お元気でしたか? はい。今回また、先生のお力をおかりしたくお電話をかけさせていただきました。はい、はい。実は若い女が、拉致され監禁されています。住所は○○県○○町…」まだ事件にもなっていないが、師匠の顧客の一人である警察庁の幹部は師匠の能力を高くかっていて、その話を聞くとすぐに現場に緊急逮捕へのパトカーを向かわせてくれた。


◇◇◇ーーーーーーーーーーー◇◇◇


昼食も過ぎて、祈るような気持ちでずっと待っていた。(大丈夫。助けるって、約束してくれたから…きっと)

外から、車の停車音が聞こえる。不安な気持ちはどんどん大きくなる。


しばらくすると、いつもの男が入ってくる。男は、規則的に「おい、おやじがお呼びだ。まあ、今からの暮らしに早く慣れていくことだな。そうすれば、楽になる」

連れてこられたのは、最初に通された部屋だった。そこには、おやじと呼ばれる男と2人の男がいた。ソファーに座った男たちの中央斜め前に、立たされる。

「よく、眠れたか⁈ 源治の飯は、うまいだろう? まあ、姉ちゃんも栄養をちゃんと摂って俺たちに稼がせてくれないとな」おやじと呼ばれる男の言葉はチャチャを入れないため余計に目つきの鋭さも相まって怖さを倍増させる。

「まず、嬢ちゃん裸になれ。まあ、身体検査だと思って」

(いやだ。いやだ。)とっさに身体を腕で庇うような体制になる。

「おい、嬢ちゃん。人間割り切りが肝心だぞ。少々手荒なマネもできるんだぞ」最初に待ち合わせにきた男たちがの声に凄みが加わる。

怖くて、身体が強張っているのがわかる。でも、言うとおりにしないと何をされるかわからない。震える手で、ブラウスのボタンに手をかける。一つずつ、1つずつはずしていく。「おい、時間稼ぎしたって無駄だぞ。早くしろ」

そんなこといわれたって、手の感覚が鈍っているのに…。それでもブラウスのボタンをはずし終わり、上着がはだけて下のブラジャーが丸見えになる。

男たちの視線がそこに、集中しているのがわかる。(うぅー)悲しい涙と悔しい涙がいりまじった涙が、ボトッ、ボトッと大粒で落ちていく。


その時何台もの車が、停まる音が聞こえた。


それから、あっという間に多くの警察官が部屋に入ってきた。

そして、男たちは抵抗する間もなく目の前で次々と手錠をかけられ連行される。

警官の一人が、洋子に上着をかけてくれた。

「もう、大丈夫ですよ。詳しい事情は、聴いてます」

「は、はい。私 助かったんですね」助かった…。














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