第2話  え?また、かよ

「いえ、先程確認しましたが僕はこの席であっています。そちらが間違ってはいませんか?」


僕はそう言ってから彼女にチケットを見せた。


「本当だ……でも私も、」


そう言って彼女はチケットを僕に見せて来た。確かに僕の隣の席と表記されていた。


いや、それなら彼女が悪いだろう。

だって、僕が座席を取る時に隣の座席は空いていたのだから。


僕がそう思っていると、


「でも、私が座席を選んだ時あなたの座席は空いていましたよ」


何を言っているんだ彼女は。

それは流石に無理があるだろ。

僕が座席を見逃すことはないし、色だって空いていない席は青色で表記されるのだから。

そして、あの時座席は全て空席をします白色だったのだから。


でも、逆に言ったら彼女も見間違いをするはずがない。

もしかしたら、


「機械の故障かもしれないですね。たまにあるんです。表記されないことが。僕はこの映画館の開演直後に来て座席を取っていますし、その時青色の座席はなかったので僕が一番最初のはずです。ですのでそちらが後から取ったことになるかと思います」


「そうですか……じゃー横失礼しますね」


「え?」


どこか他のところに移ってくれるだろうと思っていた僕は驚いて声を出してしまった。


「なんでしょうか」


「い、いえ、なんでもないです」


そうして、僕は知らない美少女が隣で座る中、映画を見ることになった。


今の今まで気にしてなかったが、こう言う美少女でもアニメ映画は見るのだな……まぁ、これは偏見だ。



そう思っていると、予告が終わったのか辺りが暗くなった。

そして、本編が始まったので僕は意識を集中させた。





――――――――――――――――――――


私の名前は青園 柚花あおぞの ゆずは

南美なんび学園、女子校に通う高校1年生です。


私には内緒にしている趣味があります。

それは、1人で映画館に行き映画を見ることです。

ジャンルはホラー系以外ならなんでもいけます。


なぜ、内緒にしているのか。

高校のお友達と映画を見に行った時、そのお友達が1人で映画を見に来ている人に対して、「1人で見に来るってなんかダサいよね」そう言っていたからです。


ですが、この趣味をやめるつもりがなかった私はお友達と遊ぶ日、1人でいる日を作って、趣味に費やせる時間を用意しました。




私がこの趣味を持ったのには理由がありました。


1人でいることが多く、1人で居ることに不便を感じることがなかった私は1人でいること自体が元々の趣味でした。


中学の時もそして今通っている学校も私は女子校に通っていました。

なので、そこまで人間関係などに苦労した事はありません。


ですが私自身、自分の容姿が人よりも優れている自負があります。

元々よかったと言うのもありますが、今の今までケアを怠らずにしてきたからと言うのが一番だと思います。


そのせいか、私が1人で町などに遊びに行くと、異性からよく声をかけられるのです。

私はそれがとても不快でした。

話しかける事自体は否めないとしても、その全てが本当に私と仲良くなりたいなど思っていないからです。

俗に言うナンパをする人なんてそんなものだと思っていますが……それでも私は嫌でした。


ですが、外に出る事自体好きだった私は、外に出ても1人になれる場所を探しました。


そんな時たまたま入った場所が映画館でした。

内容もわからない映画のチケットを買い、案内の通りのスクリーンに入ります。

そして、一通り映画を見終えた時にここだ、と思ったんです。


それから私の趣味は1人でいることから1人で映画館に行くことに変わりました。


ここまでが理由です。





そうして、今日も私は映画館に来ました。


今日来たこの映画館は私の家から徒歩で15分のところにあります。

ちなみに私が通う学校は電車で一駅の場所にあります。


私は最近、映画館にもワンデーパスが存在する事を知りました。

それを知ってからは、時間がある日と土日は、ほとんどワンデーパスを買うようにしています。



今日は日曜日なのでもちろんワンデーパスを買いました。

7時30分に映画館に着いた私は、前から作画が綺麗で見たいな、と思っていたアニメ映画を1本目に選びました。


隣に先着がいないことを確認した上で座席を予約します。

今回予約した座席は私のお気に入りの座席です。

場所は、真ん中の列よりも2段上の列で、左右にこだわりはないのですが、2座席しかない座席のどちらも端っこを取るようにしています。


もう少しだけ上映まで時間があったため、2本目以降の座席も予約しようと思いました。




少し時間を使いすぎてしまいました。

悩んだ末、今日は映画を全部で5回見ることができます。

嬉しいです。嬉しいですが、もうこの時間ぐらいになると少しだけ照明が暗くなってしまいます。

そこで入るのは少しだけ恥ずかしいのです。


急いで、劇場入口に立っているスタッフさんにチケットを見せて3番スクリーンに入りました。


そして……私が座る席の隣に人がいたのです。


あれ?先程見た時には誰も居なかったはず。

目の前まで行った私は、何回かチケットと座席を交互に見て相手に間違えてないか悟らせる事にしました。


すると、相手は見事にチケットを確認しました。


(よかった。これで……)


1人だ、と心の中で思った時、彼は何事もなくチケットをポケットにしまい、そのまま座り続けました。


(え?どう言う事?新手のナンパですか?間違えてたけれども私のことを見てナンパしよう、と考えたのですか??)


