第14話 ここから広まるナディアの力

患者たちの解呪をギルド長から任されたナディアは一人、一人のベッドを回り、全員に解呪の魔法をかけていく。ナディアに魔法をかけられたものは先ほどまで苦しんでいたのが嘘のように表情が穏やかになっていくのだ。


その光景を見て先ほど、自分で許可を出していたにもかかわらず、ギルド長の顔は驚きに満ちていた。


「う、嘘だろ。本当に症状が改善されていっている。」


「あれ、ギルド長、私の言うことを信じていなかったんですか?」


「え、あぁ、申し訳ない。先ほどはあまりの衝撃的な発言に思わず許可をしてしまったがまさか本当に解呪ができるとは。」


ギルド長がナディアによって解呪が行われた患者の診察を行っていると先ほどまで介抱を行っていたギルドの職員が彼の元に訪れていく。


彼も、この何日間、不眠不休で介抱をしながら症状の改善に努めていたが一向に成果が上がらず、悩んでいたところ急に患者の容体が改善したのだ。驚くなというほうがおかしいだろう。


「ギルド長!先ほどから一体何が起こっているのですか?そちらの患者さん、明らかに症状が良くなっているように見えるのですが!」


「あぁ、どうやら彼らの症状の原因は病気ではなく呪いだったようだ。彼女が今、患者たちに順番に解呪を行っている。すぐに、みんなよくなるだろう。」


「の、呪いですか!そんなことが原因だったなんて。それにしても、よく呪いを解呪できる方がいましたね。原因が呪いと分かったとしても解呪ができる人間を捜すのも一苦労ですのに。」


「そのとおりだ。まったく、どこが人よりも少しだけ医療魔法に優れているだ。医療魔法も一級品で解呪も行えるなんて、間違いなくトップクラスの医療師だろう。あの家も彼女から縁を切られるなんて馬鹿なことをしたものだ。」


ギルド長はここまで優秀なナディアに縁を切らせた彼女の家族を哀れに思うのであった。




しばらくすると、患者全員にナディアの解呪が行きわたる。


「ギルド長、全員終わりましたよ。たぶんこれで大丈夫だと思います。」


全員に対して解呪を行ったというのに特に疲れてもいないナディアがギルド長に声をかける。ナディアの活躍によってギルドのベッドで寝込んでいた患者は全員救われることになったのだ。


「やったー!助かったぞ!」


「俺たちのやってきたことは無駄じゃなかったんだ!」


「良かった、本当に良かったよ。」


この何日も介抱にあたっていた彼らは疲労を隠せないでいたが、患者たちが助かったことによって自分たちの行ってきたことが報われた気がして感極まってしまう。ナディアの活躍の陰に彼らの活躍があったからこそ、患者は一人も死なずに救われたのだ。


その日、原因不明の症状で徐々に衰弱し、死ぬのを待つだけだった患者たちが一人の治癒師によって救われたことが大々的に広まったのであった。

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