第10話 北風系ヤンデレと絶望の宣告

夏凪晴ななは。いつも言っているでしょう?悪いことをしたときは、自分でその罪を告白しなさいって。まさかこれだけのことをしでかしておいて、何が悪かったのかわからない、なんて言うんじゃないでしょうね?」


淡々とした声で告げられたのはそんなセリフ。

名前の呼び捨てが怒りの度合いの一端を如実に表している。


確かにいつも言われている。でも、今回の告白されたことに関しては、本当に僕が悪いのかわからない。


間違ってたらって思うと、怖くて気軽には答えを返せない。

そんな気持ちが表に出たように、「あっ......」とか「えっと......」とかの意味ないフィラーが口をついて出る。


なかなか罪を懺悔しない僕の様子にしびれを切らしたのか、彩咲はまたもう一度大きくため息をつき、「これはもう完全にアウトね」なんて呟いてから、僕の罪を語りあげる。



「わかってるとは思うのだけど、夏凪晴が言わないなら彩咲ささが言ってあげる」


しょうがない、という雰囲気を醸してさらに続ける彩咲。


「彩咲以外の女の子から『告白される』なんて何考えてるの? 彩咲のこと不安にさせるのはそんなに楽しいかしら? 夏凪晴がもっとちゃんと彩咲のこと好きすぎて狂ってしまいそうだって雰囲気を出してれば、他の子が告白しようとするなんてありえなかったはずだよね? つまり、夏凪晴の愛情表現が足りなかったからあの子に告白されるなんてことになったんでしょ? もしかしたら彩咲の知らないところであの子に無駄に愛想を振りまいてたのかしら。だとしたら本当に許せない。この落とし前は、ちゃんとつけてくれるわよね?」



概ね予想通りの罪状。

内心では「それは僕のせいじゃないでしょ」って気持ちがあるし、これ以上どうしろっていうんだって思うけど、ここまで怒り狂った彩咲に口答えなんてできないことは、これまでの経験が告げている。


だから僕は素直に謝罪の言葉だけを述べる。



「はい......すみませんでした。決して彩咲を裏切るつもりではなかったんですけど、僕の配慮が足りませんでした......」


「うん、そうだね。全然配慮が足りないよ。彩咲の彼氏としてありえないレベルだから」



口調は辛辣で強いけど、ひとまず謝罪が受け入れられたのだろうか。

その顔は先程までのような『無』ではなく、唇を尖らせて拗ねたようなものになっていて、少しだけ安心する。



「本当にごめんなさい。どんな罰でも甘んじて受けるよ」


こういうときはきちんと自分から罰を受け入れる台詞を投げておくのが吉。


「そっか。ちゃんと自分から反省する姿勢は偉いね」


ほら、こんな感じでちょっと機嫌が良くなる。僕も彩咲も嬉しい。一石二鳥でしょ。



「でも今回のことは今までとは比べ物にならないくらい最低なことなんだよ?だからお仕置きもしっかりするから。詳細は帰ってから伝えるからね」


彩咲のその言葉を最後に、僕ら2人だけの家に向けて、無言のままの帰路についた。



*****



「そ、それで彩咲。僕は今回どんなお仕置きを受けることになるんでしょうか......」


部屋についてすぐ、いつものように・・・・・・・ベッドに手足と首を鎖で繋がれて、学校で一日蒸らされた彩咲の足を指の間まで一通り舐めつくしたあと、これから自分に課せられる罰則がどんなものなのか、恐る恐る聞いてみた。


実際にやられるのも大概辛いけど、何をされるのか『わからない』ということは更に大きな恐怖を植え付ける。

だから早めに自分の未来を知れるのは、かなり恐怖を和らげる効果がある。


これもここ数年の間に、心と体に刻み込まれた経験則。



「うん、もうなぁくん・・・・へのお仕置きの内容は決めてるよ」


そう言うの彩咲の声はさっきまでより若干優しく聞こえる。

名前の呼び方も、呼び捨てからニックネームに変わっているあたりにもその片鱗が見え隠れする。



やっぱり今回のことは僕が原因じゃないから、そんなに厳しいお仕置きはされない感じなのかな?







そんなふうに油断した自分をぶっ転がしてやりたい。


彩咲に宣告されたお仕置きの内容は、僕を絶望の淵に叩き落とすには十分な内容だった。










「なぁくんはもう二度と学校に行かなくていいよ。明日には退学扱いにしてもらうように取り計らっておくから。これからは一生、おうちで彩咲にペット・・・として飼われる人生を送るんだよ」

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