夏の日の映画館

ざくろ山

プロローグ

 手櫛で髪を簡単に整えたレポーターが、メモを片手にカメラの前でスタンバイを始めた。他の報道陣もいる中、校門前という絶好のポジションに位置取りが出来たのはクルーの手柄である。その努力を無駄にしないためにも、ニュースを簡潔に、わかりやすく伝えるのがレポーターである彼女の仕事だ。照りつける真夏の太陽の下、「3、2、1、スタート」ディレクターの合図で中継が始まる。

「私はいま都内の中学校にきております。今朝9時頃、この中学校に通う複数の生徒と教師が次々と意識を失い病院に運ばれるという事件が発生いたしました。現在、警察と消防で現場検証を行っているところですが、今のところ原因は不明で、事故と事件の両方の可能性があるとのことです。」

 画面わきから差し出された新たな原稿を受け取ると、緊張した顔を一層険しくさせた。

「新たな情報です。病院に搬送されたうちの一名が頭から大量の血を流して意識不明の重体となっています。それ以外の人は外傷がなく開放に向かっているとの情報です。現場周辺では事件発生前後に奇妙な格好をしている不審者が複数人いたとの目撃情報があり、本件との関連性が調べられております。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る