短編集

みけねこ

婚約者BeforeAfter

健康的な身体作りへ

 私はかなりドキドキしていた。なぜなら婚約者との数年ぶりの再会だったから。

 私たちは所謂『政略結婚』というもので婚約していた。そんな父の付き添いで初めて顔を合わせた日、金髪碧眼の綺麗な男の子はまさに絵本の王子様のようで。政略結婚でありながらも私たちは仲良くなり、それ以来一緒によく遊んでいた。ただ父の仕事の都合で離れ離れになってしまったけれど。

 そんな父の仕事も一段落つき、そして再び会おうということになった。彼の屋敷を訪れて、出てくるのを胸をドキドキ高鳴らせながら待っている。

 一体どれほど成長なされたのかしら、相変わらず綺麗な顔なんでしょう。颯爽と現れて手を差し伸べてくるのかしら。

「待たせて悪かったね、ショコラ」

「……! お久しぶりでございます、マカロンさっ……ま……?」

 あっれー? 何やら、何やら想像していたよりもずっと、こう……あちらこちら、丸い気がする。お顔も丸々していて大層可愛らしい感じに……?

「……ず、随分と膨よかになられましたね……?」

「君は相変わらず優しい人だね、ショコラ。みんな僕の姿を見てはっきりと『デブ』だと言ってくるよ」

 会わなかった数年の間に一体何があったのだろう。幼き頃はどちらかと言うとほっそりとしていて、少し頼りなさげだったけれど。今目の前にいるマカロン様はそういう意味では随分と頼り甲斐がありそう。

 それはそうと、何やらマカロン様の息遣いが荒い気がする。そこでハッと気付く。日差しも多少強くそしてふぅふぅと辛そうな呼吸、立ちっぱなしで疲れてきている……!

「中に入って落ち着いた場所で話しましょうマカロン様!」

「あ、ありがとうショコラ。案内するから……ふぅ、ふぅ」

「ゆっくりで! ゆっくりでいいですからね?! 背中をお支えします!」

「何から何まで申し訳ない……」

 歩くのもこんなに辛そうだなんて。なんだかマカロン様が不憫に思えてきてこちらもついウルッと来てしまう。こんな大変な思いをさせてまで迎えに来てくれなくてもよかったのに。呼び出してくれたら私なら颯爽と出向きに行ったのに!

 ゆっくり歩くマカロン様を支えて、ようやく応接間へとたどり着いた。執事さんにドアを開けてもらい、マカロンさんを先に椅子に座らせる。メイドさんがサッとタオルと水を持ってきてくれた。流石手慣れてらっしゃる。

 息が落ち着いたのを見計らって、「あの」と声をかけてみる。

「マカロン様、一体何があったのです? 何がご病気でも……?」

「病気ではないんだけれど……心の問題だと、医師には言われたんだ」

「心の問題、でございますか……?」

「うん……聞いてもらえるかな?」

「もちろんです」

 病気でなかったことに一先ずホッとしたけれど、心の問題も大変なことだ。しょんぼりと肩を落としているマカロン様に、話は真剣に聞くとズイと身を乗り出す。そんな私の反応に、マカロン様は少しだけホッとした。

「父の跡を継ぐべく、将来立派な領主になるべく日々頑張っていたんだ。ただふとした拍子に不安に駆られるときもあって……果たしてこの僕が、父のような立派な領主になれるのかと……そう思う始めると止まらなくなって、気付いたら、食べ物に手を伸ばしていたんだ」

 最初マカロン様の異常に気付いた執事さんが止めようとしたらしいのだけれど、それでも止めることができず。日に日に食べる量が多くなっていく。そして食べてないとまた不安に駆られてしまう。気付いた時には悪循環に嵌っていてどうすることもできなかったと、涙目になりながら教えてくれたマカロン様にそっとハンカチを差し出す。

 それはつまり――ストレスからの暴飲暴食……!