私は変なことを考えてしまいました。

そんなことはあるはずがありませんね。

私は一度聞いてみる事にしました。


「あの、座席間違えていませんか?」


すると彼は迷いなく答えました。


「いえ、先程確認しましたが僕はこの席であっています。そちらが間違ってはいませんか?」


間違って居なかった……どう言う事なのだろうか。

彼はチケットを見せてきました。

確かに本当でした。

ですが、これでは私が間違えているみたいになってしまいます。

なので、


「本当だ……でも私も、」


そう言って、私は私が間違えてない事を証明するため、彼にチケットを見せました。


彼はチケットを見てなぜか私が悪い見たいな顔を向けて来ました。

なので言いました。


「でも、私が座席を選んだ時あなたの座席は空いていましたよ」


そう言うと、彼は少し考えた末に言いました。


「機械の故障かもしれないですね。たまにあるんです。表記されないことが。僕はこの映画館の開演直後に来て座席を取っていますし、その時青色の座席はなかったので僕が一番最初のはずです。ですのでそちらが後から取ったことになるかと思います」


なるほど、ならどちらも悪くないですね。


もう映画も始まりそうですし、私は一言言って座る事にしました。


「そうですか……じゃー横失礼しますね」


「え?」


え?とはなんでしょうか……

そんなに私が横に座られるのは嫌なのですかね。

失礼な人です。


「なんでしょうか」


「い、いえ、なんでもないです」



少しすると映画が始まりました。


しかし、彼の反応は今まで会った男子とは少しだけ違うような気がしました。

そのせいか隣に座るのもそこまで嫌だとは思いませんでした。


ですが、ポップコーン。買ってない私からしたら隣でポップコーンコーンを食べられるのは羨ましいです。

それだけは気に入りません。


後で私もポップコーンを買おう、そう決めて映画に集中しました。





―――――――――――――――――――――



2時間後……時刻は9時45分


一本目の映画が終わった。

今は、他の人が退場するまで待っているのだが、


「どうだった?」「んーそこまで面白くなかった」「ね、なんかハズレだったね」


そう会話しているのが耳に入った。

それを聞いた僕はつい言葉を漏らしてしまった。



「「いや、よかっただろ」でしょ」



ん?っと思って横を見たら、隣に座っている彼女も僕と同じ事を思っていたらしく、同じように言葉を漏らしていた。


先程までは頭がおかしい美少女と思っていたので、今の意見を聞いて、少し頭がおかしい美少女に僕の中でランクアップした。


と言うか、隣に人がいる事を僕は完全に忘れていた。


そして僕が出ないと彼女も出れないので、タイミングを見計らって僕も退場する事にした。


ここまでの出来事をこう言うこともあるさ、と言い聞かせて僕は3番スクリーンを後にした。


次の映画は謎解きサスペンス映画。

のんびりみる事にしよう。

先程のポップコーンでお腹はいっぱいなので飲み物だけ頼み10時の案内までにトイレなどを済ませた。


10時になり、案内のアナウンスが流れたので劇場入口に僕は向かった。


今度の劇場は5番スクリーン。先程の3番スクリーンよりも、真ん中の縦列座席が多くなっている。

マイポジションは相変わらず2座席だけなので僕には関係ない。


(よし、先程よりも人は多いが今回こそは1人で見れるな)


劇場内に入り僕がそう思っていると……

見覚えのある姿が入口に見えたような気がした。


(おい……まさか、)


そのまさかだった。

階段を登り僕のところに真っ直ぐ向かって来たのは、前の映画では買っていなかったポップコーンを手にした、先程同様の少し頭のおかしい美少女だった。


そして、目を合わせた僕と彼女は同じ言葉を口にした。



「「はぁ〜また、かよ」ですか」


___________________________________________

2話読んで頂きありがとうございます!


ワンデーパス現実でも存在するみたいで今はやっているかわかりませんがどこかでやっていたら買ったみたいな、と思ったおります。


応援、小説のフォロー、レビュー、早速してくれた読者様ありがとうございます!


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