第16話 希望は儚くも散ってしまう
ヘイル王子がナディア以外の人間に解呪を行わせる選択をした二日後、解呪の行える人間が到着したのだ。本来であれば国に数人しかいないような貴重な人材だが、人柄の良いヘイル王子の頼みならと協力をしてくれる人間の伝手を頼りなんとか彼を王城に招待することに成功した。
「よく来てくれた、感謝する。」
「いえ、私も普段お世話になっている方にヘイル王子の為にどうか助けてくれとお願いされましたので断ることなどできませんよ。ぜひ、私にお任せください。呪いであるならば解呪を行えると思います。」
「助かる。患者の症状がどんどん悪化しているのだ。会ってすぐにで悪いが解呪をお願いできるか?」
ここ数日、原因は分かったものの治療は行えていなかったため、ヘイル王子には焦りが見られていたのだ。もしも、解呪を待っている間にメイドが死んでしまったらと考えると夜も眠れないでいた。
「もちろんです、私はそのために来たのですから。」
解呪を行うためにヘイル王子の案内で例のメイドの元へ向かうとメイドを見た彼は目をしかめる。
「確かに、これは呪いのせいですね。これでは通常の医療魔法を行使しても意味がありません。しかし、ここまでの呪いとなると果たして解呪を行えるかどうか。」
先ほどまでとは発言に差異があるためヘイル王子はそのことに関して指摘を行う。
「なぜだ、先ほどは解呪を出来るといったではないか、何か問題があるのか?」
「はい、呪いというのは極めてまれなもので一般的には余り知られていないのですが、強い、弱いがあります。正直に申しますとここまで強い呪いであると私には解呪できないかもしれません。それでもよろしいのであれば、試してみますが?」
「分かった、失敗しても咎めたりしないと約束しよう。だから試してみてくれないか。」
仮に、解呪できる可能性が限りなく小さかったとしてもその可能性がゼロでなければ試す価値はあるのだ。ヘイル王子も一縷の望みをかけて解呪を依頼するが結果は残酷なものだった。
「はっ、はっ、はっ。こ、これは私には荷が重すぎます。今まで何人もの呪いを解呪してきましたがここまで強力な呪いは見たことがありません。ご期待に沿えず、申し訳ございません。」
解呪師は息を切らしながら苦しそうにし、自らの力が足りないことを王子に謝罪する。大切な部下を救えないことに普段から温厚なはずのヘイル王子もついには取り乱してしまい解呪師の肩を掴み叫んでしまう。
「なぜだ!貴殿は解呪を出来るといったではないか!頼む、大切な部下なのだ、助けてくれ!」
「も、申し訳ございません。正直に申し上げますと、私も優秀な解呪師を多く知っていますが、ここまで強力な呪いですと解呪を行える人間はまずいないかと。それくらいこの呪いは強力で厄介なものということをご理解ください。」
解呪師からそう告げられると自分の力が及ばなく、助けることのできない事実に王子は絶望し、顔をうつ向かせてしまうのであった。
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