「ごめんねショコラ、君にこんなみっともない姿を見せたくなかった……」

「……マカロン様、これは一大事でございます」

「え……?」

「マカロン様がいくらこの領地のために、民のためにと心を砕いて頑張っていても、民の人たちにはその一面はあまり見えないものなのです。見えるのは、マカロン様のお姿のみ。今の姿を見られてしまったら、民たちはきっとマカロン様のことを『私腹を肥やした領主の息子』としか見ないはずです……!」

「そ、そんな……!」

「マカロン様!」

 ガタッと音を立てて立ち上がり、テーブルを挟んで向こう側に座っているマカロン様の膨よかで丸い手をギュッと握りしめる。

「ダイエット致しますよ!」

「……ダイエット……?!」

「そうです!」

「でもショコラ、そのダイエットの方法とかわかるのかい? だって君は、その、とても美しいままじゃないか」

「何をおっしゃいますかマカロン様! 令嬢たる者、日々磨きをかけておりますの!! いいえ令嬢だけではない、人は磨けば誰しも輝くものです!!」

「そ、そうなのかい?!」

「ええ!」

 私だってマカロン様との久しぶりの再会ということで、それはもう磨きに磨きまくった。少しでも綺麗になった姿を見て欲しかったから。そう、何もせずに、綺麗なままでいられる人なんて、もはや魔法とかズルい手を使わなければ無理な話!

「マカロン様さえよければ私、毎日こちらに通わせて頂きます! 付き合います、ダイエット! 一人では挫折しそうになっても二人なら協力して続けられるかもしれませんでしょう?!」

「ショ、ショコラさえよければ、僕はありがたいし嬉しいけれど……!」

「わかりました! 一緒に頑張りましょう、マカロン様!」

「ショコラ……! 君って人は……こんな身体になった僕を見捨てず、寧ろそう言ってくれるなんて……!」

「マカロン様だからですわ。だって私たち、将来夫婦になるんですもの」

「うぅっ……ありがとう、ショコラ……!」

 お互い手をギュッと強く握りしめ合って大きく頷く。

「では紙とペンをお借りしても?」

「え? ああ、うん、どうぞ」

「ありがとうございます」

 マカロン様から紙とペンをお借りして、サラサラと淀みなく書いていく。まずは説明から。文字に起こしたほうがわかりやすいだろうしと今後のメニューを書いていく。

「腹筋背筋側筋腕立て伏せにスクワット。まずはこれをできるように致しましょう」

「……え?! い、いきなりそれを全部……?!」

「いきなり全部は無理ですので、毎日少量ずつで。慣れたら量を増やしましょう」

「走ったりはしなくてもいいのかい?」

「まずはジョギングよりもウォーキングから始めましょう。いきなり走ると今のマカロン様だと膝などの関節に負担がかかり、痛めてしまいますわ」

「なるほど……」

「それと、肝心の食事も改善致しましょう」

 ここは執事さんも一緒に聞いてもらったほうがいいかもしれない。マカロン様に呼んでもらえるようにお願いすれば、すぐに執事さんを呼び出してくれた。一礼して入ってきた執事さんにはマカロン様の隣に座ってもらう。

