天川 悠人と休みの予定


「…悠人……怒ってるか?」


 少しの沈黙の後、桜花が小さい声でそう聞いてきた。


「いや別に怒ってはない……なんでだ?」


「射陰先輩と話をしていたろ? …もしかしなくても、私が部活を辞めたことで何か言われたんじゃないか?」


 ……あー


「部活を続けるよう説得してくれ…と、頼まれた。 …断ったけど」


 こんなことで申し訳なさそうにされても…。


「ごめんなさい…迷惑をかけて」


「何で桜花が謝るんだ、別に怒ってないし迷惑じゃない」


「…うん」


 ……怒ってない…なんて言ったが、正直、さっき射陰先輩と話していた時は何故かイライラしていた、何に対して俺はあんなに…。



 俺の人生は幼馴染みの茜を中心としたものだった。 あの異世界グレセアで過ごした茜の居ない日々ですら。


 今まで茜のこと以外は、どうでもいいと思っていた…筈だ。

 だから、俺は自分が何に対してイライラしていたかが分からない。


 お互いに一言も話すことなく時間が過ぎる、夕焼けに照らされ、嫌いではない筈の沈黙が何故かこの時は少し息苦しく感じる。


 何か話さないと…柄にも無いことを考えていると、いつの間にか側まで来ていた茜に声をかけられる。


「ごめんねハル君、桜花ちゃん。 遅くなっちゃっ……て?」


 何か異変でも感じ取ったのか、首を傾げながら不思議そうな表情で、俺と桜花を交互に見る茜。


「ああ、全然大丈夫。 ……茜?」


「うん、どうしたの茜…体調でも悪い?」


「ううん、ちょっと変な感じだけど、二人共何かあった? 」



 こういう時の茜の鋭さって何なんだろか、隠し事とか絶対に出来ないんだよな……サプライズとかも秒でバレるし。

 いや、ちゃんと空気を読んで、気づかないフリはしてくれるんだけど…それはそれで茜の方が挙動不審になるんだよな。


 あの気まずい感じよ…。


「い…いや、何でもn」


「ハル君、嘘は無しね」


 ですよね。


 言えない。 というより、どう言えば良いか分からない。


 答えに困ってると茜がじーっと見つめてくる。 可愛い(可愛い)


「あ、茜……その……えと」


 この何とも言えない空気に負けて桜花が口を開くが、すぐ言葉に詰まる。

 無理をするな。





「うーん…………よし!」


 茜が突然、何かを思い付いたようなリアクションをとる。


 凄く嫌な予感がするんですが…?


「ハル君、今度のお休み何か予定ある?」


「ないけど…」


「桜花ちゃんは?」


 茜さんはご存知の筈ですけど…?


「え…私も無いけど…どうしたの?」


 桜花はさっきからずっとオロオロしている。


「じゃあ3人でお出掛けしない? ハル君前に、桜花ちゃんと一緒に遊びに行こうって言ってたよね?」


 ああ、メッセージアプリで、桜花が三人で出掛けたいって言ってたのを茜に伝えてたっけ。


 …うん?発信者が俺みたいになってる……まあいいけど


「ああ…そうだな、 俺は当然良いよ。 桜花は?」


「うん、私も行きたい」





 こうして次の休みの予定が決まった。


 茜が何か変なことを企んでる気がするけど気のせいだよね…?



 ――――――――――


(桃花視点)


 片付けてたら遅くなっちゃったわ…でも…


 ふふ、クッキー上手く焼けたわ。 悠人達の分もあるし喜んでくれるかしら?


 ……っは?!


 何かハブられて気がするけど気のせいよね…?



 ――――――――――


 精神コマンド『直感』


 変態はやたら感が良い。


















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