第6話「七色機士団結団式典」

 全ウエストランド円卓帝国の市民に見えるほど高高度の空に七色のスモークが引かれ七色機士団レインボーナイトコーアの巨人機士、ロケットナイトがウエストランド円卓帝国全土を横断する。


 まずアイリスの旗を掲げ肩に緑色のラインの入ったジャン・フラッグ卿の重装甲巨人機、ロケットナイトRK-5C[ヘビー・パラディン(グリーン)]を中心に左右に青色の肩ラインのネロ・ロームルス卿の四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-6A[サジタリウス(ブルー)]とマリー・ウェストランド皇后を乗せた黄色の肩ラインのヘラクレス・トゥエルブ卿のロケットナイトRK-6BM[マリー・サジタリウス(イエロー)]、更に左右に藍色の肩ラインのジークフリート・ドラゴンスレイヤー卿と橙色の肩ラインのシャルル・ガンレイピア卿、おおそとを紫色の肩ラインのモードレッド・M・セイクリット卿、赤色の肩ラインのガラハッド・G・L・セイクリットソード卿の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(インディゴ/オレンジ/パープル/レッド)]がV字編隊をくみウェストヨーロッパ円卓帝国全国民に新型巨人機と新機士団、七色機士団レインボーナイトコーアの勇姿を示していた。


「何とか艤装ぎそうが間に合ったなガラハッド」


「式典ギリギリでしたね兄さん」


 魔法念話通信、モードレッド・M・セイクリットソード卿とガラハッド・G・L・セイクリットソード卿は互いのコクピットないで会話する、二人の巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(パープル/レッド)]は機体と兵装開発をしていた巨人機開発実験団レオナルド・D・マイスター団長の仕事がマリー・ウエストランドのミッドランド王国首長国連邦の遠征のせいで兵装開発が遅れ、式典ギリギリになってようやく受領できた有り様だった。


「何とかだが、いい感じだよガラハッド」

 モードレッド・M・セイクリットソード卿は巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン(パープル)]の巨人機兵装、金の聖剣、平和の剣[クラレント]の写し身剣、ロケットナイトウェポンRKW-5-MSSP-Cモードレッド・M・セイクリッドソード卿スペシャル[タイタン・クラレント]と巨人機兵装、紫十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(パープルクロス)]を誇らしく掲げた。


「僕もだよ兄さん」

 ガラハッド・G・L・セイクリットソード卿もその巨人機、ロケットナイトRK-5[パラディン(レッド)]の巨人機兵装、銀の聖剣、破滅の剣[ベイリン]の写し身剣、巨人機兵装、ロケットナイトウェポンRKW-5-JFSP-Bガラハッド・G・L・セイクリットソード卿スペシャル[タイタン・ベイリン]と巨人機兵装、赤十字の大型盾、ロケットナイトウェポンRKW-5-LKCSP-RLSレインボーナイトコーアスペシャル[レインボー・ラージシールド(レッドクロス)]を見つめ兄との関係が上手く言っていると思いとても嬉しい。


「壮観ですねルイ・ウエストランド皇帝陛下」


 真っ黒なマジックローブを身にまとい細身で大柄の男はそう言った、銀色の長い髪が頭に被ったフードからこぼれる、ガリア宮殿にある円卓会議の式典広場で諸侯達と空を見上げたその男の目は遥か遠い未来を見つめていた。


「アンブローズ・ウィザード導師、やはりこれはやりすぎでは無いか?」


 式典を開催した筈のルイ・ウエストランド円卓帝国ルイ・ウェストランド皇帝は演出がすぎると苦い顔をしている。


「これでいいのですよ円卓の皇帝陛下、この七機士は真なる支配者を生み出すのに必要不可欠なのです」

 アンブローズ・ウィザード導師は強い意思で計画を遂行する。


「支配者などこの世界に必要は……」

 ルイ・ウエストランド皇帝はそもそも帝位を残す事にも反対した、円卓による王たちの話し合いと合意が出来ればある程度上手く行く筈なのだ。


「優しい皇帝陛下、それでは世界を救えないのです私を信じて下さい、この円卓の導き手、大魔導師にして予言者アンブローズ・ウィザードを」

 アンブローズ・ウィザード導師は深く頭をさげる。


 アンブローズ・ウィザードは思う。


 確かに王による全会一致の話し合いが出来るのならそれも良かった、しかし人の利害が一致しないことなどいくらでもある、今ある共和制、つまりは王による皇帝選挙で絶対君主を生み出し、教会がそれを承認するこの制度は今この世界この時代においての最善手であった、がアンブローズ・ウィザード導師は更に民衆による王の選挙もしくは民主代表の登場、更にその先まで詠んでいた。