「食事制限はしなくていいです」

「えっ? でも食事制限したほうが早く痩せれるんじゃ……」

「無理なダイエットは身体にも負担がかかります。それに食事制限をして急速に痩せたとしても、大体がリバウンドしてしまうんです。おすすめはできません。その代わり」

 先程の筋トレメニューを書いた紙とはまた別の紙に、色々と書き込んでいく。

「バランスの取れた食事をしてください。お肉も食べていいですが、脂肪部分の少ない赤みの部分を。糖質脂質を抑えてその代わりタンパク質を取ってください」

「えっと、痩せれる薬があると聞いたこともあるんだけど」

「それは絶対によしてくださいね?! そんな都合のいい薬なんてないんです! それは薬ではなく、もはや毒です! 決して! 飲まないように!!」

「は、はい!」

「あとは、今のマカロン様にはこれが一番辛いことだと思いますが……お夜食は絶対食べては駄目です。いいですね?」

「う、うん……頑張るよ……」

 けれどあまりダイエット感がないね、というマカロン様の言葉にふむとペンを口元に当てる。

「そうですわね、言い方を変えましょう。ダイエットではなく『健康的な身体作り』という風に。やろうとしていることはまさにそれですので」

 今は病はなくとも、今の体形のままでは将来何かしらの病にかかる確率が高くなってしまう。マカロン様が長生きできるように、ここは『健康的な身体作り』をしなければ。私が今言ったことを執事さんもしっかりとメモしてくれて、シェフに早速相談しますと部屋から出て行った。

「では早速明日から頑張りましょう? 私、明日もしっかりとこちらに来ますね」

「本当にありがとう、ショコラ」

「あ! マカロン様、動きやすい服装の準備もお願い致しますね!」

「わ、わかった……!」

 そうして私たちの戦いが始まった。


 翌日早速マカロン様のお屋敷に行って、まず朝食は何を食べたかの確認をした。昨日言っていた通りしっかりと野菜多めのバランスの取れた食事だったらしく、マカロン様がお腹を押さえて切なげな顔をしていた。多分、こってりしたものを食べたかったのね。でもここは我慢してもらわないと。

「ではマカロン様、歩きに行きましょう。疲れたら言ってくださいね?」

 無理だけはしないように、とビシっと忠告してマカロン様もしっかりと頷いた。最初は歩くだけでも辛いだろうから、なるべく日差しがあってすぐに休憩できる場所を。けれど予想した通り、五分ともしない内にマカロン様の息が上がった。

「だ、大丈夫ですの? マカロン様……」

「ひぃっ、ふぅっ、ショコラが手伝ってくれてるのに、こんなところで音を上げるわけには……!」

「無茶だけはしては駄目ですからね?!」

「も、もちろん……はぁ、はぁ、もう少しだけ、歩こう……はぁっ」

「もう少しだけですよ……?」

 その日は頑張って十分程度歩いて、軽く筋トレをしようとしたけれどびっくりしたのが腹筋が一度もできなかったこと。多分これもお腹に付いているお肉が邪魔をしてしまっているから。一回もできない自分に落ち込んで目に涙を浮かべているマカロン様を、私も必死に元気付けさせた。

 そうして毎日毎日徐々に、劇的な変化はあまりなくちょこっとずつ歩ける距離が伸びたり筋トレが出来る回数が増えたりと、マカロン様は日々頑張っていた。

 んだけれど。それにしては……なんだか、痩せるペースが予定よりも遅い気がする。私と一緒にいるときはしっかりしているようだから、きっとそれ以外。考えられることは一つ。

「マカロン様、もしかしてお夜食食べてません?」

 背筋を鍛えているとき、足を押さえながらそう聞いてみた。そしたら面白いほどそれはもうギクッとマカロン様の身体は跳ねた。

「寝る前の食事は駄目ですよ……あとは休むだけで、取ったエネルギーを消費することがないんですから……」

「ぼ、僕もそれはわかっているんだ……でもどうしても、た、食べちゃって……」

「ふむ……」

 休もうとしているところ、起きて厨房に移動して食べているということならば。マカロン様の足を押さえている手にぎゅぅっと力を入れてにっこりと笑顔を浮かべる。

「ならば、もう少し追い込みましょうか」

「へっ?! で、でも無理をせずにってっ……!」

「大丈夫です、多少ですから。ね? 多少ですから」

「こ、こわい……」

 ようはベッドの上から起き上がれなくすればいいだけの話。疲れきった身体を起こすなんてとても難しいことだから。そうと決まれば、筋トレの数も歩く距離も伸ばしてあげないと!

