第14話

【 鮭とかえる 】8

◎ 第8話 危険は続く

たくさんの鮭が川を上っていきます。

生まれた川から海に行き、また生まれた川に帰ってきます。

それは帰省本能と呼ばれるもの。

これは故郷の川の匂いを覚えているからと言われています。

鮭くんとかえるくん、そして鮭ちゃんもまた、故郷を目指して川を上っていきます。

鮭くんの背中には、かえるくん。

頭と同じくらい大きな鈴をぶら下げています。

隣には鮭ちゃんも一緒です。

河口ではカラスに襲われました。

でも危険はまだ終わりません。

鮭くんの背中に乗り、水面から上にいるかえるくんです。

突然。

ビュン!

水面に上にいるかえるくん

その空気の振動にただならぬ危険を感じます


空気を切り裂いて岸の方から何かが飛んできました。


ボーン!


そして何かが着水。

今度はそれがすごい勢いで岸の方に戻っていきます。


ガシッ!


その何かが。

まわりで泳ぐ鮭くんの仲間の身体に当たったようです。

身をくねらせ、よじらせて何かに抵抗している鮭くんの仲間。

たいへんです。

しかし。

抵抗もあまり効果がないようです。

何かに当たった鮭は、その力に引っ張られ、あっという間に陸に上げられてしまいました。

何かの正体は釣針。

それは鮭を釣るために人間が投げる釣針です。

違法とされる漁です。

ですが、そんなことは鮭くんにもかえるくんにもわかりません。

ただ、それがとっても危険なことは、本能が教えてくれます。

だって釣針に当たった鮭はもう戻らないんですから。

ビュン!

鋼鉄の釣り針が飛んできます。

ボーン!

着水

ガシッ!

そして釣り針が触れた途端に、針がからだに食い込んで、あとはもう陸に上げられていく鮭の仲間たち。


何匹もの鮭が姿を消していきます。


鮭くんと鮭ちゃんもまたそんな危険にさらされます。

「鮭ちゃん、鮭くんに身体をぴったりくっつけて!急いで!」


かえるくんが叫びます。


「えっ、ええ!」


かえるくんの叫びに戸惑いながらも言う通りにする鮭ちゃんです。

ビュン!

ボーン!

ガシッ!

何匹もの鮭が姿を消していきます。

頭上を通過する釣針と戻ってくる釣針。

鮭くんの背中でかえるくんが指示を出します。

「鮭くん、止まって!」

「鮭くん急いで前へ!」

かえるくんの目がぐるぐる回って、迫ってくる釣針の位置を判断します。

そして鮭くんに指示を出します。

「鮭くん、右だよ」

「鮭くん、左だよ」

かえるくんの声に合わせて釣針を避ける鮭くん。

生まれたときから一緒にいる鮭くんとかえるくんです。

呼吸もぴったり。

何度も訪れる危機を避け続けます。


が、ついに。

ビュン!ボーン!

ビュン!ボーン!

岸から飛んでくる釣針と、戻ってくる釣針。

同時に複数の釣針の軌跡が重なってしまいました。

止まっても、前に行っても。

左右、そのどちらに逃げても。

逃げきれなさそうです。

このままではどちらかの釣針に当たってしまいます。

「鮭くん、上だよ!」

「鮭ちゃんも付いてきて!」

「うん、わかったよ、かえるくん」

「わかったわ、かえるくん」

水面すれすれに浮き上がる鮭くんと鮭ちゃん。

一瞬。

釣針が鮭くんの身体をかすめます。

すんでのところで。

戻ってくる釣針を身体の下に通過させます。

ギリギリかわせました。

そしてすかさず。

「鮭くん、右!」

しかしここで。

ビュンビュン!

