第10話 ストレイシープ
夜の大学の
夏も終わり寒くなってきた。ミチエは寒さに
ヒールをはいた足がじんじんする。ミチエはここに来てからもう3時間ほど立ちっぱなしで、彼氏を待っていた。
ミチエはスマホを取り出し、彼氏とのラインを開いた。『遅れる』や『ごめん』のメッセージは来ていない。
ミチエはラインのメッセージをさかのぼった。
「最近私の方からしか連絡してないなあ」
しかも返ってくるのはそっけない返事ばかり。
付き合いたてのときは毎日向こうからメッセージが来ていたのに。最近会うのも毎日から1ヶ月に1回くらいに減った。
きっと忙しいんだ。しつこくしたら
この前も彼氏に人への気づかいができてないって怒られたし。
また成績が悪くなってる。
そこで、彼氏がやっと
ミチエは甘えた声で、
「遅いよ。一緒に帰ろうって約束してたのに」
彼氏はそっけなく、
「はあ。
ミチエはぞわぞわと不安になった。
私、なんか変なこと言った?
ミチエと彼氏は2人で帰り道を歩いた。無言の時間がつづいた。
「先輩と何話してたの?」
「この
「え?私その話聞いてないよ」
何で?と聞こうと思った。でもメンヘラ女だと思われたくない。
「お
「遊びに行ったんじゃねえんだぞ」
彼氏は強い口調で言ったので、ミチエはおどろいた。
「ご、ごめん」
「何にもできないお前と違って
「何でもできるもん!」
「できないだろ。この間もバイトでミスしたくせに」
彼氏はミチエをこづいた。ミチエはイラッとした。
ミチエのミスは、キッチンの
自分だって似たようなミスすることあるくせに。
だが表には出さないようにした。
「はあ。こっちは疲れてんのにさー」
私だって3時間待たされて疲れてるんですけど。
ミチエはぐっとその言葉を飲みこんだ。
また
彼氏はばっとミチエの手を払った。
「何で?」
「何も考えてないお前にわかるか」
彼氏は無言のまま前を向いたままだった。
ミチエは彼氏の
彼氏の顔がマサキ
彼氏がミチエのことをほめてくれたのは最初だけ。今はミチエを
何でこんな
バスの窓から
バスの座席には、うきうき顔のオケ
ミチエとカンナも
ミチエの
「その人大丈夫?話し合った方がいいよ」
「うーん。でも私はブスだから」
「どういうこと?」
「私みたいなブスと付き合ってくれる人なんて他にいないだろうから、変に怒らせて
「ミチエちゃんはブスじゃないよ」
「ありがとう。なぐさめてくれるんだね。でもブスなのは事実だから」
「違うって。だからね」
「
「うぇーい!」
カンナの説得は、オケ部員の元気な声にかき消された。
ミチエたちの前の席に、
「……サトミ、何のこと考えてる?」
「ストレイシープ。迷える
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