 そうして頑張ったその日、マカロン様は夜中にベッドから起き上がることができず気絶するように眠ってしまったとのこと。ちなみに翌日はしっかりと筋肉痛になっていた。

「今日は軽めにしましょう。筋肉痛とは筋に軽い損傷が起きたことですから、それを修復しなければいけません」

「や、休みということ?」

「でも多少傷めつけてもいいので、だから軽めです!」

「い、傷めつける……」

 お休みは体調を大きく崩したときにしましょうね、とにっこり笑顔で告げれば涙目になりながらもマカロン様は頷いてくれた。


 徹底的な食事の管理に適度な運動に十分な睡眠、これだけを確実に守ってもらって三ヶ月は経った。途中なかなか痩せなくなった、としょぼんとしているマカロン様に「それは脂肪ではなく筋肉の重みです」と説明もした。

 最初歩くだけでもはぁはぁ言っていたマカロン様は今は身軽に軽快に走っている。一緒に走っていた私もだいぶ追いかけるのが大変になってきた。夜食を食べることもなくなったようだし、一回も腹筋ができなかったお腹もすっきりしている。なんなら私が考えたメニューだけではなく、ここ最近騎士の人たちと一緒に鍛錬しているらしい。

「どうだろうショコラ、僕もだいぶ痩せたんじゃないかな?」

「もう、完璧です! リバウンドの心配もなさそうですし、でもこれは継続しなければ意味がありませんからね?」

「もちろんわかっているさ。これでちょっとは、君の隣を歩いても恥ずかしくはないかな……?」

「寧ろずっと一緒に歩きましょ?」

「……! そうだね!」

 確認をお願いされて一度お腹を見させてもらったけれど、しっかりと六つに割れていた。あんなにもキューピーちゃんのようにふっくらとしたお腹が、こんなにも! と感動したあまりに触ってしまったけれど。でもマカロン様も嬉しそうな顔をしていたからお互いにっこにこだった。

 全体的な基礎代謝が上がったことにより太りやすい体形からしっかりと筋肉がキープできる体形に変わったようだし、体調を崩しやすかったけれどそれも改善されたと喜んでいた。肌荒れが減ったことに「びっくりだよ!」と言っていたけれど、それも栄養バランスがしっかり取れた食事のおかげ。

「逆になぜあんなにも太っていたのか不思議なぐらいさ」

「医師の方は言っていたんでしょう? 心の問題だと。私、その原因がわかったような気がします」

「そうなのかい?」

「はい――きっとマカロン様は、『真面目すぎた』のです」

 父の跡をしっかりと継がなければ、民たちのために何でも完璧にこなさなければ。みんなもきっとそれを望んでいる、次期領主となるならばそうでなければ。きっとそう思ってずっと自分を追い詰めていたに違いない。

 だってこうして健康的な身体作りを始めてから、マカロン様は一度も泣き言も言わなかったしサボろうともしなかった。常に全力でいつでも向き合っていた。

 でもそうまで自分を追い詰めて不安になってしまって、自暴自棄になって。そして体形の変化に気付いてまた自分を責めて追い詰める。マカロン様が最初に言っていた悪循環がまさにそのことだった。

「私と再会する前まで、部屋に籠もりっぱなしではありませんでしたか?」

「……籠もっていたね、ひたすら机に向かってた」

「きっと気分転換ができていなかったのも原因だと思います。今は適度に運動して外にも出ているので、それで気分転換ができているはずです」

「確かに、そうだね」

 隣を歩いていたマカロン様がギュッと私の手を掴む。最初はあんなに膨よかでふにふにしていた手が、剣を握るようになって節くれ立って厚くしっかりとしたものになっている。少し歩いただけで息切れするなんてこともない。なんなら今ダッシュしてもケロッとしてる。

「ありがとうショコラ。君がいてくれたから僕は途中で諦めることなく、頑張ることができたよ。君が最初に言っていた通り、二人だからこそ続けてこられたんだ」

「いいえ、私はお手伝いをしただけ。マカロン様が投げ出さずに頑張った結果です」

「ショコラ……」

 スッと手をすくい上げられ甲にチュッと唇が降ってきた。流石はマカロン様、小さい頃からこんなスマートなところは何一つ変わっていない。相変わらず絵本から出てきた、私の王子様。