岸からすごい勢いで釣針がやってきました。

今度はもう避けられそうにありません。

今度こそ絶体絶命です。

「危ない!」


【 鮭とかえる 】8


◎  第8話  危険は続く〜秋


たくさんの鮭が川を上っていきます。

生まれた川から海に行き、また生まれた川に帰ってきます。

それは帰省本能と呼ばれるもの。

これは故郷の川の匂いを覚えているからと言われています。


鮭くんとかえるくん、そして鮭ちゃんもまた。

故郷を目指して川を上っていきます。


鮭くんの背中には、かえるくん。

頭と同じくらい大きな鈴をぶら下げています。

隣には鮭ちゃんも一緒です。


河口ではカラスに襲われました。

でも危険はまだ終わりません。



鮭くんの背中に乗り、水面から上にいるかえるくんです。

突然。


ビュン!


空気を切り裂いて岸の方から何かが飛んできました。


ボーン!


そして何かが着水。

今度はそれがすごい勢いで岸の方に戻っていきます。


ガシッ!


その何かが鮭くんの仲間の身体に当たったようです。

身をくねらせ、よじらせて何かに抵抗している鮭くんの仲間。

たいへんです。

しかし。

抵抗もあまり効果がないようです。

何かに当たった鮭は、あっという間に陸に上げられてしまいました。


何かの正体は釣針。


それは鮭を釣るために人間が投げる釣針です。

ですが、そんなことは鮭くんにもかえるくんにもわかりません。

ただ、それがとっても危険なことは、本能が教えてくれます。

だって釣られた鮭はもう戻らないんですから。


ビュン!


ボーン!


ガシッ!


何匹もの鮭が姿を消していきます。


鮭くんと鮭ちゃんもまたそんな危険にさらされます。


「鮭ちゃん、鮭くんに身体をぴったりくっつけて!急いで!」


かえるくんが叫びます。


「えっ?ええ!」


かえるくんの叫びに戸惑いながらも言う通りにする鮭ちゃんです。


ビュン!


ボーン!


ガシッ!


何匹もの鮭が姿を消していきます。


頭上を通過する釣針と戻ってくる釣針。

鮭くんの背中でかえるくんが指示を出します。


「鮭くん、止まって!」


「鮭くん急いで前へ!」


かえるくんの目がぐるぐる回って、迫ってくる釣針の位置を判断して、鮭くんに指示を出します。


「鮭くん、右だよ」


「鮭くん、左だよ」


かえるくんの声に合わせて釣針を避ける鮭くん。

生まれたときから一緒にいる鮭くんとかえるくんです。

呼吸もぴったり。

何度も訪れる危機を避け続けます。


が、ついに。


ビュン!ボーン!


ビュン!ボーン!


岸から飛んでくる釣針と、戻ってくる釣針。

同時に複数の釣針の軌跡が重なってしまいました。


止まっても、前に行っても。


左右、そのどちらに逃げても逃げきれなさそうです。

このままではどれかの釣針に当たってしまいます。


「鮭くん、上だよ!」


「鮭ちゃんも付いてきて!」


「うん、わかったよ、かえるくん」


「わかったわ、かえるくん」


水面に浮き上がる鮭くんと鮭ちゃん。

一瞬。

釣針が鮭くんの身体をかすめます。

すんでのところで。

戻ってくる釣針を身体の下に通過させます。


そしてすかさず。


「鮭くん、右!」


しかしここで。


ビュンビュン。


岸からすごい勢いで釣針がやってきました。

これはもう避けられそうにありません。


今度こそ絶体絶命です。


「危ない!」


飛んでくる釣針を鈴を掲げてふり払ったかえるくん。


ガーン。


鈴に何かが激突した、鈍い金属音がしました。



しばらくして。


釣針が飛んでくる危険は去りました。

鮭くんと鮭ちゃんは無事です。


「かえるくんのおかげだよ」


「かえるくんありがとう」


鮭くんが目線を頭上の鮭くんに向けました。


「ん?」


鮭くんの背中になにやら赤いものが滴っています。


それは血でした。


かえるくんの目から流れる、かえるくんの血でした。


「かえるくん、目が・・・!」


「かえるくん、目が・・・!」


鮭くんと鮭ちゃんが泣きながらかえるくんに寄り添います。

飛んでくるつり針を鈴を掲げて防いだとき。

防ぎきれなかったつり針の鋭い針先が、かえるくんの片目をかすめていったのです。


傷ついたかえるくんの片目は見えなくなってしまいました。


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