第16話 暴露
ミチエの前に座った医者が、ミチエのまぶたと
「うーん。まぶたは糸が取れてますね。
「もう?そんな……」
「まあボトックスなんかは定期的にやるものですよ。
「……あの、切ることはできますか?
「ええ。できますよ。どうぞ、
医者はミチエに見積もりの紙をわたした。
「こんなにするんですか?」
「
「もっと安くならないですか?お願いです。私この顔じゃ、生きていけない」
ミチエはつい泣いてしまった。
医者はあわてて、
「落ち着いてください。
クリニックの手術室の手術台の上に、ミチエが
医者がミチエのまぶたをおさえた。
「
まぶたの裏にちくりと
サングラスをかけた女性が、フラフラと
マサキはその女性を見ると、足をとめ、
「ん?あれは。面白いもん見つけたかも」
と、スマホを取り出した。
音楽室でコントラバスを弾くミチエは、マスクに色のついたメガネをかけていた。
ミチエのところにマサキがやってきた。
「
ミチエは顔を隠すようにうつむいた。
「え。う、うん。こほ、こほ。コンタクトつけてる時間なかった」
「大丈夫か?ほれ。これやる。
マサキは大きなチョコクッキーの包みをミチエに差し出した。
「何これ」
「この前の
「マサキくん彼女いたんだ」
「まあな。見ろよ。超かわいいだろ」
マサキがスマホを見せた。画面に美人の女性とマサキの写真がうつっていた。
「こほ。へえ。かわいいね」
「やっぱ美人はいいぜ。なあ、今食わねえの?」
「え?うん。こほこほ。後で食べるよ」
「今食えよ。マスク外して。賞味期限近いから」
マサキは何かを期待しているように言うので、ミチエは
「あっちで食べる。マスク取って
ミチエは楽器が
マサキがミチエの後ろ姿を見送りながら、すっとスマホを取り出した。
大学のトイレの鏡の前で、ミチエは自分のまぶたや
「大丈夫。おかしくない」
おかしくはない。でも代わりにあまり変わってもいないような気がする。
ただ少し目が大きくなり、少し鼻が細く高くなっただけ。それだけ。美人になったわけではない。
「何で私ってこんなにブスなの?」
いくら
部員たちがグループにわかれ、教室の前で
オケ部が
ミチエの母親も来ていた。
ミチエの母親に、メガネをかけたカンナがコーヒーを出した。
「あら、カンナちゃん久しぶり。私のこと覚えてる?ミチエの母です」
「あ、お久しぶりです」
「大学1年生のときミチエとうちに来て以来かな。
カンナはにこりともせず、むしろ表情をかたくし、軽く
「
サトミが
「
「ミチエちゃんもきっと事情があるんですよ」
そこへ、アスムとヨシナガが連れだって教室に入ってきた。
オケ部の仕事のシフトが入るまで、2人で
アスムはヨシナガを見上げながら、
「アスムめっちゃびっくりした」
と、なにやら話をしていた。
サトミはふいっと顔をそらし、2人の姿が目に入らないようにした。
「……本当なのか?それ」
「ほんとだよ。だってマサキ
「ええ?」
カンナとサトミが息をのみ顔を見合わせ、アスムに
「今の話どういうこと?」
他のオケ部員たちも話を聞きつけ、アスムの方に寄った。
ミチエの母やお客さんたちも聞き耳を立てた。
「え?だから
アスムがスマホを2人に見せた。タッツイーの画面がうつされていた。タッツイーとは、誰でも好きなことをつぶやけるSNSのことだ。
タッツイーには、マサキの名前で、
『
という文字とともに、2枚の写真が
1枚目は、サングラスとマスクをつけた女性が、
2枚目は、オケ部の楽器が
1枚目の写真の女性は、2枚目の写真のミチエと、同じ
カンナもサトミもショックを受けた。
オケ部員たちがざわつき、
「
同時にガラリと教室の
真っ青な顔のミチエが立っていた。
カンナが信じられないといったようすでミチエに、
「ミチエちゃん、
ミチエの母親が立ちあがった。
「ミチエ、どういうこと?」
ミチエは走って逃げ出した。
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