「ショコラ、これからもずっと僕の傍にいてほしい。君がいれば、僕はなんだってできる」

「もちろんです、マカロン様……あなた様がまた丸くなられても、私が絶対にすっきり健康的な身体にしてあげさせます」

「ははっ、それはとても心強い」


 それからマカロン様が膨よかになることはなかった。しっかりとした食事の管理に適度な運動十分な睡眠、それを徹底した彼はその肉体を常にキープした。領主になってからもマカロン様の服の上からでもわかる肉体美に誰もが「ほぉ……」と息をつき、領内ではちょっとした健康ブームが巻き起こった。

 ただ体形をキープしているマカロン様は、それはとてもとっても! 女性人気が出てしまって! 私という妻がいるというのに言い寄る女性が減らないったら減らない! いくら牽制してもマカロン様の根が優しすぎて、そこを付け込まれそうになってしまう。そのせいでマカロン様のピンチに駆けつけるべくひたすら走っていた私のダッシュ力は上がった。爆走妃なんて異名も手に入れてしまった。

 でもいくら綺麗な女性が言い寄ろうとも、マカロン様は決して私を裏切ることをしなかった。言い寄られても、付け込まれそうになっても「僕にはショコラがいるから」と絶対に私を選んでくれた。なんて素敵な旦那様、なんて自慢な旦那様。

 一緒にいると、その肉体美に私も惚れぼれすることが多くなった。膨よかな体形から健康的な身体に、をモットーに頑張っていたあの頃だけれど真面目なマカロン様はそれから更に身体を絞る、ということを目標に変えたらしい。だから領主にも関わらず、マカロン様の肉体はまるで騎士のようになっていた。

「でもこうなったきっかけはショコラのおかげだよ? 君は太っていた僕を見ても何一つ嫌な顔をしなかった。あの時、僕がどれほど嬉しかったことか」

「だってマカロン様の心根は変わっていませんでしたもの。優しくて、あたたかな人」

「優しいのは君だよ、ショコラ」

 広がる私の髪を一つすくって、チュッと口付けを落とす。ふわふわとした中やっぱりマカロン様はあたたかい。政略結婚だったことなんて私たちはもうすっかり忘れてしまっている。だって私たちにとってこれは『恋愛結婚』だったのだから。

「実はね、最近もっと身体を鍛えている理由なんだけど……」

「はい?」

「その、ショコラがうっとりとした顔で僕を見てくるから、それが嬉しくて」

「まぁ! 私顔に出してました?」

「とってもね! でもその顔が可愛いから隠さなくていいんだよ?」

「それならば隠しません」

 でも、とギュッとたくましい身体に抱きつく。マカロン様は私のために身体を鍛えてくれている。というのであれば、私もマカロン様ばかりに努力させるわけにもいかない。

「私も、あなた様がいつでも見惚れるぐらい美しくいなければなりませんね」

「……それは困るなぁ」

「え?! なぜ?!」

「それだと、僕以外の人も君に見惚れてしまう」

 だからそこそこにね? とウインクするマカロン様にクスクスと笑みをこぼす。言わずもがな、今の私たちは周りから見たらただの『惚気』。でもいいじゃない、だって私たち夫婦でお互いがお互いのこと大好きなのだからいくらでも惚気たって。

「でも私、今のあなた様も膨よかなあなた様も、どちらも愛していますわ」

 膨よかになったのは驚いたけれど、でも健康面を考えるとあまりいいとは思えなくて。民からの視線、という理由もあったけれど長生きしてもらいたくて、だからダイエットを提案した。

 だって好きな人と少しでも長く一緒にいたいもの。

「ありがとう、ショコラ」

 ギュッと私の身体を抱きしめる身体は大きくて、腕の中にすっぽりと収めてしまう。それが嬉しくて私もマカロン様の腰に腕を回して、二人の距離をゼロにするためにキュッと抱きついた。

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