調査結果 その5

1.はじめに


 五つ目の怪異は、「山の王なる者」。説明によると、それに認められなければ姿さえも見られないらしい。一体何者なのだろうか。山に住む神様のような存在か。また、認められるとはどういうことなのか。


2.試練


 幸運にも私は出会うことができた。なぜか認められたようだ。図書館で呼んだ本では、七つ星家の者にしか姿を見せないという噂が書かれていた。私がそうだから、接触できたのだろうか。場所は、登山道。特になにかをしたわけではなく、普通に登山をしていたところ遭遇した。その姿は、原始人のようで全身に長い毛が生えていた。さらに、山の王には、言葉が通じる。いくつかの日本語を話しており、こちらの言葉も通じているようだった。少なくとも動物ではないようだ。しかし、こちらの話を聞く気はあまりなく、言動から察するにあくまで彼は私を試そうとしていることがわかる。

 最初に連れて行かれたのは、洞窟だ。どうやらここは彼の住居のようで、私はここでもてなしを受けた。石の椅子に座り、なにか葉っぱをすりつぶしたものを飲まされた。これがなんであるかは、未だに不明である。後に詳しく調べたい。

 そして、次にある谷に連れて行かれた。幅十メートル程で、はるか下には川が流れていた。そこにかかっている太い丸太の上を私は渡らされたのだ。命綱はなしでだ。いくら太いとは言っても、不安定な丸太の上だ。深い谷底の川が恐怖を煽る。さらに、あたりには障害物がなく、突風が吹き付けてくる。私は必死でバランスを保った。そして、もう少しで渡り終えるといったとき、目の前に一匹の蛇が現れた。それは私の足を伝って、首まで登ってきた。しかし、払いのける余裕は私にはなく、そのまま蛇と一緒に向こうまで渡ることになった。最終的に私は渡り切ることができたが、その直後にまた別の場所に連れて行かれることになる。

 次に私は、山の山頂に着く。ここで、山の王がなにかを呼ぶ声を発した。しばらくすると、野生の熊がやってきた。その熊は私は襲わずに、山の王の説明を聞き、私と勝負をすることになった。その勝負はいわゆる相撲のようなもので、決められた円形の土俵に私と熊が入り、相手を土俵の外に出せば勝利というルールの下に行われた。相手の熊は私よりも一回り大きく、その爪は鋭い。もう一つのルールとして、相手を傷つけてはいけないと言われた。そのおかげで、怪我の心配はなかったが恐ろしく感じた。山の王の合図で勝負が始まると、まず私は熊に掴みかかった。そのまま土俵の外に押し出そうとしたのだが、熊の体重が重く、全く動かなかった。その間に、熊は私をものすごい力で押していく。踏ん張っていても、それをものともせずに動かしてくるのだ。追い詰められた私は、ここで策を考えついた。足を上げるのだ。そうすることで、熊はバランスを崩し、私を掴んだ手を離した。そのすきに私は地面に降り、熊の股下を潜った。そして、熊の背中にタックルした。熊はその勢いで倒れ、土俵の外に出て、私の勝ちとなったのだ。ここで特筆すべきなのは、熊が非常にこちらに友好的なところだろう。そもそもこちらの決めた勝負のルールを守っており、勝負の後も私を襲うことがなかった。ここにはやはり、山の王の不思議な力が関わっている可能性がある。

 最後に、私は山の王からネックレスを受け取った。紐になにかの動物の骨が結ばれている。これは、彼が言うには「証」らしい。私はこれを友好の証だと解釈している。この後私は彼に登山道まで送ってもらい、下山した。


3.おわりに


 彼はいわゆるUMAだと私は考える。ヒマラヤ山脈に雪男が住んでいると言われているように、開封村には山の王がいるのだ。その正体は、遭遇した私でさえ謎が多い。いつの日か、解き明かす者が現れるだろう。それは、きっと七つ星家の者だ。なぜなら、山の王は我々一族の前にしか姿を見せないのだから。

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