 『予言の日までに全ての人類をまとめなければ…………』



「ルイ皇帝陛下万歳!!」


「マリー皇后陛下万歳!!」


「マリー皇后陛下御生誕日に祝福を!!」


「ルイ皇帝陛下に栄光を!!」


「マリー皇后陛下に栄光を!!」


「ウエストランド円卓帝国に栄光を!!」


「我等ウエストランド円卓帝国神民に栄光を!!!!」



 七色機士団レインボーナイトコーアの結団式はマリー・ウエストランド皇后の誕生日に行われた、それは派手に外遊を行うマリー・ウエストランド皇后の警護と式典用とされたが外国にとってはマリー・ウエストランドの誕生日を祝うものでも、たんなる式典機士団結成を祝うものでも無く、明らかにウエストランド円卓帝国の力を顕示する為の軍事パレードにすぎず、そこに存在する新型巨人機は脅威そのものでしかなかった。


「これではマリーがやりだまにあげられてしまうよ……」

 ルイ・ウエストランド皇帝は毎度タブロイド紙に叩かれるマリー・ウエストランド皇后がいたたまれなかった。


「確かにひどいですね、マリー皇后は贅沢三昧マリー皇后はバカンス三昧、マリー皇后国費を浪費、赤字国債はマリー皇后の責任、マリー皇后にスパイ疑惑、四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-4B[ケンタウルス]輸出に疑問の声、クレオパトラ・ミッドランド女王と内通か?! ですか……」

 アンブローズ・ウィザード導師はルイ・ウエストランド皇帝の手元のテーブルにあったタブロイド紙を手に取る。


「今やガリア宮殿は円卓会議の議場とルイ・ウェストランド皇帝の政務官邸だし、マリーの住むガリア宮殿の小離宮、プチ・ブリテンはガリア宮殿を円卓会議と官邸に提供した為、改装して使っているだけだ、セークリッドソード聖剣機士兄弟も故郷の田舎の様だと喜んでると聞く」

 ルイ・ウエストランド皇帝はそう呟く……。


「ええ、赤字国債は新大陸ニューランドの支配権をめぐる極東連合共和国に対する軍事行動と新大陸ニューランドの合同投資の遅滞によるものですから、マリー・ウエストランド皇后陛下は関係ありませんね」

 アンブローズ・ウィザード導師とて人の悪意に思う所は在るが、民衆は信じたい物を事実としてしまう心理すら理解していたのでルイ・ウエストランド皇帝に苦笑いを見せて共感の念を示す他は無かった。


「クレオパトラ・ミッドランド女王との件とて外交努力だ……」

 アンブローズ・ウィザード導師の苦笑いを見てどうしようも無いのだと悟ったルイ・ウエストランド皇帝は静かな口調ではあったがその怒りで座っていた式典用の移動帝座のひじ掛けを強く掴む……が高価なその帝座に使われた税の重みを感じて怒りをそっとしまった。


「スパイ疑惑は流石にひどいですね、実際マリー・ウエストランド皇后陛下がミッドランドのクレオパトラ・ミッドランド女王陛下を通じて極東連合共和国の皇后、唐玉環とうぎょくかん皇后陛下と良好な関係が在るから決定的な戦争を回避出来ているのですから」

 アンブローズ・ウィザード導師はルイ・ウエストランド皇帝の有り様を見るにつけこの人は優しい皇帝だと思わずにはいられなかったが自分がこの皇帝にさせようとしている事で更にこの優しい皇帝を傷つけると思うと、もっともひどいのはタブロイド紙などではなく自分なのではないかと思えた。

 

「しかしロケットナイト、[ケンタウルス]は高くついたな……」

 四本足ロケット巨人機、ロケットナイトRK-4B[ケンタウロス]をミッドランド王国首長国連邦に贈った件は技術の流出および経済面でマイナスとの評価が円卓会議でも体制だった、皇帝は帝座に沈みこみ足元を見つめる。


「ハハ、あれは百パーセントネロ・ロームルス卿が悪いですね、ただそのお陰でミッドランド王国首長国連邦に我々陣営の巨人機を渡す事が出来た、これによりミッドランド王国首長国連邦の兵器体系がウエストランド円卓帝国仕様の物に移って行くかもしれません、ある意味成果です」

 何故かは知らないがネロ・ロームルス卿の話になると言葉が楽観的になる。


「ネロ・ロームルス卿はわざとだと思うかアンブローズ・ウィザード導師」

 ルイ・ウエストランド皇帝は皮肉を込めて広角を「ギュッ」と上げ笑った。


「あの方は元来奔放ほんぽうな方ですが、政治と戦争の空気が読める方なのでなんとも」

 アンブローズ・ウィザード導師は肩をすぼませ神のみぞ知るといったふうだ。


「アンブローズ・ウィザード導師、そなた、七色機士団に放り込めば何とかなると言ったではないか?」

 少し軽めの敵意がアンブローズ・ウィザード導師へと向かう。


「何とかなるかも知れません、と希望をのべたのですがなりませんでしたね(笑)」

 アンブローズ・ウィザード導師は両手を上げて降伏の意を示す。


「ならなかったな……(笑)」

 ルイ・ウエストランド皇帝は愚痴を聞いてもらい気が晴れたのか背もたれに体重をかけ天をあおぎ、その空の先にある七色のロケット雲を見つめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る