第4話 叫べ勝利の雄叫びを!

 花子ちゃんの必死な叫びは世界中に拡散されて、心動かされた人が何人もいたニャ。

 そしてその中には、ボクらが今までに出会った人達もいたんだニャ。


 ◇◆◇◆



【某高校、不良のたまり場】


「おいお前ら、田舎っぺ魔法少女を応援するぞ!」

「え、だけど姐さん。もんぺ着て鍬持った魔法少女なんて、クソダサいって言ってたんじゃ?」

「バッキャヤロー! ここで応援しない方が、よっぽどダサいっての! 田舎っぺ魔法少女、アタシらの力をくれてやるよ!」



【とある大金持ちの豪邸】


「おーほっほっほ! しょうがない魔法少女ですこと。仕方ありませんわね、わたくしがト・ク・ベ・ツ・に、力を貸してあげますわよ。使用人の皆さん、何をぼさっとしているのですか。あなた達も応援するのです!」

「「はい、かしこまりましたお嬢様!」」



【都内にある住宅。床に魔法陣が書かれた、中二病全開の部屋】


「くっくっく。今こそ左目の封印を解く時。田舎っぺ魔法少女よ、我が暗黒の力を受け取るがよい!」



 ◇◆◇◆



「感じる、感じるだ! 今までオラ達が出会ってきた皆が、力を貸してくれてるだ!」

「出会ったと言うか、魔法少女に勧誘して秒で断られただけニャんだけどね」

「細かいことは気にしなくて良いダス」

「けど凄いニャ。SNSのフォロワーも一気に増えて、信じられないくらい『いいね』が付いてるニャ。ふっふっふ、これで魔法少女グッズも売れるようになったら、万々歳ニャ!」


 そのためにはまず、あの豚の姿をした巨大魔獣をやっつけないといけニャいんだけどね。


「これならいけるだ! うおぉぉぉぉっ!」


 花子ちゃんは手にしていた鍬を振り上げると、えっほえっほと地面を耕していくニャ。

 一見すると、意味不明な行動。ユーチューブのコメントを見ても、『田舎っぺ魔法少女何やってんだ?』って皆言ってるニャ。


 けど当然、これにはちゃんと意味があるニャ。

 耕した地面に種を撒いて、そこに魔法を掛ければ。


悪しきを捕らえし聖なる蔓セイント・プラント!』


 呪文を唱えた途端、地面からニョキニョキと生えたつるが魔獣へと伸びていき、その体を拘束したニャ。

 さすが花子ちゃん、故郷の村では土いじりをしていただけあって、土や植物を使った魔法と相性が良いんだニャ。


 と言うか、今まで鍬を振り回すだけだったのに、ようやく魔法少女っぽい戦いをしてくれた。

 呪文まで唱えてくれて、ボクは嬉しいニャ!


 さあ、魔獣の動きは封じたし、次の攻撃ニャ。

 もう出し惜しみをする気は無いのか、集まったエネルギーの全てを力に変える花子ちゃん。

 そして、一つの必殺武器を誕生させた。全長300メートルはある、巨大な光の鍬を!


「鍬⁉ 感動させといて、やっぱり最後は鍬になっちゃうんだね! しかもこれデカすぎニャ!」

「大丈夫だあ。デカい鍬と言っても魔法の力のおかげか、不思議とそこまで重くわねえ。コイツをあの魔獣の脳天にぶっさせばええんダスな」

「そ、そうニャ。幸い魔獣は、巨大すぎる鍬に驚いて腰を抜かしているニャ。今がチャンスにゃ!」

「分かっただ。せーの!」


 花子ちゃんは両手で、巨大な光の鍬を振り上げる。そして——


約束された勝利の鍬エクワカリバー!」


 振り降ろされた鍬は、魔獣の頭に直撃。「ギャー」という悲鳴を上げながら、跡形も無く消滅していった。

 勝った、勝ったんだニャ!


『オオオオオオォォォォッ!』

『やったー!』

『すごいぞ田舎っぺ魔法少女ー!』


 花子ちゃんの勝利に、世界中の人達が喜びの声を上げているニャ。

 そして一仕事終えた花子ちゃんも、こっちに駆けてくるニャ。


「やったダスニャンコの先生!」

「やったニャ花子ちゃん。ほら、世界中の人達が、花子ちゃんの勝利を喜んでいるニャ!」


 スマホには数えきれないくらいの、喜びとありがとうのメッセージが。

 ダサいダサいと言われ続けた、史上最低人気の魔法少女だった花子ちゃんが、こんなにたくさんの人に祝福されるだニャんて!


「花子ちゃん、まだ終わりじゃないニャ。これからも力を合わせて、頑張っていくニャ!」

「もちろんダス、ニャンコの先生!」


 ボク達は喜びをかみしめながら、ひしと抱き合ったニャ。

 花子ちゃんの抱きしめる力が強すぎて、ボクは危うく潰れちゃうところだったけど、良しとするニャ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る